ジャクソンホール会議

ジャクソンホール会議とは何ですか?

ジャクソンホール会議 (Jackson Hole Economic Symposium)

ジャクソンホール会議は、経済・金融分野における世界で最も注目されるイベントの一つです。これは特定の映画、書籍、音楽、ブランドではなく、毎年開催される経済政策シンポジウムです。

会議の基本情報

項目詳細
正式名称ジャクソンホール経済シンポジウム (Jackson Hole Economic Symposium)
主催カンザスシティ連邦準備銀行 (Federal Reserve Bank of Kansas City)
開催地米国ワイオミング州 ジャクソンホール
開催時期毎年8月下旬
主な参加者世界各国の中央銀行総裁、財務大臣、学者、金融市場関係者など
目的世界経済が直面する重要なテーマについて討議を行う
形式参加者は限定されており、議論は非公開で行われるが、講演内容は後日公開される

概要と歴史

ジャクソンホール会議は、毎年夏に風光明媚なリゾート地であるジャクソンホールで開かれる、非常に権威のある国際的な経済会議です。その始まりは1978年に遡りますが、現在のような国際的な金融政策をテーマとするようになったのは1982年以降です。当時のFRB議長であったポール・ボルカー氏を会議に招聘するため、彼が趣味とするフライフィッシングの名所であるジャクソンホールが開催地に選ばれたという逸話は有名です。

この会議には、世界中から中央銀行のトップ(日銀総裁やECB総裁など)、有力な経済学者、そして金融界の重鎮たちが集結します。彼らは数日間にわたり、その年のテーマに沿った世界経済の構造的な課題や金融政策のあり方について、集中的に議論を交わします。


市場への絶大な影響力

この会議が単なる学術的な討議の場にとどまらず、世界中の投資家や市場関係者から固唾を飲んで見守られる最大の理由は、米連邦準備制度理事会(FRB)議長の基調講演にあります。

FRBは米国の金融政策を司っており、その決定は世界の株価、為替、金利に直接的な影響を及ぼします。FRB議長は、このジャクソンホール会議の講演を、今後の金融政策の方向性(利上げ、利下げ、量的緩和など)を市場に示唆する(フォワードガイダンス)ための重要な舞台として利用することがあります。

過去の注目された発言例:

  • 2010年: ベン・バーナンキ議長が、景気回復の遅れを背景に量的緩和第2弾(QE2)の可能性を強く示唆。その後の大規模な金融緩和へと繋がった。
  • 2014年: ジャネット・イエレン議長が、労働市場のたるみについて言及し、市場が想定していたよりも利上げに慎重な姿勢を示した。
  • 2020年: ジェローム・パウエル議長が、より柔軟に2%超のインフレを容認する「平均インフレ目標」の導入を表明。歴史的な金融政策の枠組み転換となった。
  • 2022年: ジェローム・パウエル議長が、記録的なインフレを抑制するためには「ある程度の痛み」を伴うとしても、断固たる姿勢で金融引き締めを継続することを示唆(「タカ派」姿勢)。市場に大きな衝撃を与えた。

これらの発言によって、会議後は世界中の金融市場が大きく変動することが少なくありません。そのため、ジャクソンホール会議は「世界経済の未来を占う羅針盤」とも呼ばれています。


近年の主なテーマ

会議では毎年、世界経済が直面する核心的な課題がテーマとして設定されます。

開催年テーマ(日本語参考訳)
2023Structural Shifts in the Global Economy (世界経済の構造的変化)
2022Reassessing Constraints on the Economy and Policy (経済と政策への制約の再評価)
2021Macroeconomic Policy in an Uneven Economy (不均一な経済におけるマクロ経済政策)
2020Navigating the Decade Ahead: Implications for Monetary Policy (この先10年のかじ取り:金融政策への示唆)

このように、ジャクソンホール会議は、世界トップクラスの知性が集い、グローバル経済の現在と未来を形作る重要な議論が行われる場であり、金融市場関係者にとって絶対に見逃せない年次イベントとなっています。

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