甲状腺機能検査で甲状腺がんは発見できますか?
はい、問題ありません。甲状腺機能検査と甲状腺がんの関係について、順を追って説明します。
甲状腺機能検査(血液検査)で甲状腺がんは見つかる?—— 答え:基本的に見つかりません。
これは非常に多い誤解です。多くの人が健康診断で「甲状腺機能」を血液検査し、結果が正常だったからといって、自分の甲状腺はまったく問題ないと思い込んでしまいます。実は、この2つの検査の目的は全く異なるのです。
甲状腺を「内分泌工場」に例えてみましょう。
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甲状腺機能検査(略して「甲功」):これは工場の**「生産レポート」を調べるものです。血液中のTSH、T3、T4などのホルモンレベルを測定し、この工場が「サボっている」(甲状腺機能低下症)のか、「猛烈に残業している」(甲状腺機能亢進症)のか、それとも「正常に稼働している」のかを判断します。工場の稼働状態**だけを確認する検査です。
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甲状腺がん:これは工場の**「内部構造」**に問題が生じた状態です。例えば、工場内の特定の部署に良くない「こぶ」(結節)ができ、この「こぶ」が腫瘍となります。
重要なポイントは、ほとんどの場合、工場内にがんという「悪いこぶ」ができたとしても、初期段階では工場全体の生産効率には影響を与えないということです。 つまり、多くの甲状腺がん患者の「甲状腺機能」検査結果は完全に正常なのです。
したがって、甲状腺機能検査で甲状腺がんを見つけようとするのは、会社の財務諸表だけを見て、社長が病気かどうかを判断しようとするようなもので、頼りにはなりません。
では、甲状腺がんを実際に見つけるにはどんな検査が必要?
甲状腺がんが心配な場合、またはそのスクリーニングを受けたい場合は、以下の検査が重要です:
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医師による触診
- 内容:医師が首のあたりを手で触れて確認することです。経験豊富な医師であれば、比較的大きな結節を触知できることがあります。最も基本的な最初のステップです。
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甲状腺超音波検査(エコー)
- 内容:これこそが甲状腺結節を発見し、その良性・悪性を予測する**「鋭い目」**です。甲状腺の非常に鮮明な「写真」を撮るようなものです。
- 確認事項:医師は超音波で結節の大きさ、形、境界がはっきりしているか、内部に石灰化(特に微小石灰化)がないか、血流信号が多いかなどを観察します。レポートに「境界不明瞭」、「形状不整」、「低エコー」、「微小石灰化」といった言葉が記載されている場合、医師は悪性の可能性を疑い、警戒を強めます。
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甲状腺結節穿刺吸引細胞診(FNA)
- 内容:これが甲状腺がんを診断する**「ゴールドスタンダード(確定的な方法)」**です。超音波検査で悪性が強く疑われる結節が見つかった場合、医師はこの検査を勧めます。
- 方法:超音波で観察しながら、非常に細い針を結節に刺し、細胞を少しだけ吸引します。その細胞を顕微鏡で観察し、良性か悪性(がん)かを最終的に判断します。この検査の精度は非常に高いです。
まとめ
- 甲状腺の「機能」が正常かどうか(甲状腺機能亢進症/低下症の有無)を知りたい場合 → 甲状腺機能検査(血液検査) を受けましょう。
- 甲状腺の「構造」に問題がないか(結節やがんなどができていないか)を知りたい場合 → 甲状腺超音波検査(エコー) を受けましょう。
甲状腺機能検査が甲状腺がんの診断過程で全く役に立たないわけではありません。通常は補助的な検査として行われます。例えば、医師が超音波で結節を発見した後、甲状腺機能検査を勧めることがあります。これは甲状腺の状態を総合的に評価し、その後の治療方針(手術の必要性など)を決めるためのより包括的な情報を得るためです。
ですから、次回の健康診断で甲状腺がんの有無を調べたい場合は、必ず甲状腺超音波検査を追加するようにしてください!