「VIP」(ビップ)スタイルは他のJDMスタイルとどのように異なるのでしょうか?通常、どのような車種がこの改造に使用されますか?
こんにちは!「VIP」スタイル(日本ではビップ / Bippuとも呼ばれる)は、JDMカルチャーの中でも非常にユニークでワイルドな存在感を放つ一分野です。一般的な峠走行やサーキット走行を楽しむためのJDMスタイルとは、まったく異なるものです。
分かりやすく解説しましょう。
「VIP」スタイルとは何なのか?他のJDMとどう違う?
簡単に言えば、**「日本の極道風ボスキャラの乗り物」スタイルと想像してみてください。もちろん比喩ですが、これでその本質を直感的に掴めるでしょう:「質素に見えつつも格別な高級感」「圧倒的な存在感」「誰もが認める"ボス感"」**がキモです。
他のJDMスタイルとの根本的な違いは、**「目指すもの」**にあります:
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パフォーマンス追求型JDM (ドリフト・サーキット仕様など):
- **核心:**速さ!性能最優先。
- **外観:**巨大なリアウイング、過剰なワイドボディ、冷却と空力のための開口部だらけ。車体にはスポンサーステッカーが貼られまくっていることも。
- **インテリア:**軽量化のため、内装はストリップ(撤去)!レーシングシート、ロールケージ装着。必要最低限。
- **サウンド:**甲高く、耳をつんざくようなエキゾーストノート。通り過ぎることを全世界に知らせたがる。
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VIP / ビップ スタイル:
- **核心:**見た目!スタンス(姿勢)!存在感!
- **外観:**クリーンで、スマート、シルエットが流麗。車体色は黒一色、白一色、濃色系が基本で、塗装の質感や光沢が非常に重視される。エアロパーツも競技用ではなく、車体をより低く、より幅広く、より重厚に見せるため。整然とした印象が必須。
- **インテリア:**ラグジュアリーこの上なし!レーシングスタイルとは180度逆で、内装こそがVIPの肝。高級レザーシート、レースカーテン、ミニバー、フロアマットまでもがこだわりの高級品。後部座席の快適性と豪華さが、前席以上に重要視されることも。
- **サウンド:**低く重厚な低音。排気音に力強さは必要だが、決して金切り声ではなく、まるでボスが軽く咳払いするような、静かな脅威を漂わせる音を追求。
一口でまとめると:他のJDMスタイルは「武」、つまりより高く、より速く、より強くなることを目指すもの。VIPスタイルは「文」、つまり静止状態やクルージング時の静的な威圧感や重みといった雰囲気を追求するもの。 VIPスタイルのクルマを駆るのは、誰かとスピードを競うためではなく、道ゆく全てのクルマが自然と道を譲ってくれるような圧倒的な風格を持つためなのです。
VIPスタイルのクルマを作るための定番「レシピ」
VIPスタイルには、料理のレシピのような非常にパターン化された定番チューン・フォーミュラがあります:
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車高は極限まで低く (車高が全て / Stance is Everything):
- ここにVIPの魂がある!車体は可能な限り低くすることが必須。「地面をなめるような」ビジュアルを実現する。通常はエアサスペンション(空気圧式サスペンション / Air Suspension)を用いる。これにより停車時は最低高まで下げつつ、日常走行時は上げて段差などを越えられる。ハードコアなプレイヤーはコイルオーバーを極限までローダウンするが、その場合はドライビングテクニックが要求される。
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ホイールは大径・光輝く・深窓 (大・光・へこみ深):
- ホイールはVIPの第二の魂。サイズは絶対にデカい(19インチ以上が定番)。スタイルは、マルチピース仕様、メッキ仕上げ、そして「へこみ」が深いディッシュ形状(Deep Dish / ディープディッシュ)が一般的で、一目で高価なことがわかるように。ホイールとタイヤのサイズ(オフセット他)は緻密に計算され、フェンダー(ホイールハウス)のエッジにピッタリ収まる設定が好まれる(わずかなすき間も許さない「スリスリ」スタンス)。
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ケツ折れがえげつない (オニキャン / 鬼キャンバー):
- 極限まで下げた車体に、巨大ホイールを収めるため、タイヤに非常に大きなアウトステア(負のキャンバー角)をつける。「八の字」に見えるあの姿が完成する。ビジュアルに絶大なインパクトを与え、VIPスタイルのアイコニックな要素。
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控えめでスタイリッシュなエアロパーツ (スマートなエアロ):
- エアロキットはレーシングスタイルのような派手さは求めない。元々のボディラインをより強調し、重厚感と接地感を増すデザイン。「純正品の上級グレードを思わせる」ような完成度と一体感が重要。
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豪華絢爛な内装 (ラグジュアリーインテリア):
- サイドウィンドウには白いレースカーテンが掛かり、バックミラーには「総房(ふさ)」や「金繋ぎ(きんつなぎ)」(縁起物の飾り)が下げられているのが定番アクセサリー。高級オーディオシステム、特注のフロアマット、後席の折りたたみ式テーブルも珍しくない。
定番のベース車種は?
VIPスタイルの「素材」は選りすぐりです。どんなクルマでも良いわけではありません。定番チョイスは、日本の国産フラッグシップ級FR(フロントエンジン・リアドライブ)セダンです。
最定番・最アンダーグラウンド(王道)の「御三家」:
- トヨタ セルシオ (Toyota Celsior): トヨタブランドで販売された、レクサスLS (Lexus LS) そのもの。VIP界の「ゴッドファーザー」と呼べる存在。特にLS400/LS430が絶対的アイコン。
- トヨタ アリスト (Toyota Aristo): これが日本版レクサスGS (Lexus GS)。伝説のエンジン2JZ-GTE(スープラと同型)搭載車として、パワーベースも魅力。
- 日産 シーマ (Nissan Cima): 北米市場ではインフィニティ Q45 (Infiniti Q45)。日産の誇るフラッグシップセダン。ここにも御三家の一角です。
その人気選択肢:
- トヨタ クラウン (Toyota Crown): 特に最上級グレードであるクラウンマジェスタは定番VIPベース。
- 日産 フーガ / グロリア / セドリック (Nissan Fuga / Gloria / Cedric): フーガは後継のインフィニティM系に相当。グロリアとセドリックは日産の歴史あるフラッグシップセダンで、VIPチューンの常連。
- トヨタ マークX (Toyota Mark X): 上記の車種に比べるとややコンパクトカーだが、FRクーペセダンのスポーティさが魅力で、若手プレイヤーに人気のベース車種。
近年は、このスタイルは他の車種にも広がりを見せており、一部のミニバン(トヨタ アルファード / トヨタ ヴェルファイア)もVIPターゲットとなり「バンカルチャー (Vankulture)」と呼ばれています。しかし、最もクラシックで純粋なビップスタイルの本筋は、やはり壮大なプロポーションを持つ国産フラッグシップFRセダンたちにあると言えるでしょう。