AIが学習能力、論理分析、情報統合において人間を超越している今、私たちはまだ良い問いを立てる必要があるのでしょうか?

Margot Maurice-Meyer
Margot Maurice-Meyer

もちろん必要です。しかも、以前よりもさらに重要になっています。

AIを、非常に高性能な「カーナビ」だと想像してみてください。

このカーナビは、世界中のすべての道を知っており、北京からニューヨークまでの1万通りのルートを1秒で計算し、どのルートが最速か、最も経済的か、最も景色が良いかを教えてくれます。その計算能力と情報統合能力は、どんな人間のドライバーも太刀打ちできません。

しかし、このカーナビには「致命的な」弱点があります。それは、あなたが行きたい場所を知らないということです。

もしあなたがただ「出発!」と言うだけでは、カーナビは何をすればいいのか全く分かりません。

あなたはカーナビに明確な目的地を与える必要があります。それが「良い質問」なのです。

  • 悪い質問は、カーナビに「楽しい場所に行きたい」と言うようなものです。カーナビは最寄りの公園を勧めるかもしれませんが、本当は山と水があり、一週間滞在できるリゾートに行きたかったのかもしれません。結果はあなたの期待とは全く異なるものになります。

  • 良い質問は、カーナビに「車で3時間以内、評価4.5以上、子供とペット同伴可能で、湖畔の景色が楽しめるリゾートを探してほしい」と言うようなものです。見てください、質問が具体的で明確であればあるほど、カーナビが提供する答えはより正確で、より価値のあるものになります。

AIも同じです。膨大な知識と強力な分析能力を持っていますが、AI自身には「意図」や「目的」がありません。それは、私たちが設定する方向に完全に依存しています。

したがって、AI時代において、私たちの役割は変わりました。私たちはもはや、過去のように知識を記憶したり、情報を処理したりするために多くの時間を費やす必要はありません(これらは「カーナビ」が得意とすることです)。私たちの核となる価値は、目的地を提示する人になったのです。

  • 良い質問をすることは、方向性を定めることです。 どのような問題を解決したいのか?あなたの目標は何なのか?これらはAIがあなたに代わって決定することはできません。
  • 良い質問をすることは、深掘りすることです。 AIが提示した初期の答えに対して、より洞察力のある情報を引き出すために、さらに質問を重ねることができますか?例えば、「先ほど挙げたプランAの潜在的なリスクは何ですか?もしプランBと組み合わせたら、もっと良い効果が得られるでしょうか?」といった具合に。
  • 良い質問をすることは、イノベーションを刺激することです。 真に画期的なアイデアは、しばしば前例のない良い質問から生まれます。例えば、「環境に優しく、しかも食べられる包装材料を作ることはできないだろうか?」という質問自体が、AIに創造的な情報統合を必要とする全く新しい探求の方向性を示しています。

簡単に言えば、AIはハンマーであり、私たちは釘をどこに打つかを決める職人です。どんなに優れたハンマーでも、「どこを打つか」そして「なぜ打つのか」を決める職人が必要です。将来、人がどれほどの価値を生み出せるかは、彼がどれだけ知っているかではなく、どれだけ良い質問ができるかに大きく左右されるでしょう。