こんにちは!このとても興味深い「二封筒問題」についてお話しできて嬉しいです。これは確かに人を混乱させますが、理解すると視界がパッと開けるような感覚になりますよ。
二封筒問題とは?
次のシナリオを想像してみてください。
ある人があなたに全く同じ封筒を2つ差し出し、こう言います。
- 片方の封筒に入っているお金は、もう一方の2倍です。
- 具体的な金額は分かりませんが、一方は
A
円、もう一方は2A
円であることは確かです。
さて、あなたはランダムに1つの封筒を選びました。開ける前に、その人があなたに尋ねます。「もう1つの封筒と交換しますか?」
このとき、あなたはどう判断すべきでしょうか?
「損することはない」ように見える交換戦略
ほとんどの人は最初、交換しても交換しなくても同じで、確率は50%だから違いはないだろうと思うかもしれません。
しかし、ここで「数学的」な方法で考えてみましょう。パラドックスはここから始まります。
- あなたが持っている封筒の中のお金を
X
円と仮定します。 - すると、もう1つの封筒に入っているお金は、2つの可能性しかありません。
- もしあなたが金額の少ない方の封筒を引いたのなら、
2X
円。 - もしあなたが金額の多い方の封筒を引いたのなら、
X/2
円。
- もしあなたが金額の少ない方の封筒を引いたのなら、
- あなたはランダムに選んだので、これら2つの可能性は等しく、それぞれ50%の確率であるように見えます。
さあ、ここで交換後に得られる金額の「期待値」(Expected Value)を計算してみましょう。つまり、平均的にどれくらいの金額が得られるかということです。
期待値 = (2X
を得る確率 × 2X
) + (X/2
を得る確率 × X/2
)
期待値 = (50% × 2X
) + (50% × X/2
)
期待値 = X
+ 0.25X
期待値 = 1.25X
なんと!計算によると、交換後の期待値は 1.25X
で、あなたが今持っている X
よりも25%も多いではありませんか!
この計算によれば、結論は「あなたは常に交換すべきである!」ということになります。
パラドックスの登場です:もしあなたが交換し、別の封筒を受け取ったとします。それを開ける前に、私があなたに同じ質問をします。「元に戻しますか?」先ほどと全く同じロジックに従えば、あなたの手元にある新しい封筒の金額が Y
なら、元に戻す場合の期待値は 1.25Y
なので、あなたはまた元に戻すべきだということになります……これは無限の交換のデッドロックに陥ってしまいます。
これは明らかに馬鹿げています。では、一体どこに問題があるのでしょうか?
パラドックスのどこが間違っているのか?
このパラドックスの最も核心的なトリックは、変数「X」の定義が混乱しており、概念がすり替えられていることにあります。
上の計算では、X
はある時は「より少ない金額の封筒の金額」を表し、またある時は「より多い金額の封筒の金額」を表していますが、同じ式の中で、それは固定された、既知の基本値として扱われています。これは論理的に誤りです。
別の視点から考えてみましょう
あの紛らわしい X
は忘れて、最初の設定から出発しましょう。2つの封筒に入っているお金をそれぞれ A
と 2A
とします。
あなたが手にしている封筒は、2つのケースしかありません。
- ケース1:あなたは
A
円入りの封筒を選んだ。交換すれば2A
円を手に入れ、A
円の純利益。 - ケース2:あなたは
2A
円入りの封筒を選んだ。交換すればA
円を手に入れ、A
円の純損失。
これら2つのケースが発生する確率はどちらも50%です。
そこで、交換による純利益の期待値を計算してみましょう。
純利益の期待値 = (ケース1の確率 × 利益) + (ケース2の確率 × 利益)
純利益の期待値 = (50% × +A
) + (50% × -A
)
純利益の期待値 = 0.5A
- 0.5A
= 0
結論は明確です:数学的期待値の観点からは、交換しても交換しなくても得られる利益は全く同じです。交換によって「儲かる」ことはありません。
では、なぜあの 1.25X
という計算は間違っているのでしょうか?
E = 0.5 * (2X) + 0.5 * (X/2)
という式の中で、2つの X
が同じものを表していないからです。
2X
の項におけるX
は、少ない方の封筒の金額(すなわちA
)を表します。X/2
の項におけるX
は、多い方の封筒の金額(すなわち2A
)を表します。
A
を表す X
と 2A
を表す X
を同じ式の中で、同じ基準値として収益率を計算することはできません。これはリンゴの重さとミカンの価格を足し引きするようなもので、単位が統一されておらず、全く意味がありません。
一聞瞭然の例
あなたが自分の封筒を開け、中に100円入っているのを発見したと仮定しましょう。
さて、あなたは交換すべきかどうかを考えます。もう1つの封筒には、50円か200円のどちらかが入っているはずです。
- 可能性A:封筒のペアが(50, 100)の組み合わせだった場合。あなたは100を手にしたので、交換すれば50を失います。
- 可能性B:封筒のペアが(100, 200)の組み合わせだった場合。あなたは100を手にしたので、交換すれば100を得ます。
交換すべきかどうかは、あなたが可能性Aと可能性Bのどちらの確率が高いと考えるかに完全に依存します。
- もし封筒を渡したのが貧乏な学生だとしたら、彼が100と200の組み合わせ(合計300)を用意する確率は低いかもしれません。その場合、(50, 100)という組み合わせの可能性の方が高いでしょう。そうなれば、あなたは交換すべきではありません。
- もし封筒を渡したのがビル・ゲイツだとしたら、彼が(100, 200)の組み合わせを用意することなど造作もないことです。もしかしたら(100万円, 200万円)の可能性さえあるでしょう。それと比べれば、(50, 100)のような「少額」の組み合わせの確率は低いかもしれません。そうなれば、あなたは交換すべきかもしれません。
わかりましたか?あなたがより多くの情報(例えば、封筒を開けて具体的な金額を見ることや、仕掛け人の背景に関する知識)を得た後では、意思決定は単純な50/50ではなくなります。パラドックスのあのアルゴリズムは、まさに現実世界で極めて重要となるこれらの「事前知識」を無視しているのです。
まとめ
二封筒問題は非常に古典的な論理的罠であり、数学そのものに問題があるわけではなく、問題の構築方法に誤解を招く部分があるのです。
- 核心的な誤り:あの「
1.25X
」という計算は、変数X
の定義を誤って混同しています。 - 正しい視点:神の視点から見ると、金額を
A
と2A
と設定した場合、交換による期待収益はゼロです。 - 現実の意思決定:あなたが封筒を開けて具体的な金額を見た後では、あなたの意思決定は純粋な数学の問題ではなく、「この金額がどのようにして生まれたのか」についての確率的判断(ベイズ推論)に基づきます。
ですから、次に誰かがこの問題であなたを「試す」ようなことがあれば、あなたは彼にこう伝えることができます。「あの巧妙に見える1.25X
の計算は、実は巧妙な論理的トリックに過ぎないんですよ」と。😉