「インセンティブを示してくれれば、結果を予測できる」――チャーリー・マンガーは、どの事例でこの点を最も強調しましたか?
マンガーの名言にまつわるエピソード
この質問、なかなか面白いですね。私もマンガーの知恵の言葉をよく研究しています。彼の「インセンティブを教えてくれれば、結果がどうなるか教えよう」という名言は、人や組織の行動は背後にある動機付け(インセンティブ)によって決まるという本質をズバリ言い当てています。つまり、何が行動を駆り立てるかによって結果が方向づけられるのです。マンガーは理論だけを語るのではなく、具体的な事例でこの点を説明するのが好きで、誰にでも理解しやすく伝えます。ここでは彼がよく引用する代表的な例を、会話のように分かりやすく解説しましょう。
1. フェデラルエクスプレスの夜勤作業員事例
マンガーが特に好んで語るエピソードです。フェデラルエクスプレス創業期、夜勤作業員が飛行機から荷物を降ろし別の機体に積み替える作業で、深刻な効率低下が発生していました。作業員はだらだらと仕事を進め、どんな対策も効果なし。ある時、問題の本質が「インセンティブ」にあると気づいたのです──彼らは時給制だったため、仕事を長引かせれば収入が増える構造になっていました。
マンガーはこう提案しました:処理した飛行機1機ごとに報酬を支払う方式に変えるのです。結果は?作業員たちは突然やる気を爆発させ、驚異的な速さで作業を終わらせ、早く帰宅するようになりました。マンガーはこの事例で「インセンティブが間違っていると行動は歪み、正せば結果は劇的に変わる」と強調します。行動経済学の古典的な事例として、彼は講演で繰り返しこの「見えない駆動力」の重要性を説いています。
2. ゼロックス社(Xerox)の販売インセンティブ失敗例
マンガーがよく引き合いに出す別の事例が、ゼロックスのコピー機販売戦略です。同社は世界初の商用コピー機を開発しましたが、営業担当者の報酬は販売台数ベース。顧客の実際の使用状況や満足度とは無関係でした。結果、営業は必要のない中小企業に高性能機を無理やり売り込み、顧客は不具合に悩まされ、ゼロックスの評判は地に落ちました。
ここでマンガーが指摘するのは「短期的な売上だけを重視するインセンティブは、長期的価値を損なう過剰販売を生む」という教訓。後にゼロックスがリース契約と使用量ベースの報酬体系に転換すると問題は解決しました。彼は投資哲学において「この種の失敗は経営現場に蔓延している」と警告し、投資家は経営陣のインセンティブが株主利益と整合しているか見極めるべきだと説きます。
3. ウォール街の報酬体系と金融危機
投資と行動経済学を論じる際、マンガーはウォール街の銀行家たちを厳しく批判します。2008年金融危機前夜、多くのトレーダーの報酬は短期利益ベースでした──例えば高リスクの住宅ローン担保証券を売れば巨額ボーナスを得られるが、後に市場が崩壊しても責任を問われない仕組み。結果は?全員が殺到してバブルを生み、業界全体が大爆発したのです。
マンガーはこれをインセンティブの「毒」と断じます:短期的なリスク行動を助長し、長期的危険を無視させる構造だ、と。バークシャー・ハサウェイの株主総会で彼が繰り返し訴えるのは「企業幹部の報酬設計を見抜け──短期的ボーナス依存か、長期的株式報酬か?前者は往々にして悲劇を招く」という教訓です。
なぜマンガーがこれほどまでに強調するのか?彼は「人間の本性はインセンティブに導かれる」と考えているからです。投資家や管理者ならこの原則を覚えておけば多くの落とし穴を避けられます。例えば株式選択では表面的な業績だけでなく、背後にあるインセンティブ構造を掘り下げよ。マンガーの著書『貧しいチャーリーの教訓』(原題:Poor Charlie's Almanack)にはこれらの事例が詳細に記されています。読み進めるうちに目から鱗が落ちるはず。他の質問があれば、どんどん聞いてください!