「モラルハザード」とは何ですか?救済措置において、それはどのように現れますか?

兵 孟
兵 孟
Former central banker, expert in macro-prudential policy.

こんにちは、「モラルハザード」という言葉についてですが、実はそれほど難しいものではありません。分かりやすい言葉で説明しますので、きっとご理解いただけるでしょう。

「モラルハザード」とは?

想像してみてください。あなたが「フルカバー保険」に入っていて、携帯電話をどれだけ落としても、水に濡らしても、保険会社が全額を支払って新しい携帯電話を弁償してくれるとします。しかも、あなたは一銭も追加で払う必要はありません。

この時、あなたは自分の携帯電話をあまり大切にしなくなるのではないでしょうか?例えば、ソファに放り投げたり、雨の日でも外で使ったり、保護フィルムやケースを付けるのも面倒になったりするかもしれません。なぜなら、携帯電話が壊れても、どうせ保険会社が補償してくれるので、自分には何の損害もないと分かっているからです。

このように「どうせ誰かが補償してくれるから、行動がより大胆になり、より無責任になる」という心理と行動こそが、「モラルハザード」なのです。

簡単に言えば、自分の行動がもたらす負の結末を完全に負う必要がない場合、その人はよりリスクの高い、あまり慎重ではない行動を取りやすくなるということです。


それが「救済」においてどのように現れるのでしょうか?

この概念は、金融危機や政府による救済、特に「大きすぎて潰せない」(Too Big to Fail)金融機関に対して、如実に現れます。

1. 「大きすぎて潰せない」という暗黙のルール

ウォール街の巨大銀行のように、その事業は複雑に絡み合い、経済システム全体と結びついています。もしそのうちの1つが(例えば、あまりにも多くの高リスク商品に投資しすぎて)破産寸前になった場合、それは連鎖反応を引き起こし、金融システム全体の崩壊、大恐慌、そして無数の失業者を生み出す可能性があります。

これらの銀行の経営幹部たちは、そのことをよく理解しており、次のような予想を抱きます。「我々の規模はあまりにも大きい。もし我々が潰れたら、皆が破滅するだろう。だから、政府は自衛のために、我々を救済せざるを得ないだろう。」

2. 「利益は自分に、損失は皆に」というギャンブル

上記のような「どうせ政府が助けてくれる」という予想があるため、モラルハザードが発生します。

  • ギャンブルに勝った場合: 銀行は高リスク投資によって巨額の利益を得て、経営幹部は高額なボーナスを受け取り、株主は莫大な富を築きます。
  • ギャンブルに負けた場合: 銀行は莫大な損失を出し、破産寸前になります。この時、政府は経済全体が巻き込まれるのを避けるため、納税者の税金を使ってその銀行を「救済」し、その穴埋めをするしかありません。

ご覧の通り、これは**「利益は私が取り、リスクはあなたが負う」**という完璧なゲームになります。銀行の経営幹部たちは、高リスクなギャンブルを行う強い動機を持っています。なぜなら、最悪の結果(破産清算)が政府の「暗黙の保証」によって排除されているからです。彼らは冒険がもたらすすべての恩恵を享受しながらも、最も致命的な結果を負う必要がないのです。

3. 救済の悪循環

成功するたびに、その救済は市場全体に「ほら、本当に助けてくれるだろう!」というシグナルを送ります。これは、他の金融機関のモラルハザード心理をさらに強めます。皆は、自分も十分に大きくなれば、この「命拾いの特権」を享受できると感じるでしょう。

これにより、金融システム全体のリスク選好はますます高まり、皆がババ抜きゲームをしているような状態になり、最終的にはより大規模な危機が引き起こされる可能性があります。

まとめると:

金融救済における「モラルハザード」とは、自分たちが何か問題を起こしても政府(納税者)の救済が得られるという予想があるため、金融機関がより積極的で危険な投機的活動を行うことを指します。このメカニズムは、金融危機が繰り返し発生する根深い原因の一つであり、世界の規制当局が最も頭を悩ませる問題の一つでもあります。