はい、この問題は非常に興味深いですね。この二つの危機は、見た目は違えど血縁と気質がよく似た兄弟のようなものだと考えてみてください。どちらも私たちに深い教訓を与えてくれました。
簡単に言えば、1980年代の「貯蓄貸付組合危機(S&L危機)」と2008年の「金融危機」の核となる共通点は、以下の数点に集約できます。
1. 規制緩和で、大胆になった
- 貯蓄貸付組合危機(80年代): 本来、「預金を受け入れ、住宅ローンを貸し出す」という安全なビジネスしか許されていなかった「貯蓄貸付組合(S&L)」が、突然政府から「もっと刺激的なこともやっていいぞ!」と言われたと想像してみてください。すると彼らは、預金者の資金を高リスクの商業用不動産やジャンク債などに投資し始めました。一気に大胆になったのです。
- 金融危機(2008年): 同様に、2008年の危機前には、ウォール街の金融規制も大幅に緩和されていました。大手銀行はより高いレバレッジ(つまり、より多くの借金)を使って投資を行うことを許され、さらに、目まぐるしく複雑でリスクの高い金融商品(後述のCDOなど)を次々と生み出しました。
要するに、どちらの危機も、まず「規制緩和」が行われ、金融機関が「良い子」から「やんちゃな子」へと変貌したのです。
2. どちらも「不動産」という火薬庫が関係している
- 貯蓄貸付組合危機(80年代): 当時の火薬庫は商業用不動産でした。大量の資金がオフィスビルや商業施設などのプロジェクトに流れ込み、過剰な建設を引き起こし、巨大なバブルが膨らみました。
- 金融危機(2008年): 今回の火薬庫は、私たちにとってより馴染み深い住宅市場でした。銀行は、信用力が低く収入も少ない人々(いわゆる「サブプライムローン借り手」)に住宅ローンを大量に貸し付けました。彼らは、住宅価格は上がり続けると信じており、たとえ返済できなくなっても、家を売れば利益が出ると考えていたからです。
どちらの危機も、引き金となったのは不動産バブルです。一方は商業用不動産に賭け、もう一方は住宅に賭けましたが、本質的にはどちらも「住宅価格は永遠に上がる」という神話に賭けていたのです。
3. 金融機関が「ババ抜き」という危険なゲームをしていた
- 貯蓄貸付組合危機(80年代): 貯蓄貸付組合は、高リスクのローンを証券化したり、直接ジャンク債に投資したりして、手っ取り早く儲けようとしましたが、市場が逆転すればこれらの資産が無価値になることまでは考えていませんでした。
- 金融危機(2008年): ウォール街はさらに手の込んだことをしました。彼らは何千もの住宅ローン(大量の信頼できないサブプライムローンを含む)を**「債務担保証券(CDO)」**と呼ばれる金融商品にまとめ、それを世界中の投資家に販売したのです。
- 例えるなら: これは、良いリンゴと腐ったリンゴを混ぜてジュースにし、「特級ジュース」というラベルを貼って売るようなものです。最初は飲んでも気づきませんが、腐ったリンゴが多すぎると、この「ジュース」はいずれ腐敗します。多数の住宅所有者がローンを返済できなくなったとき、これらのCDOは「毒」となり、買った者が損をする結果となりました。
このゲームの本質は、リスクを包装して次の人に売りつけ、爆弾が自分の手元で爆発しなければ良いというものでした。結果として、リスクはウイルスのように金融システム全体に拡散したのです。
4. 規制が追いつかず、あるいは「見て見ぬふり」をした
- 貯蓄貸付組合危機(80年代): 規制当局は、貯蓄貸付組合が危険な行為をしていることにタイムリーに気づくことができませんでした。気づいた時には、すでに穴が大きくなりすぎていて、塞ぐことができませんでした。
- 金融危機(2008年): 格付け機関(ムーディーズ、S&Pなど)は、それらの「毒」であるCDOにAAAという最高の安全格付けを与えました。これは「毒入りジュース」に「オーガニック、天然」というラベルを貼るようなもので、すべての投資家を誤解させました。規制当局も、これらの複雑な金融イノベーションに対して見て見ぬふりをしていました。
どちらの危機も、火遊びをする者が前を走り、火を消す責任のある規制当局は後ろをゆっくりと歩き、あるいは見て見ぬふりをしていたのです。
まとめ
ご覧の通り、二つの危機は発生した時代背景や関わった具体的な金融商品は異なりますが、そのシナリオは驚くほど似ています。
規制緩和 → 不動産バブル → 金融機関の過度なリスクテイクと「金融イノベーション」 → 規制の欠如 → バブル崩壊 → システミックな破綻 → 政府による市場救済 → 景気後退。
歴史は単純に繰り返すことはありませんが、常に同じ韻を踏みます。この二つの危機は、まるで同じ家庭の教育が失敗した事例のようです。子供(金融機関)にあまりにも多くの自由と小遣いを与えすぎた結果、責任とリスク意識を教えなかったために、最終的には手に負えなくなり、親(政府と納税者)が後始末をしなければならなかったのです。