これについては、両面から見る必要があると思います。
一方で、AIは各記者に「スーパーアシスタント」をつけたようなものです。以前、決算報告のニュース記事を書くには、記者が大量のデータを見て、苦労して書き上げていました。しかし今では、AIが決算報告を1秒で読み込み、正確なデータで記事を瞬時に生成できます。スポーツの試合結果や株式市場の動向など、定型的なニュースはAIがすべて処理できます。これにより、記者は反復作業から解放され、深掘り調査やインタビューなど、より重要な仕事に時間を費やすことができるようになります。
また、ニュース推薦もそうです。以前は、皆が同じ新聞の一面を見て、同じ内容を読んでいました。しかし今では、AIがあなたの興味に基づいて、最も関心のあるコンテンツを推薦してくれます。あなたがテクノロジーに関心があれば新製品発表を多く、彼がペットに関心があれば可愛い猫や犬の情報を多く、といった具合です。ニュースはより「パーソナルオーダーメイド」になったのです。
その一方で、大きな課題もあります。
最大の問題は「フェイクニュース」です。AIは記事を素早く書けるだけでなく、デマも素早く作り出せます。しかも、AIが作り出すデマは、画像や動画(ディープフェイクなど)を伴って非常にリアルに見えるため、一般の人々には見分けがつきにくいかもしれません。また、AIの推薦アルゴリズムは、あなたを「情報繭(情報コクーニング)」に陥れる可能性もあります。つまり、あなたが好きなものばかりを推薦し続けるため、やがて他の意見を聞かなくなり、考え方がますます過激になる恐れがあります。
ですから、未来のジャーナリズムは、AIが記者に取って代わるのではなく、「人間とAIの協業」という形になると思います。
AIはデータの処理、情報の迅速な生成、ニュースのネタ探し、さらには事実確認の支援を担当します。しかし、最終的な判断、温かみのあるインタビュー、事件の裏にある人間ドラマの掘り下げ、そして何が価値があり倫理にかなったニュースであるかを決定するのは、やはり人間の役割です。
記者の役割は、「情報伝達者」から「真実の調査員」、「物語の語り手」、そして「AIツールの使い手」へと変化するでしょう。彼らは、AIという強力なツールをいかに効果的に活用するかを理解すると同時に、それがもたらすリスクにも警戒し、ニュースの真実性と客観性という最低限のラインを守る必要があります。結局のところ、技術に善悪はなく、それを使う人次第なのです。