Sherry Hernandez
Sherry Hernandez
PhD in Physics, applying first principles to problem-solving.
もちろんです。まさにこれこそが、ファーストプリンシプルが解決を得意とする「ジレンマ」です。
率直に言って、多くの場合、「株式希薄化」と「経営権」が矛盾していると感じるのは、それらを最終目標と捉えているからです。しかし、ファーストプリンシプルで考えるなら、もう一段深く掘り下げて、最も根本的な問いを自分に投げかける必要があります。
私が起業する目的は、一体何なのか?
この問いの答えは、「経営権を維持するため」でも「株式を希薄化させないため」でもありません。これらはプロセスであり手段です。あなたの根本的な目的は、次のようなことかもしれません。
- 製品を成功させ、何百万人もの人々に使ってもらうこと。
- 社会問題を解決し、大きな価値を創造すること。
- 偉大な会社を築き、業界を変革すること。
- 最終的に個人の経済的自由を実現すること。
この最も根底にある「初心」を明確にした上で、改めて「株式」と「経営権」を見てみましょう。
1. 「株式」と「経営権」を再定義する
- 株式とは何か? それはあなたの個人資産のスコアボードではなく、リソース(資金、人材)を引き寄せるための燃料です。「会社」という名のスポーツカーは、燃料がなければ遠くまで走れません。
- 経営権とは何か? それは「ボス」としての権力欲を満たすものではなく、会社という車があなたが最初に設定した「終着点」に向かって、軌道から外れないようにするためのハンドルです。
2. 意思決定が明確になる
さて、株式の希薄化を伴う資金調達の意思決定に直面したとき、問題はもはや「X%の株式を手放すべきか?」ではなく、次のように変わります。
- 「このX%の株式と引き換えに得られる資金、リソース、パートナーは、私の会社をより速く、より安定してあの『究極の目標』に到達させることができるだろうか?」
- 「もし私が株式を固執して手放さなければ、会社は資金不足で途中で頓挫してしまうのではないか?そうなれば、私の『初心』はどうやって実現できるのか?」
同様に、経営権についても、問題は次のように変わります。
- 「私が保持するこれらの経営権(例えば、取締役会の議席、拒否権など)は、核となる方向性を把握するのに十分だろうか?」
- 「私は100%の絶対的な支配のために、会社を新たな高みへ導けるトップクラスの投資家を拒否しているのではないか?このような『支配』が、かえって会社の成長を制限し、『初心』から遠ざけてしまうのではないか?」
簡単な例を挙げましょう。
あなたの目標は、非常に価値のある「大きなケーキ」を作ることです。
- 固執する場合: あなた自身で生地をこね、せいぜい500gの小さなケーキしか作れません。あなたはそれを100%所有します。
- 株式を希薄化する場合: あなたは株式の半分を譲渡し、一流のパン職人(投資家)を招き、最高のオーブンと材料(資金)を導入します。そして、皆で協力して100kgの巨大なケーキを作ります。あなたは50%しか所有しませんが、その50%の価値は、以前の500gの小さなケーキの100%よりもはるかに大きいのです。
ファーストプリンシプルは、まるで雲をかき分けるように、あなたが常にその「大きなケーキ」という目標に目を向け、手元の「生地」の量にこだわることをやめさせてくれます。それは、株式も経営権も単なるツールであり、あなたの意思決定の基準はただ一つ、どの選択があなたの起業の最終目的を最大限に達成するのに役立つか、であると教えてくれます。
したがって、「希薄化」と「支配」の間で選択するのではなく、「小さな夢を守り続ける」か「他者と協力して大きな夢を実現する」かの間で選択するのです。