もちろんです。そして、その変化は往々にして深く、永続的なものとなります。金融危機は、国民全体にとっての「リスク教育」のようなもので、授業料は非常に高額ですが、その効果は即座に現れます。消費と投資の二つの側面から見ていきましょう。
## 1. 消費観念の変化:「その日暮らし」から「熟慮の上での行動」へ
金融危機がもたらす最も直接的な影響は、多くの人々の収入減少や失業であり、これは彼らの金銭の使い方を即座に変えます。
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不要不急な出費の削減: これは最も即効性のある変化です。最新のスマートフォン、ブランドバッグ、不要な会食、頻繁な海外旅行といった「なくても困らない」消費が、まず最初に削減されます。人々は自身の家計を再評価し、「必要なもの」と「欲しいもの」を区別するようになります。
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「費用対効果」の追求: 人々は「費用対効果」をより重視するようになります。買い物をする前には何度も比較検討し、「本当にこれが必要なのか?」と自問します。セール品、中古品、安価な代替品がより人気を集めるでしょう。「消費のダウングレード」というよりも、「合理性への回帰」と言えるかもしれません。
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「口紅効果」の顕在化: 経済学には「口紅効果」という言葉があります。これは、景気後退期に人々が高額なもの(車や家など)を買う余裕がなくなる一方で、自分を慰めるためのささやかなものを求めるため、口紅、映画のチケット、ゲームといった「不要不急だが高価ではない」小物がかえって売れる現象を指します。これは、心理的な慰めを求める代替消費の一種です。
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貯蓄意識の強化: 危機を経験した人々は、「備えあれば憂いなし」という道理を深く理解します。彼らは強制的に貯蓄を行い、将来起こりうる失業や病気などの不測の事態に備えて緊急資金を築きます。かつての「その日暮らし」の人々も、家計簿をつけたり予算を計画したりし始めるかもしれません。
例えるなら、一度飢えを経験した人は、たとえ後に裕福になったとしても、食料に対する敬意と感謝の念を常に持ち続けるようなものです。金融危機が消費観に残すのは、まさにそのような「傷跡」なのです。
## 2. 投資観念の変化:「一攫千金」から「安全第一」へ
消費の変化が「節約」だとすれば、投資の変化は「リスク回避」です。「一攫千金」の夢は、「元本割れ」という現実に打ち砕かれます。
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リスク選好度の急激な低下: 人々は極度に「リスク回避的」になります。以前は高値掴みや安値売りを恐れず、高レバレッジ取引を行い、全財産を株式市場に投じていた人々も、今では銀行の定期預金、国債、あるいはリスクが極めて低いマネーマーケットファンドにお金を置くことを好むかもしれません。彼らの最優先目標は、「高収益の追求」から「元本の安全確保」へと変わります。
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「現金は王様」の浸透: 危機の間、資産価格は暴落し、現金だけが最も価値を持ちます。それは優良資産を底値で買い付ける機会を与え、生活も保障します。これにより、人々は投資ポートフォリオにおいて、全額を投資に回すのではなく、より高い割合で現金を保有するようになります。
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「投機」から「投資」への転換: なお投資に踏み切る人々にとって、彼らの視点はより長期的になります。短期的な売買や噂話に耳を傾けるのではなく、企業の収益性、業界の見通し、競争優位性(堀の深さ)といったファンダメンタルズにより注目するようになります。これは、「手っ取り早く稼ぎたい」という考えから「ゆっくりと富を築きたい」という考えへの転換です。
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複雑な金融商品への不信感: 多くの人々は、危機の中で、自分には全く理解できない、派手に装飾された金融派生商品によって損害を被りました。そのため、危機後、人々はよりシンプルで透明性の高い投資商品を好み、理解できないものに対しては警戒心を抱くようになります。
簡単に言えば、金融危機前は市場の主流な感情が「貪欲」であり、人々は儲ける機会を逃すことを恐れていました(FOMO - Fear of Missing Out)。危機後は、市場の主流な感情が「恐怖」に変わり、人々は元本を失うことを恐れるようになりました。
まとめ
全体として、金融危機は強制的な「金融リテラシー教育」のようなものであり、それは一世代の人々の心に「スカーリング効果」(Scarring Effect)を残し、人々は将来にわたって、消費においてはより合理的になり、投資においてはより慎重になるでしょう。
もちろん、人間の記憶は薄れるものです。経済が長期にわたって回復し繁栄し、その痛みを肌で感じていない新世代が育つと、大胆な消費や積極的な投資観念が再びゆっくりと頭をもたげてくるでしょう。歴史は常に慎重さと貪欲さの間で揺れ動き、繰り返されるのです。