ビットコインの安全資産としての有効性をどのように評価すればよいでしょうか?市場の混乱期(例:2020年3月)において、金や米ドルなどの伝統的な安全資産との相関性はどのように推移していますか?

ビットコインを避難資産として評価する有効性

避難資産とは、経済不況や地政学的危機などの市場混乱期において価値を維持または増加させる資産を指します。ビットコインを避難資産として評価する有効性を検討するには、以下の主要要素を考慮する必要があります:

  1. ボラティリティ(変動性)

    • ビットコインは価格変動が激しく(年間ボラティリティは80%を超えることが多い)、金(約15%)や米ドル(約5%)などの伝統的避難資産を大幅に上回ります。この高い変動性は、投資家が短期的な大幅損失リスクに直面する可能性があるため、避難機能を弱めます。
  2. 相関性

    • 理想的な避難資産は、株式などのリスク資産との相関性が低いか負であるべきです。ビットコインは株式市場(S&P500指数など)との間に正の相関(相関係数約0.6-0.8)を示すことが多く、特に危機発生初期にはリスク資産としての性質が強く表れます。
    • インフレヘッジとの関係:ビットコインは供給量に上限(2,100万枚)があるため、理論上はインフレヘッジとなり得ますが、実際のパフォーマンスは市場心理に左右されやすく、金ほどの安定性はありません。
  3. 流動性

    • ビットコインの流動性は比較的高く(1日平均取引高300億ドル超)、しかし金や米ドルには及びません。市場深度が不足する状況(極端なイベント発生時など)では、大口取引の影響で価格が急変動しやすくなります。
  4. 過去の実績

    • 長期的に見ると、ビットコインは一部の混乱期(2018年の貿易戦争時など)に一時的に上昇しましたが、パフォーマンスは一貫していません。例えば2020年COVID-19発生初期には暴落した一方、金は年間を通じて上昇しました。
    • 有効性指標:シャープレシオ(リスク調整後リターン)が負の値となることが多く、リスクに対する見返りとしての魅力に欠けることを示しています。

総括すると、ビットコインの避難資産としての有効性は限定的です:高いボラティリティとリスク資産との正の相関性により、多くの混乱期においてパフォーマンスが振るわず、ハイリスク・ハイリターンの投機的資産と見なす方が適切です。

2020年3月市場混乱期における相関性の実例

2020年3月、COVID-19パンデミックによる世界的な市場パニック(S&P500指数は約30%下落)の中、ビットコイン・金・米ドルのパフォーマンスと相関性は以下の通りでした:

  • ビットコインの動向

    • 価格は約9,000ドルから4,000ドルへ暴落(50%超の下落)。株式市場と連動した下落を示しました。
    • 原因:流動性危機により投資家がリスク資産を現金化する中、ビットコインはハイリスク資産と見なされました。
  • 金の動向

    • 初期に一時下落(1,700ドル/オンス→1,450ドル)したものの、急速に反発し年間25%上昇。
    • 伝統的避難資産として、混乱後期に資金流入を集めました。
  • 米ドルの動向

    • 米ドル指数(DXY)は約8%上昇。投資家が現金などの安全資産に殺到したためです。
  • 相関性分析

    • ビットコインと金:相関係数約-0.5(負の相関)。ビットコイン暴落時に金が反発し、両者の避難資産としての性質が分化。
    • ビットコインと米ドル:相関係数約-0.4(負の相関)。ドル高とビットコイン安が連動。
    • ビットコインとS&P500:相関係数約0.7(強い正の相関)。当該期間におけるビットコインのリスク資産的な振る舞いを明示。

結論:2020年3月、ビットコインは避難資産として機能せず、伝統的避難資産(金・米ドル)との負の相関は、極度の市場圧力下におけるその不安定性を浮き彫りにしました。