グレアムは「平均収益」についてどのような見解を持っていましたか?

作成日時: 8/15/2025更新日時: 8/17/2025
回答 (1)

承知いたしました。日本語訳は以下の通りです。


グレアムはなぜ「当期利益」でなく「平均収益」を見るのか?

あなたが街角の中華まん屋を買おうとしている場面を想像してみてください。

店主に「このお店は儲かっていますか?」と尋ねます。 すると店主は得意げに今年の帳簿を見せながら言います。「大儲けですよ!今年は純利益20万円でした!」

それだけ聞けば、悪くないように感じますね。しかし、もしあなたがグレアムのように賢い投資家なら、一年分の帳簿だけでは判断しません。きっと「店主さん、過去数年の帳簿も見せてくれませんか?」と追加で尋ねるでしょう。

そこで分かるのは:

  • 今年の20万円の利益は、店の横で地下鉄工事があり客足が急増したため。
  • 去年の利益はたった5万円。
  • おととしは業績不振で、2万円の赤字。
  • さおととしは7万円の利益。

これを見たあなたは、まだこの店が「年間20万円の利益を上げている価値がある」と思いますか? おそらく思わないでしょう。この店の通常時の年間利益は5~6万円程度だろう、と考えるはずです。今年の20万円は「棚ぼた的な収益」であり、常態とはいえないのです。

これがグレアムが「平均収益」を見る際の核心的な考え方です。

氏は、会社のたった一年分の利益(収益)だけを見ることは、極めて信頼性が低く、場合によっては誤解を招く、と強く主張しました。

なぜ一年分の利益だけでは信頼できないのか?

会社経営も中華まん屋と同じで、様々な要因の影響を受け、いわば「良い年」もあれば「悪い年」もあるからです:

  1. 景気循環: 景気が良い時は皆お金を持っているので、会社の製品はよく売れ利益も上がります。景気が悪い時は皆が財布の紐を締めるため、会社の利益は当然低くなります。これはまるで潮の満ち干のようなものです。満ち潮の時の水位だけを見て海の深さを測るのは間違いのもとです。
  2. 業界の変動: 鉄鋼や化学工業など、もともと業績変動が激しい業界もあります。価格が乱高下するため、利益も大きく揺れ動きます。
  3. 一時的な出来事: 会社がビルを売却したり、政府からの補助金を受け取ったりすることで、ある年の利益が急増する場合があります。しかし、これは明らかに本業による持続的な稼ぐ力ではありません。来年にはなくなる可能性が高いのです。逆に、一時的な罰金や資産の減損により、その年の利益が著しく悪化するケースもあります。

グレアムの解決策:「平均収益」を見る

そこでグレアムは、当時としては非常に先進的な考え方を提唱しました:企業の真の「収益力」(Earning Power)を評価するには、直近の(昨年の)業績だけを見るのではなく、過去数年(例えば7年から10年)の平均利益を見るべきだと。

氏は、ある企業の過去7年または10年の年間1株当たり利益(EPS)を合計し、年数(7または10)で割ることで「平均1株当たり利益」を算出することを提案しました。

この方法の利点とは?

  • 循環の平坦化: 7~10年という期間は、通常、景気循環の一巡(山もあれば谷もある)をカバーします。これにより算出された平均値は、「普通の状態」における企業の稼ぐ力をより的確に表すことができます。
  • ノイズの除去: 前述のビル売却のような「一時的」な良い出来事や悪い出来事の影響は、10年という長期間の平均の中で大幅に薄まります。これにより、会社の本業の真の姿がよりクリアに見えてきます。
  • 感情的な判断の防止: 市場が、ある企業のある年の好業績を理由に熱狂的に買いあさり(株価が高騰)、「株価が高すぎる」状態になっても、「平均収益」はこう警告します:「落ち着いて。普段はそこまで儲かっていませんよ」。逆に、企業がある年の業績不振を理由に市場から見放され(株価が暴落)、「株価が安すぎる」状態になっても、「平均収益」はこう語りかけます:「心配いりません。基本はそこまで悪くありません。これはチャンスかもしれませんよ」。

まとめると

簡単に言えば、グレアムが「平均収益」を重視する姿勢は、経験豊富な面接官の視点に似ています。

面接官は、あなたがたった一度のプロジェクトで特に優れた成果を出したという理由だけで即座に最高評価を下したりはしません。また、たった一度のミスであなたを完全に否定したりもしません。その代わりに、面接官はあなたの過去数年分の経歴を注意深く調べ、あなたが持つ一貫した、真の実力水準を理解しようとします。

この「平均収益」を基盤として企業価値を評価すれば、より堅牢で、より保守的(安全志向)な価格が導き出され、「価値(本質的な価値)を大きく下回る値段」という絶好の投資機会を見つける手助けになります。これはまさに、バリュー投資が追求する「安全域(Margin of Safety)」の核心的な考えを体現しています。

作成日時: 08-15 15:45:26更新日時: 08-16 01:03:56