なぜ日本の銭湯の壁には富士山の絵がよく描かれているのですか?

作成日時: 8/14/2025更新日時: 8/17/2025
回答 (1)

はい、承知しました。この問題について、お話ししましょう。


なぜ日本の銭湯の壁には、よく富士山の絵が描かれているのか?

お、これは良い質問ですね!確かに日本の銭湯でよく見かけ、ほとんど「定番」と言っても過言ではない光景です。湯気が立ちこめる浴室に入ると、天を見上げれば巨大な富士山の壁面画が目に飛び込んできて、まさに「銭湯らしさ」を感じさせます。

実は、これにはいくつか興味深い理由があるんです。ひとつずつ見ていきましょう:

1. 偶然の始まり: お客様を喜ばせるために

この話は100年以上前にさかのぼります。銭湯の壁に初めて富士山を描いたのは、1912年(大正元年)、東京・神田にあった「喜開湯(きかえゆ)」という銭湯だと言われています。

この銭湯の主人は静岡県の出身で、故郷からは雄大な富士山がよく見えていました。訪れるお客様(特に子どもたち)にもっと喜んでもらい、リラックスしてもらおうと、彼は広告看板絵師の川越政造(かわごえ まさぞう)という人物に壁に絵を描いてもらうことにしました。何を描こうか?主人は自然と故郷の誇りである富士山を思いついたのです。

結果、この絵は大評判に!お客様は、温かいお湯に浸かりながら雄大な富士山を見ていると、心身共に非常にリラックスできると感じました。このアイデアはあっという間に広まり、東京やその周辺の他の銭湯が次々と真似をするようになり、徐々に富士山の壁画は銭湯の「標準装備」となっていったのです。

2. 視覚的な「広がり」: 狭い空間の中の大パノラマ

考えてみてください。浴室は通常、閉ざされた水蒸気が充満した空間で、長時間いると少し息苦しさを感じることもあります。

一方、富士山の絵といえば、青い空と白い雲、雪を頂いた山頂、山麓には湖や海が広がる雄大な景色が典型的です。こうした「大パノラマ」を壁に描くことで、空間の広がりや遠近感を大きく引き出すことができます。まるで「偽りの窓」のようで、入浴中にもかかわらず、自然の中にいるような気分にさせてくれるのです。気持ちもスッキリし、圧迫感も和らぎます。

3. 縁起の良さ: 富士山の神聖なオーラ

日本の文化において、富士山は単なる美しい山ではなく、「霊峰」、すなわち神聖な象徴なのです。

  • 幸運と長寿: 日本人は古くから富士山に神聖な力があり、幸運を招くと信じてきました。その名前「富士(ふじ)」の読みは、「不死(ふし)」や「無事(ぶじ)」に結びつけることができます。つまり、長寿や健康・平穏無事の象徴でもあるのです。体を清める入浴をしながら、長寿と健康を象徴する富士山を見るなんて、これ以上ない程の二重の縁起担ぎと言えるでしょう!
  • 「一富士、二鷹、三茄子」: これは日本における「初夢」(新年に初めて見る夢)についての言い伝えです。この三つのうちどれかを夢に見ると、一年間の幸運を約束されると言われています。富士山が第一位に挙げられていることからも、日本人の心の中でどれほど縁起の良いものとされているかがわかります。

したがって、銭湯に富士山を描くことは、店側からお客様への「ご健康とご多幸を祈って」という思いやりも込められているのです。

4. 一種の「国民的ノスタルジー」: 日本人の心に刻まれた故郷の山

地方から東京などの大都市で働く多くの人々にとって、富士山は日本の象徴であり、心の中にある「故郷」を代表するものだったのです。

テレビやインターネットのなかった時代、銭湯は重要な社交場でした。人々は一日の辛い労働の後、ここで疲れを洗い流し、近所の人たちとのんびりと話をしました。その時、見上げた天井に描かれたおなじみの富士山は、故郷の山を見ているかのような感覚を与え、多大な精神的安らぎや帰属意識をもたらしたのです。

まとめますと、銭湯の富士山壁画は、もともとはある店主の思い付きで始まったのかもしれません。しかし、それが人々の視覚的、心理的、文化的な様々なニーズにぴたりと応えたために、定着し、人々の心に深く刻まれる伝統となったのです。

ですから、次に日本の銭湯に入る機会がありましたら、ぜひその壁画を見上げて、ユニークな日本の情緒と絵の中に込められたたくさんの温かい想いを感じてみてくださいね!

作成日時: 08-14 09:20:10更新日時: 08-14 15:36:31