Mohammed Wilkinson
Mohammed Wilkinson
Food scientist with 10 years superfood research.
こんにちは! まさに核心をついた質問ですね。多くの人が気にしている点です。Claude Davis(『The Lost Book of Herbal Remedies』や『The Lost Superfoods』といった著書で知られる人物)の主張と、科学的研究(特にランダム化比較試験:RCT)の関係について、分かりやすく整理してみましょう。
核心的な答え:ほとんど引用していない
端的に言うとこうなります:Davis氏は著書や宣伝資料において、自身が挙げる植物や食物の健康効果を裏付けるために、厳密な科学的研究(特にランダム化比較試験:RCT)をほとんど引用・掲載していません。
彼の立脚点と売りは、あくまで「失われた知識」「祖先の知恵」「伝統的な使用法」であって、現代のエビデンスに基づく医学(EBM)ではないのです。
なぜこうなるのか? 順を追って説明します
知識の「信頼性」はピラミッドに例えられます。
(これは簡略化された医学的エビデンスのピラミッド図です)
1. ピラミッドの基盤:伝統的用法と個人の体験談
- 何のこと? 「風邪には生姜湯が効くっておばあちゃんが言ってた」「ある部族は何百年もこの薬草で痛みを和らげてきた」といった話。
- Davis 氏の位置付け? 彼の内容の ほとんど がこのレベルに留まっています。歴史的な逸話、伝承、民間療法を語っているのです。
- 長所と短所?
- 長所: 人類の知恵の宝庫であり、現代医薬品の発見の源泉となった例も多い(例:アスピリンの原料はヤナギの樹皮)。研究の貴重な手がかりとなる。
- 短所: 信頼性が非常に低い。プラセボ効果(効くと思い込むことで症状が軽減しただけ)や自然治癒との区別がつかず、作用と副作用を取り違える可能性もある。「因果関係」を証明できない。
2. ピラミッドの中層:実験室研究と観察研究
- 何のこと?
- 実験室研究(in vitro / in vivo): シャーレ内やマウスを使い、特定の植物抽出物が癌細胞を殺したり炎症を抑えたりするかを調べる。
- 観察研究: 大規模な集団を観察し、特定の「スーパーフード」をよく食べる人々に心臓病リスクの低い傾向があることを発見する。
- Davis 氏との関係? 彼が取り上げる一部の植物(生姜、ニンニク、ウコンなど)では、確かにこの種の研究があることは自分で調べられます。しかし、これらの研究は彼の著書とは独立して存在するものであり、彼自身が本の中でこれらの研究の出典やデータを詳細に挙げることは通常ありません。
- 長所と短所?
- 長所: 体験談より科学的根拠が強い。潜在的な関連性や生物学的メカニズムを発見できる。
- 短所: シャーレや動物で有効でも、人体で効果があるとは限らない。観察研究は「相関関係」を見出せるだけで「因果関係」は証明できない。(例:その食物を好む人は運動習慣がある、タバコを吸わないなど、健康維持の他の要素がある可能性が排除できない)。
3. ピラミッドの頂点:ランダム化比較試験(RCT)
- 何のこと? エビデンスに基づく医療の 「ゴールドスタンダード」。
- 実施方法: 患者群をランダムに2つに分ける。片方に「本物」の治療薬(例:植物抽出物含有カプセル)を、もう片方には外見も味も同じ「偽薬」(プラセボ、例:デンプンカプセル)を投与する。公平性のため、患者も医師もどちらが本物か知らない(二重盲検法)。最終的に両群の効果を比較する。
- Davis 氏との関係? これこそ彼の著作に最も欠けている要素です。彼が推奨する「秘伝の処方」や使用法が、この厳格なRCTで検証された例はほぼありません。
- 長所?
- 因果関係を証明できる! 両群はランダムに割り振られ、生活習慣や病気の状態は似ているため、唯一の違いは「本物か偽薬か」だ。もし本物群で明らかに効果が高ければ、その治療の効果に確信を持てる。
- プラセボ効果や偏りを排除できる。
ランダム化比較試験(RCT)がある例は?
Davis の本で登場する 個々の植物 (彼の「処方」そのものではなく)に対しては、確かにRCT研究が存在するものもあります。ただし、これらの研究は一般に 規格化された抽出物 と 特定の疾患 を対象としており、庭から草を摘んですぐに食べるよう勧める彼の方法とは異なります。
具体例:
- クルクミン(ウコン由来): 大量のRCT研究により、補助療法としての関節炎や炎症軽減への一定の効果が確認されています。ただし、研究で使われるのは高純度のクルクミン抽出物であり、料理に使うターメリックパウダーとは量や吸収率が全く異なります。
- ニンニク(Garlic): 一部のRCT研究により、ニンニクサプリメントが血圧やコレステロールをわずかに低下させる可能性が示唆されています。効果には個人差があり、一般的に穏やかなものです。
- セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ): これは典型的な例です。多くのRCT研究で、軽度から中等度のうつ病に対する効果が一部の処方薬と同等であることが認められています。但し、多くの医薬品と相互作用を起こすため、医師の指導下での使用が必須です。
核心点: 特定の植物にRCTのエビデンスがある場合でも、それは通常、その植物の特定の有効成分、規格化された用量、特定の健康問題に関するものです。これは、「採取してそのまま使う」というDavisが提唱する伝統的方法の科学性とは雲泥の差があります。
まとめ:どう捉えるべきか
- Davis の著作は「伝承知識のカタログ」であり「科学的な医療ガイドライン」ではない。 好奇心を刺激し、祖先が自然をどう活用してきたかを知るための、興味深い歴史読み物として扱いましょう。
- 彼の内容を医療アドバイスと見なさないこと。 特に深刻な病気の場合は必ず医師の診察を受けましょう。科学的に検証されていないハーブで現代医療を代替すると、治療の遅れや、毒性・副作用の危険すらあります。
- 「スーパーフード」や「薬草」には「まず疑い、裏付けを取る」姿勢が大事。 ある植物に驚異的な効果があると聞けば、Google Scholar や PubMed などの学術サイトで、
[植物名 英語] + randomized controlled trial
(ランダム化比較試験)といったキーワードで検索してみましょう。最先端の科学的エビデンスが何を示しているかを確認します。 - 自然を楽しみつつ、科学を尊重する。 野菜や果物を多く摂取したり、天然のハーブやスパイスを利用したりすること自体は、健康な生活習慣として有益かもしれません。しかしそれは「生活の質向上」の文脈であり、「病気を治す」こととは別物です。
この説明がお役に立てば幸いです。伝統的知識の価値と、現代科学による検証の重要性の両方について、理解を深めるきっかけになればと思います。