もちろん、この質問は非常に良い点をついています。簡単に言えば、答えは「はい、パニックは金融危機の一部であるだけでなく、その触媒であり増幅器でもあります。」です。
パニックがなければ、多くの金融問題は単なる「困難モード」で済むかもしれませんが、パニックがあれば、それは直接「地獄モード」に突入します。
このことを次のように理解できます。
1. 金融市場の本質は「信用」である
銀行を想像してみてください。私たちが銀行にお金を預けるのは、金庫に自分のお金が山積みになっているのを見ているからではなく、私たちが引き出したいときに銀行がお金を提供できると信じているからです。銀行は私たちの預金を他者に貸し出したり、投資したりします。このシステム全体が機能するのは、この「信用」があるからです。
金融市場における株式、債券、ファンドなども、未来に対する「信用」に基づいています。私たちは、この会社が利益を上げると、このプロジェクトが成功すると信じています。
2. 「火花」対「火災」
ある金融問題、例えば、ある大企業が投資に失敗して巨額の損失を出したり、不動産価格が少し下がり始めたりするようなことは、小さな「火花」のようなものです。通常であれば、市場はゆっくりとこの悪いニュースを消化し、調整して、事態は収まります。
しかし、パニックは、この「火花」に大量のガソリンを注ぐようなものです。
例えるなら: 満員の映画館で、隅の小さなゴミ箱から煙が出ている(これが「問題」)とします。
- パニックがない場合: 人々はそれを見て、誰かが冷静に消火器を持ってきて消したり、秩序だって避難したりして、何も問題は起きません。
- パニックがある場合: 誰かが「火事だ!爆発するぞ!」と叫びます。すると、全員が我先にと出口に殺到し、互いに押し合い、踏みつけ合い、結果として出口が塞がれ、本来小さな問題だったものが、甚大な死傷者を出してしまいます。
この将棋倒し事故で、実際に死傷者を出したのは小さな火花ではなく、「パニック」そのものだったのです。
金融危機は、典型的な「将棋倒し事故」です。
3. パニックはいかにして危機を爆発させるのか?
パニックが広まると、いくつかの連鎖反応が起こります。
- 銀行取り付け騒ぎ (Bank Run): 預金者たちは噂を聞きつけ、銀行が倒産するのを恐れて、全員が同時に銀行に殺到してお金を引き出そうとします。しかし、銀行のお金の大部分は貸し出されており、手元の現金は全く足りません。健全な銀行でさえ、このような取り付け騒ぎには耐えられず、本当に倒産してしまいます。これが「信用の崩壊」です。
- 資産の投げ売り (Fire Sale): 投資家たちは、手持ちの株式、債券、不動産が無価値になることを恐れ、コストを顧みずに必死に売り始めます。あなたが売れば私も売り、価格は崖のように急落します。この下落は、企業のファンダメンタルズが悪化したからではなく、純粋にパニックによるものです。皆が逃げ道を求めており、そのものがどれだけの価値があるかなど誰も気にしません。
- 流動性の枯渇 (Liquidity Freeze): 全員が資産を現金に換えたいと思い、誰も買いたがらないとき、市場は「凍結」します。つまり、流動性がなくなります。企業は資金を借りられなくなり、銀行間でも互いに資金を貸し借りすることを恐れるようになります。金融システム全体の血液が凝固し、経済活動も停止します。
結論
したがって、ご覧の通りです。
当初は局地的で制御可能だったかもしれない金融問題が、パニック心理の伝染と増幅によって、システム全体に波及する自己実現的な災害へと急速に発展します。人々は危機が来ることを恐れるあまり、実際に危機を引き起こす行動をとってしまうのです。
そのため、パニックは金融危機の不可欠な要素であるだけでなく、問題が「問題」から「災害」へとエスカレートする核心的なメカニズムそのものです。市場の期待を管理し、信用を再構築することは、各国政府や中央銀行が金融危機に対応する上で最も重要な仕事の一つとなるのも、このためです。