ねえ、君がグレアムの投資哲学に興味を持っているのを見て本当に嬉しいよ。これは素晴らしい質問だし、ディフェンシブな投資家にとって最も重要な基本戦略の一つなんだ。もっと分かりやすく、「リバランス」の具体的なやり方を話そう。
複雑な金融モデルは忘れて、子どもの頃に遊んだシーソーを思い浮かべてほしい。
核心思想:古典的な 50対50 戦略
まず、グレアムがディフェンシブな投資家に提示した最も基本的なアドバイスは、投資資金を半分に分けることだ:
- 50%を株式に投資
- 50%を債券に投資(あるいは債券に近い現金や、高格付けの債券ファンドなど)
これはまるでシーソーの両端が完全に水平になっている状態だ。この50対50の比率が君の「基準線(ベンチマーク)」であり、投資世界における「羅針盤」となるんだ。
「リバランス」って何?なぜ必要なの?
市場は常に変動している。時には株価が大きく上昇し、時には債券の運用成績が株式を上回ることもある。
シナリオ1:ブルマーケット(上昇相場)の発生
最初に100万円を投資し、株式50万、債券50万だったとしよう。1年が経ち、株式相場が大きく上昇して株式の評価額が80万円となり、債券は依然50万円のままだとする。
この時点での投資ポートフォリオ全体は130万円。株式の比率は 80 / 130 ≈ 61.5%
、債券の比率は 38.5%
となる。
見てほしい。君の「シーソー」は大きく傾いてしまった!株式の側が高く・重くなっている。これは、ポートフォリオのリスクが増加し、無意識のうちに当初の堅実な「ディフェンシブ」な設定からずれてしまったことを意味する。
ここで「リバランス」の出番だ。
その操作は極めてシンプル:値上がりした資産(株式)を一部売却し、値上がりが少ない(あるいは下落した)資産(債券)に再投資することで、比率を再び50対50に戻す。
具体的な手順:
- 現在の総資産は130万円。
- 目標は株式と債券それぞれ50%、つまり各65万円ずつ。
- 現在は株式80万円、債券50万円。
- よって、
80 - 65 = 15
万円分の株式を売却し、その資金で債券を15万円分購入する必要がある。 - 操作完了後の資産は:株式 65万円、債券 65万円。
シーソーは再び水平に戻った!
お気づきだろうか、この操作は誰もがやりたいと思うのに実践が難しいことを、自然に成し遂げさせてくれるんだ——つまり、**「高値で売り、安値で買う」**ことだ。市場が熱狂的な時(株式の大幅上昇期)に自動的に一部を売却して利益を確定し、そのお金を当時相対的に「人気がない」資産(債券)に再投資していることになる。
シナリオ2:ベアマーケット(下降相場)の発生
逆のパターンも同じだ。次のように株価が大暴落し、株式が50万円から30万円に下落、債券は50万円のままだったとしよう。この場合、ポートフォリオにおける株式の割合が低すぎ、当初意図していたリスク許容度からも逸脱してしまう。リバランスでは、債券を一部売却し、下がってより安くなった株式を「底値買い」し、比率を再び50対50に戻す操作を実行する。
これは、市場が恐慌状態に陥った時に、みんなに流されて損切りするのではなく、自らのルールに従って購入することを強制してくれるのだ。
では、どれくらいの頻度で「リバランス」すべき?
絶対的な答えはないが、シンプルで有用な方法は2つある:
-
期間で決める(最も手間がかからない)
- 例えば、一定の間隔を設定し、半年ごとや毎年1回、固定の日(誕生日や元旦など)にポートフォリオをチェックする。比率が基準からずれていたら、操作して50対50に戻す。
- メリット:非常にシンプルで、毎日相場を見る必要がなく、感情の乱れを防げる。大抵のディフェンシブな投資家にとって、年1回で十分すぎる。
-
比率で決める(より柔軟)
- ある「許容範囲」を設定し、例えばどの資産クラスの比率が基準から 5% や 10% 以上ずれたら、リバランスをトリガー(発動)する。
- 基準が50対50なら、株式が55%に上がった時、あるいは45%に下がった時などに即座に行動すると良い。
- メリット:市場の大幅な変動に対してタイムリーに対応できる。
- デメリット:より頻繁にチェックする必要があり、操作回数が若干増える可能性がある。
初心者へのアドバイス:
ディフェンシブ投資を始めたばかりの人に強くおすすめしたいのは、最初の **「期間で決める」**方法を使い、年1回のリバランスを習慣づけることだ。これで十分シンプルであり、ルールを守る習慣が自然と身につき、過剰な操作による取引コストや不安感を感じることにもならない。
まとめ
ディフェンシブな投資家にとって、リバランスは投資航海における「オートパイロット」のようなものだ。
- 基準を設定:古典的なグレアム流の 50対50 株式/債券比率から始める。
- ルールを設定:年1回、固定タイミングでのチェックと調整を選択する。
- 機械的に実行:比率がずれたら、割高になっている資産を売り、割安になっている資産を買い増すことで基準線に戻す。
これを行う核心的な目的は、より高い利益を得るためではなく:
- リスク管理:ポートフォリオのリスク水準を、常に快適だと感じる範囲にキープする。
- 自制の効率化:ルールによって人間の「強欲」と「恐怖」を抑え込み、流されての「買い急ぎ」や「損切り」を防ぐ。
- 意思決定の簡素化:市場を予測する必要はなく、定められたルールを守るだけだ。
この考え方こそが、グレアム哲学の真髄である**「安全マージン(安全域)」と「予測可能で守るべきルール」**なのだ。この解説が君の助けになれば幸いだ!