長期居住者として、日本で不動産を購入すべきでしょうか?(前回の住宅購入に関する質問リストを参照)
作成日時: 8/11/2025更新日時: 8/17/2025
回答 (1)
### 日本で長く住む外国人として、私は家を買うべきか?
この質問は「夕飯はラーメンかカレーか」と似て、あなたの好み、予算、その時の気分次第だ。でも家購入は夕飯よりずっと複雑。遠回りせず本質を、いくつかの側面から整理してみよう。
### 1. まず「お金」の計算を(財務編)
家購入はまず金銭の問題。物件価格だけ見ず、水面下の氷山の大きさを意識せよ。
#### **A. 「頭金」の準備はできているか?**
* **理想形:** 物件価格の10%-20%を頭金として用意できれば理想的。銀行の審査が通りやすく、金利優遇も期待できる。
* **「ゼロ頭金」の落とし穴:** 「頭金0円」の広告は魅力的だが、元は同じ。総融資額が増え月々の返済負担が重くなり、審査も厳しくなる。収入が極めて高く安定している場合を除き、安易に手を出すのは避けるべき。
#### **B. 物件価格以外に「諸費用」がかかる**
初心者が陥りやすい落とし穴!物件価格とは別に、**6%-9%**程度の「諸費用」が現金で必要。主な内訳:
* **仲介手数料:** 最大項目。(物件価格の3%+6万円)+消費税。
* **登録免許税:** 不動産登記(所有権移転登記、抵当権設定登記)にかかる税金。
* **印紙税:** 売買契約書に貼る収入印紙代。
* **不動産取得税:** 購入後数ヶ月後に自宅に届く納税通知書を忘れずに。
* **司法書士報酬:** 登記手続きを代行する費用。
* **火災保険料/地震保険料:** 融資を受ける場合、銀行が加入を義務付ける。
* **融資手数料・保証料:** 銀行や保証会社に支払う費用。
**例:** 3000万円の物件購入なら、諸費用として約200万円の現金が別途必要。
#### **C. 毎年かかる「維持コスト」**
購入して終わりではない。毎年確実に「お金がかかる」:
* **固定資産税・都市計画税:** 毎年必ず発生する固定費。
* **管理費・修繕積立金:** マンション購入の場合の毎月の固定支出。築年数とともに上がる傾向。
* **メンテナンス費:** 一戸建ての場合、管理費はないが、外壁、屋根、配管のメンテナンスは自己負担。10年に一度の大規模修繕も高額。
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### 2. 「あなた自身」について考えよう(人生設計編)
お金の計算ができたら、次は自分の心に問いかけてみる。
#### **A. 本当にこの場所に「定住」する覚悟はあるか?**
* **仕事の変動性:** 今後5-10年、この都市にいるか?日本では転勤は日常茶飯事。他都市への転職も考えられる?家は賃貸と違い、簡単に引っ越せない。
* **家族の変化:** 結婚、出産、子供の進学、親の介護…家族構成の変化は住まいのニーズを直撃する。今買った1LDKは、子供が生まれたら手狭になるかもしれない。
* **帰国の可能性:** 永住権を持っていても、帰国を考える人は多い。数年後に帰国を決めた場合、日本の不動産は売却に時間がかかり、希望価格で売れる保証もない。
#### **B. 「賃貸の自由」 vs 「持ち家の安心」**
日本で特に顕著な、古典的対立構造。
* **賃貸派の主張:**
* **柔軟性:** 仕事や生活の変化に合わせて自由に引っ越せる。
* **手間がかからない:** 家電故障は大家へ連絡、古くなったら新しい物件に移れば良い。修繕や資産価値の減耗を気にしなくて済む。
* **リスクが低い:** 数千万円のローンを背負わず、価格下落や災害リスクも心配不要。
* **購入派の主張:**
* **安定感と帰属意識:** 自分の家だから、自由にリフォームでき、ペットも飼える。大家の顔色を窺う必要がない。
* **資産形成(議論の余地あり):** ローンを完済すれば家は自分のもの。建物は減価するが、土地は永久所有権。将来への資産となり得る。
* **強制貯蓄効果:** 毎月の返済額のうち、元金部分は「消費」から「資産」への移行と捉えられる。
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### 3. 日本不動産の「特徴」を理解せよ(市場特性編)
日本の不動産市場は国内(中国)と大きく異なる。思考の転換が必要。
* **【重要】建物は消耗品、土地こそ資産:**
* **建物の急速な減価:** 日本では、特に木造一戸建ては20-25年ほどで建物の評価額がほぼゼロに近づく。本質的に買うのは「土地」である。鉄筋コンクリートのマンションは減価が遅いが、それでも経年劣化は避けられない。
* **「新築」の光環:** 新築物件は住み始めたその日から価値が下がり始める。そのため、価格が割安で立地の良い「中古」物件を選ぶ人も多い。
* **流動性(売れやすさ):**
* **立地!立地!立地!** 東京の都心部、駅近の好立地物件は売れやすい。しかし、少し郊外だったり、人口減少が続く地方都市では、何年も売れず、結果的に値下げせざるを得ないケースも。
* **災害リスク:**
* 地震、台風は日常。購入前には必ずその地域の**ハザードマップ(災害リスク図)**を確認し、建物の**耐震基準**(最低でも1981年以降の「新耐震基準」適合)を把握すること。
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### 簡単な自己診断リスト
迷ったら、以下の質問に正直に答えてみよう:
* `[ ]` 頭金と諸費用を支払える安定した十分なキャッシュフローがあるか?
* `[ ]` 毎月の返済額と年間の維持コストを計算し、負担できるか?
* `[ ]` 今後5-10年、この都市に住み続ける明確な計画があるか?
* `[ ]` 永住権を取得しているか、安定した職を得て低金利融資を受けられるか?
* `[ ]` 賃貸の柔軟性より、完全に自分のものとなる安定した家を持つことへの憧れが強いか?
* `[ ]` 日本では「建物は減価し、土地が資産価値を保つ」という現実を理解し受け入れられるか?
* `[ ]` 物件の立地、災害リスクなどを十分に調査したか?
**もしこれらのほとんどに「✔」がつくなら、おめでとう。本格的な物件探しを始めよう。もし「✖」や「?」が多いなら、もう少し待ち、賃貸の自由を楽しむのも一つの選択肢だ。**
### まとめ
友よ、日本で家を買うことは、**投資行動**というより、**消費決断**+**ライフスタイルの選択**に近い。
「みんな買っているから」「買わないと損」といった言葉に惑わされるな。家を買う**根本的な目的**をはっきりさせよ。生活の質を上げるため?安心感を得るため?それとも投資のため?
* **住み心地と安心感のため:** 財務的に可能で、長期的な覚悟ができているなら、買う価値はある。
* **投資で儲けるため:** その場合は非常に慎重になる必要がある。価値上昇が見込める立地や物件を選ぶには専門知識が不可欠で、一般人にはハードルが高い。
最終的な決定権はあなたにある。焦らずゆっくり考えよう。これは日本での最も重要な決断の一つかもしれない。時間をかけて調べることは、絶対に価値がある。
作成日時: 08-11 14:36:56更新日時: 08-12 03:22:49