なぜ投資は知性ではなく、性格のゲームだと言われるのでしょうか?
ねえ、友よ、君のこの質問は本当に素晴らしい。投資分野の核心的な秘密の一つに触れる内容だよ。多くの人は株式市場で稼ぐには、数学オリンピックの問題を解くように、抜群の知性が必要だと思い込んでいる。しかし実際には、他の分野で非常に成功した賢い人々が、株式市場に入ると「カモ」になってしまうことが多い。その根底にある理由は、まさに君が尋ねた通り——投資とは、突き詰めれば人間の弱さとの戦いなのであって、純粋な知能競争ではないからだ。
分かりやすい言葉で解説しよう。
なぜ高IQが高収益につながらないのか?
こう考えてみよう。投資に必要な基本的な「知能」は実は高くない。ある会社の財務諸表を読み解き、そのビジネスの概要を理解し、基礎的な四則演算ができれば、知能の面ではほぼ十分だ。バフェット氏も言っている、投資にロケット科学者のようなIQは不要で、普通の頭脳で十分だと。
ではなぜ、賢い頭脳がかえって障害になるのか?
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賢い人は物事を複雑にしがち:高IQの人は挑戦を好み、複雑なモデルや精密な計算を好む。彼らは多くの時間をかけてマクロ経済を予測したり、複雑な評価モデルを構築したりするかもしれない。しかし市場の動きはランダム性と「ノイズ」に満ちており、常識通りには動かない。最も典型的な例が、米国のヘッジファンド「ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)」だ。ノーベル経済学賞受賞者2名を含む、IQが突出した人材が揃っていた。結果は? 彼らが完璧と思い込んだ複雑なモデルを構築したものの、ひとつの「ブラック・スワン事象」(ロシア債務不履行)によって破綻し、世界的な金融システムを危機に陥れかけたのだ。時に最もシンプルな投資原則(例えば「割安で優良企業を買う」)こそが最も効果的なのだ。
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賢い人は過信しがち:個人の成功体験と高IQは、「自分は市場よりも賢い」という幻想を生みやすい。この自信により、市場が加熱した時に高値で買い向かい、次の成長分野を見つけられると「確信」し、市場がパニックに陥っても損切りせず、自分が誤っているとは「信じ」なくなる。「自分が間違っていた」という事実を受け入れるのが難しく、小さな損失を大きな穴にまで広げてしまう。
では、投資で本当に試される「性格」とは?
ここが問題の核心だ。投資をゲームと例えるなら、真の対戦相手はチャート図でも他の投資家でもなく、鏡に映る自分自身だ。以下の性格は、IQよりはるかに重要だ:
1. 極限の忍耐力 (Gokugen no Nintairyoku)
優良企業の価値が開花するには時間がかかる。まるで果樹を植え、花が咲き実がなるのを根気よく待つように。今日植えたからといって、明日には実がなるとは期待できない。市場は短期的には人気投票(投票機)であり、長期的には真の価値(重量計)が試される。この「長期」は1年、3年、あるいはそれ以上かもしれない。忍耐力のない者は、夜明け前の暗闇の中で見切りをつけたり、頻繁に売買を繰り返したりし、結局は手数料や値ざやを市場に「貢いで」しまうことになる。
例えを挙げよう:時間をかけて調査し、ある会社が優良株だと分かった。株価は10円。買った後に8円に下落した。
- IQによる反応:自分の計算は間違っていた?何か知らない悪材料があるのか?市場は崩壊するんじゃないか?
- 性格による反応:買った時の論理は変わったか?企業のファンダメンタルズは悪化したか?もし答えがノーなら、これは市場様(後述)が調子を狂わせているだけ、むしろもっといい買い場かもしれない。
2. 鋼鉄のような規律 (Kōtetsu no Yōna Kiritsu)
投資の前には、自分なりのルールと原則=「投資の規律」を用意する必要がある。例えば、「自分が理解できる会社だけを買う」、「価格が内在価値の50%を下回ったら買う」、「当初の買い論理が誤っていたと気づいたら即時売却する」など。
真の試練は、市場の感情が高ぶった時、この規律を守れるかどうかだ。周りの誰もが有名になり、まったく理解できない株価が一ヶ月で3倍になった時、衝動を抑えて高値づかみを避けられるか?市場が暴落し、悲鳴が響く中、計画通り、理不尽に叩かれた優良資産を買い向かう勇気があるか?
要は、規律とは「知行合一」する能力なんだ。多くの人は理屈は分かっても、実行段階になると忘れてしまう。
3. 超然とした独立思考と感情制御能力 (Chōzentoteki Na Dokuritsu Shikō to Kanjō Seigyo Nōryoku)
これは「株式投資の教父」ベンジャミン・グレアム氏思想の核心だ。彼は非常に古典的な比喩を提唱した——「ミスター・マーケット」(Mr. Market)。
- 想像してみて:君に「市場様」という名のビジネスパートナーがいるとしてね。彼は毎日、君のところに来て、君の持ち分を買うか、彼の持ち分を売るかのオファーを提示する。
- この「市場様」には弱点がある:彼の感情はきわめて不安定だ。時には過度に楽観的になり、君の持ち分に対して法外な高値をつける。時には異常な悲観を示して、骨董品みたいな「お値打ち価格」で自分の持ち分を売ろうとするんだ。
さあ、どんな付き合い方をしたら良いだろうか?
- 感情に支配された人間の行動?市場様が楽観的になると、その感情に流されて君も楽観的になり、更に高い値段で買い足したりする。次に彼が悲観的になると、怖さにかられて君もパニックになり、手持ちの優良株を彼にタダ同然で売ってしまう。こうした結果は言うまでもないよね:高値で買い、安値で売る。結果は悲惨な損。
- 正しい性格を持った投資家の行動?君は市場様を、感情のままに行動しているバカで、利用可能な存在と見なす。彼が高値をつけたら、内心ほくそ笑みながら、たまたま彼に売ることを検討するかもしれない。彼が「骨董品みたいな価格」を提示したら、狂喜乱舞しながら、絶好の機会を掴む訳だね。安くたくさん買い占められるんだから。
分かったよね?君は市場様が明日泣きわめくか笑い飛ばすかを予測する必要なんて、さらさらない。ただ感情を利用するだけでいい。彼の感情に君が支配されてしまう必要なんて全くないんだ。 これこそ独立した思考と安定した心が持つ力だよね。IQの高さとはほとんど関係がなく、純粋に性格と精神性を磨く問題なのだ。
4. 間違いを認める潔さ (Machigai o Mitomeru Isagiyosa)
市場は最高の先生だ。それは絶えず君が間違っていると証明し続けるだろう。優れた投資家には、間違いを認める勇気が不可欠だ。つまり損失は投資の一部と割り切り、判断ミスを認識したら無碍に「損切り」を活かせるのかどうか。損切りって口で言うのは簡単だよね。でも実行に踏み切って全て引き受ける勇気が本質だ。
潔さはまた、市場に常に畏敬の念を持ち、自らの能力の限界を知り、理解できない投資に手を出さないということでもある。
まとめ
ではなぜ投資を「性格が問われるゲーム」というのか?
- IQ は正しい道を見つける(例えば優良企業を選別する)のに役立つ。
- しかし最終的に性格(忍耐力、規律、感情の安定)こそが、その道を最後まで歩み続け、目標を達成することを保証する。
投資とは、このことだと理解してもらおう。
投資というゲームは100メートル走よりもむしろ、孤独なマラソンの原点に近いんだよね。誰の足が最も速いかは問題ではない。重要なのは「誰が安定して走れるか」「誰が最も遠くまで行けるか」ということなのだ。君の最大の敵は常に自制心の渦中にいる、貪欲と恐怖心が未だに揺れ動いている君自身である。
この欲と恐れに支配される人間の本質的な弱さが制御こそ完璧な投資家になれる道だ。グレアム氏が言うところの「賢明な投資家 (Intelligent Investor) 」とは正にこの究極とも呼ぶべき状態を示唆しているに違いない。