私は「治る」のでしょうか?それとも生涯管理が必要なのでしょうか?

こんにちは。ご質問を拝見し、とても共感しました。甲状腺がんと診断されたばかりの方や治療を終えたばかりの方は、皆さんこの問題を心に巡らせるものです。まるで心に石を抱えているようで、それがいつ地面に落ちるのか知りたい気持ちでしょう。

経験者として、私の理解をお話しします。あなたがこのことをより良く捉える助けになれば幸いです。


まず結論から:むしろ「一生涯の管理」ですが、聞こえるほど怖いものではありません

甲状腺がんは、「臨床的に治癒可能」な慢性疾患と捉えることができます。

  • 「臨床的な治癒」とは? 手術やアイソトープ治療(放射性ヨウ素治療)などの後、医師が血液検査や超音波検査などあらゆる検査手段を尽くしても、あなたの体内にがん細胞の痕跡が全く見つからない状態を指します。医学的には「NED(No Evidence of Disease:疾患の証拠なし)」と呼ばれます。大多数の早期甲状腺がん患者にとって、この状態に到達することは非常に可能性が高く、予後は極めて良好です。
  • 「慢性疾患」とは? 高血圧や糖尿病のように、病巣はなくなったものの、再発を防ぎ身体の正常な機能を維持するために、特定の指標を長期的にモニタリングし管理する必要がある状態を意味します。

私はよく「庭の手入れ」に例えて説明します

甲状腺がんの治療と管理は、庭の手入れに少し似ています。

  1. 大きな雑草を抜く(手術治療): あなたの手術は、庭で最も目立ち、邪魔な大きな雑草(腫瘍)を根こそぎ抜くようなものです。多くの人にとって、このステップで問題の90%以上は解決します。
  2. 土壌をきれいにする(必要な場合のアイソトープ治療): 雑草を抜いた後も、土の中には見えない雑草の種や小さな根(微小な病巣や転移)が残っていることがあります。アイソトープ治療は、土壌に穏やかな「除草剤」をまくようなもので、これらの隠れたものをきれいにします。
  3. 土壌を改良し、雑草が生えないようにする(一生涯の管理): これが最も重要なステップであり、あなたの疑問の核心です。雑草はきれいになりましたが、土壌環境が雑草の成長に適したままなら、また新しい雑草が生えてくる可能性があります。そのため、以下の管理が必要です:
    • 毎日1錠の薬を飲む(チラージン/レボチロキシンなどの甲状腺ホルモン剤): この薬には2つの役割があります。第一に、甲状腺を切除したため体が不足している甲状腺ホルモンを補い、正常な代謝を維持し、疲れや体重増加を防ぎます。第二に、体内のTSH(甲状腺刺激ホルモン)という物質を抑制します。TSHは甲状腺細胞(残存する可能性のあるがん細胞も含む)にとっての「成長肥料」のようなものです。これを低く抑えることで、がん細胞が成長しようとしても「飢えて」育つことができなくなります。
    • 定期的に庭の健康診断をする(定期検査): 定期的に病院で血液検査と超音波検査を受けます。血液検査は、土壌の「肥沃度」(TSH)が適切にコントロールされているか、そして雑草が生えてくる「シグナル」(Tgという指標を検査します。これはがん細胞の「斥候(スカウト)」のようなものです)がないかを確認するためです。超音波検査は、首の領域を「地中レーダー」でスキャンし、疑わしい新しい動きがないかを見る「探査」です。

「一生涯の管理」の実際の生活は?

「一生涯」という言葉はプレッシャーに感じるかもしれませんが、実際には、すべてが安定してしまえば、それは歯磨きのように、生活の中で非常に目立たない習慣になります。

  • 初期(治療後1~2年): 経過観察のため、検査はやや頻繁(3~6ヶ月に1回程度)になることがあります。これは治療効果を確認し、薬の量をあなたに最適なレベルに調整するためです。
  • 安定期(数年後): すべての指標が理想的に安定していれば、検査の間隔は徐々に延び、半年、1年、あるいはそれ以上になることもあります。
  • 日常生活: 毎日1錠の小さな薬を飲むこと(空腹時が効果的)を覚えている以外は、生活、仕事、食事、運動は健康な人とほとんど変わりありません。旅行に行くことも、美食を楽しむことも、あなたがしたいと思うことは何でもできます。

さて、あなたの質問に戻りましょう:「私は『治る』のでしょうか?」

はい、生活の質(QOL)と寿命という観点から、大多数の甲状腺がん患者は「治癒した」と見なすことができます。 あなたは健康な人と同じように、充実した人生と平均余命を享受することができます。

そして「一生涯の管理」は、あなたがまだ病気だからではなく、「治癒」という最良の状態を長く、安定して保つために行うものです。それはあなたの将来の健康への「保険」であり、安心して生活するための「安全網」なのです。

「病人」という重荷を降ろし、「管理」を健康な生活習慣の一つとして捉えてください。時が経てば、かつてこの病気にかかったことさえ忘れてしまうでしょう。ただ、毎日ビタミン剤を飲むような習慣と、年に一度の「健康チェック」が増えただけだと感じるようになるはずです。

私の経験談が、あなたの心に抱えている石を少しでも軽くする助けになれば幸いです。頑張ってください!この道は多くの人が歩んできました。あなたにもきっと大丈夫です。