イーサリアム

イーサリアム (Ethereum)

イーサリアムは、単なる暗号資産（仮想通貨）ではなく、「スマートコントラクト」機能を備えた分散型のグローバルコンピュータ、またはアプリケーションプラットフォームです。ヴィタリック・ブテリン氏によって考案され、ブロックチェーン技術を金融取引だけでなく、あらゆる種類のプログラムや契約に応用する可能性を切り開きました。そのネイティブ通貨は「イーサ（Ether）」、ティッカーシンボルは「ETH」です。

基本情報

歴史と発展のマイルストーン

イーサリアムの歴史は、革新と困難を乗り越えた進化の連続です。

1. 構想 (2013年)

   • 当時19歳だったヴィタリック・ブテリン氏が、ビットコインのブロックチェーン技術を拡張し、契約やアプリケーションを自動実行できるプラットフォームの構想をホワイトペーパーとして公開。

2. 資金調達と開発 (2014年)

   • オンラインでのクラウドセール（ICO）を実施し、プロジェクト開発のための資金を調達。世界中から多くの支持を集めました。

3. 誕生 (2015年) - "Frontier"

   • イーサリアムの最初のバージョンである「Frontier」がローンチされ、ネットワークが正式に稼働を開始。開発者たちがブロックチェーン上でアプリケーションを構築できるようになりました。

4. The DAO事件と分裂 (2016年)

   • イーサリアム上の巨大な分散型投資ファンド「The DAO」がハッキングされ、大量のETHが不正に送金される事件が発生。この資金を取り戻すためにコミュニティは「ハードフォーク（ブロックチェーンの分岐を伴う仕様変更）」を実行。この決定を支持したチェーンが現在の**イーサリアム (ETH)となり、変更を拒否した元のチェーンはイーサリアムクラシック (ETC)**として存続することになりました。

5. 「The Merge」による歴史的転換 (2022年)

   • ネットワークのコンセンサスアルゴリズムを、膨大な計算量を必要とする「プルーフ・オブ・ワーク（PoW）」から、エネルギー効率が格段に優れた「プルーフ・オブ・ステーク（PoS）」へと移行。この大規模なアップグレードにより、イーサリアムの電力消費量は99.95%以上削減され、スケーラビリティと持続可能性が大幅に向上しました。

イーサリアムの核心技術

イーサリアムが「第二世代のブロックチェーン」と呼ばれる理由は、その革新的な技術にあります。

• スマートコントラクト (Smart Contract)

  • 事前に設定されたルールや条件に従って、契約の履行を自動的に実行するプログラム。仲介者を必要とせず、透明性が高く、改ざんが極めて困難です。
  • 例: 不動産売買において、「買主が代金を支払ったら、自動的に所有権が移転する」という契約をコードで記述し、ブロックチェーン上で実行する。

• 分散型アプリケーション (Decentralized Applications / DApps)

  • イーサリアムのブロックチェーン上で動作するアプリケーション。中央集権的なサーバーに依存しないため、検閲耐性があり、ダウンタイムがありません。今日、数千ものDAppsがイーサリアム上で稼働しています。

• イーサリアム仮想マシン (Ethereum Virtual Machine / EVM)

  • イーサリアムの「心臓部」であり、世界中のコンピュータ（ノード）で同じ状態を維持しながらスマートコントラクトを実行する仮想的なコンピュータ環境。これにより、どの開発者も同じルールでプログラムを動かすことができます。

エコシステムとユースケース

イーサリアムは、その柔軟性から巨大なエコシステムを形成しており、様々な分野で活用されています。

イーサリアムは、単なるデジタル通貨の枠を超え、新しいインターネット（Web3）の基盤を築くプロジェクトとして、世界中の開発者や企業から注目され続けています。