抹茶 (Matcha)

抹茶（まっちゃ）は、日本の伝統文化に深く根ざした、特別な製法で作られる緑茶の一種です。単なる飲み物としてだけでなく、その豊かな歴史、独特の風味、そして鮮やかな色彩から、世界中の食文化やライフスタイルに影響を与え続けています。

抹茶は、碾茶（てんちゃ）と呼ばれる茶葉を石臼（いしうす）で挽いて微粉末状にしたものです。碾茶は、収穫前に茶の木に覆いを被せて日光を遮る「覆下栽培（おおいしたさいばい）」によって栽培されます。これにより、茶葉のクロロフィル（葉緑素）が増加し、鮮やかな緑色と、苦味・渋みの元となるカテキンの生成が抑えられ、旨味成分であるテアニンが豊富な茶葉が育ちます。

歴史と文化

抹茶の起源は9世紀の中国・唐の時代に遡りますが、現代の抹茶文化を形成したのは日本です。

• 日本への伝来: 12世紀末（鎌倉時代）、臨済宗の開祖である栄西禅師（えいさいぜんじ）が宋から茶の種子と抹茶の製法を持ち帰ったのが始まりとされています。当初は禅宗の寺院で、修行中の眠気覚ましとして飲用されるなど、薬としての役割も担っていました。
• 茶の湯の確立: 室町時代から安土桃山時代にかけて、村田珠光（むらたじゅこう）、武野紹鴎（たけのじょうおう）を経て、千利休（せんのりきゅう）によって「茶の湯（茶道）」が大成されました。抹茶は茶の湯の中心的な存在となり、精神性を重んじる「わびさび」の文化とともに発展しました。
• 現代への広がり: かつては茶道の世界で嗜まれる特別なものでしたが、現代ではその健康効果や汎用性の高さから、抹茶ラテやスイーツなど、様々な形で世界中の人々に親しまれています。

抹茶の特徴

主な栄養成分と効能

抹茶は茶葉を丸ごと摂取するため、水に溶け出さない栄養成分も効率的に摂ることができます。

抹茶の種類とグレード

抹茶は品質や用途によって明確にグレードが分かれています。

基本的な抹茶の点て方（薄茶）

家庭でも気軽に楽しむことができます。

1. 用意するもの

• 抹茶碗 (Chawan): 抹茶を点てるための茶碗
• 茶筅 (Chasen): 抹茶を点てるための竹製の道具
• 茶杓 (Chashaku): 抹茶をすくうためのさじ

2. 手順

1. 茶碗を温める: 抹茶碗にお湯を入れ、茶碗と茶筅の穂先を温めます。温まったらお湯は捨て、布巾で水分を拭き取ります。
2. 抹茶をふるう: 茶こしなどを使い、抹茶をふるいにかけます。これによりダマがなくなり、滑らかな口当たりになります。
3. 抹茶を入れる: 茶杓2杯（約2g）ほどの抹茶を茶碗に入れます。
4. お湯を注ぐ: 沸騰させてから少し冷ましたお湯（70〜80℃）を約70ml、静かに注ぎ入れます。
5. 点てる: 茶筅を手首のスナップを効かせて、アルファベットの「m」や「w」を描くように素早く前後に振ります。表面にきめ細かいクリーミーな泡が立てば完成です。