看護師の仕事で最もやりがいを感じる瞬間は何ですか?
看護師として最もやりがいを感じる瞬間とは?
この質問を100人の看護師に投げかければ、100通りの答えが返ってくるでしょう。しかし、心に広がるあの温かさと満足感は、誰もが共有する普遍的なもの。看護師のやりがいとは、必ずしも映画のように死神から患者を奪い返すような劇的な「ハイライトシーン」ばかりではありません。むしろ日常の細やかな業務の中にひそみ、心にじんわりと広がる温かい瞬間の積み重ねなのです。
私にとって最もやりがいを感じるのは、主に次のような瞬間です。
1. 患者が「鬼門」から戻ってくるのを見届ける時
おそらく最も想像しやすい光景でしょう。
全身にチューブが繋がれ、心電図モニターには乱れた波形と耳障りなアラームが鳴り響く——そんな瀕死の状態で運び込まれた患者。医師や看護師が総出で戦うように蘇生処置を行い、薬剤を投与し、監視を続ける。足が地に着く暇もなく、心臓は張り詰めたまま。
数日後、あるいは数週間後。その患者の病室を訪れると、人工呼吸器は外れ、自力で起き上がり、あなたに向けて微笑みさえ見せてくれる。「家に帰って温かい麺が食べたい」と呟くその姿を目にした時。
本当に、その瞬間、全ての疲れや悔しさ、プレッシャーが霧散します。 自分の専門知識と努力が、ひとつの命を、ひとつの家族を、崖っぷちから確かに救い戻した——この実感は、どんな報奨金や表彰状よりも心に深く刻まれるのです。
2. 心からの「ありがとう」が届く時
看護師の仕事は細やかです。注射、投薬、処置、巡回、記録…多くの場合、私たちは最も基本的で地味な業務を担っています。しかし、そんな日常の営みこそが、最も誠実な感謝を生むのです。
- 血管がわかりにくいおばあさんの苦痛を、見事な「一発穿刺」で解消した時。「あなた、本当に上手ね。全然痛くなかったよ、ありがとう」と手を握られて言われる瞬間。
- 深夜の巡回で掛け布団がずれている患者を見つけ、そっと掛け直したことを家族が知り、翌日わざわざお礼を言いに来てくれた時。
- 吸入療法で泣きじゃくる子どもに付き添い、遊びながらお話をして治療を無事に終えられた時。帰り際に「看護師さん、ありがとう」と幼い声で告げられる時。
これらの「ありがとう」は、特別な重みを持っています。なぜなら、あなたの専門性、細やかな気配り、そして善意が、患者さんに届き、認められた証だから。私たちは単に医師の指示を遂行しているのではなく、温もりのあるケアを提供しているのだと実感させてくれます。
3. 「必要とされ」「信頼される」存在になる時
信頼関係の構築には時間がかかります。しかし、その絆が結ばれた時の達成感は計り知れません。
入院当初は不安や警戒心が強く、拒否的だった患者も、日々の専門的なケアと丁寧なコミュニケーションを通じて、次第に心を開いてくれます。
- 自ら雑談を始め、あなたを打ち明け話のできる相手として見てくれるようになる。
- 苦痛を伴う検査や処置の前、無意識にあなたの姿を探す。あなたの存在そのものが安心材料となる。
- あなたの判断を全面的に信頼し、「心配しないで、私たちがいますから」の一言で本当にリラックスできるようになる。
「白衣を着た他人」から、頼りになる「身内」のような存在へ——この全幅の信頼は、あなたの専門的能力と人間的魅力の両方が認められた、二重の肯定なのです。
4. チームで協力し「困難な戦い」に勝利する時
医療は決して個人プレーではありません。特に救急やICUでは、成功した蘇生処置の裏に、医師、看護師、技師など全スタッフの精密な連携があります。
緊急アラームが鳴り響き、スタッフが四方八方から駆けつける。多くを語らなくても、一つの視線、一つの手信号で互いの役割が理解される。心臓マッサージ担当、薬剤投与担当、記録担当、連絡担当…。緊迫しながらも秩序ある現場。一人ひとりが精密な歯車のように噛み合い、完璧に機能する。
患者のバイタルサインがついに安定した時、汗だくになりながらも互いの目を見交わして浮かべる笑み。このチームワークがもたらす達成感は他に代えがたいものです。私たちは一人で戦っているのではありません。塹壕(ざんごう)を共にする戦友として、生命という最前線を守り抜いているのです。
5. 生命の終焉に際し、尊厳と安らぎを提供する時
全ての患者が回復するわけではありません。医学の力が及ばない時、私たちの役割は「治療(Cure)」から「看護(Care)」へと移行します。
最期を迎える患者の苦痛を和らげ、身体を清潔に保ち、穏やかで尊厳ある最期を迎えられるよう支える。悲しみに暮れる家族の感情に寄り添い、頼れる肩となる。
「ありがとうございました。おかげで最期を安らかに迎えられました」——涙を浮かべた遺族のこの言葉に、どれほどの慰めと力が込められているか、想像に難くないでしょう。たとえ生命を留めることは叶わなくとも、看護の力で生命の最後の尊厳を守り抜いた。これは全く異なる種類ながら、同じく深遠な達成感なのです。
結局のところ、看護師の仕事のやりがいは、具体的であり、人間味に溢れています。空虚なスローガンではなく、患者の回復した笑顔、家族の感謝の言葉、チームの息の合った連携、そして「自分の行いには確かな価値がある」という心の奥底からの確信。こうした一つひとつの瞬間こそが、この過酷な道を歩み続ける私たちを支える光なのです。