静岡の酒蔵の独自性は何でしょうか?

Luis Hood
Luis Hood
Fifteen years as a master bourbon distiller.

静岡蒸溜所の最も魅力的な点は、ストーリー性豊かな3つのポイントに集約できると思います。

まず一つ目は、そして最もユニークな点ですが、彼らが「性格」の全く異なる2基の蒸溜器を持っていることです。

想像してみてください。まるで一流のシェフが、厨房に何百年も伝わる古い鉄鍋と、最新鋭のドイツ製ノンスティックフライパンを同時に置いて、異なる料理を作るようなものです。静岡蒸溜所はまさにそれなのです。

  • 1基は**「K」と呼ばれています。これは「骨董品」とも言えるもので、すでに閉鎖され、今や高値で取引されている伝説の蒸溜所「軽井沢」から譲り受けたものです。さらに驚くべきは、この蒸溜器が薪直火**で加熱されている点です。これは現代ではほとんど見られない製法です。この方法で造られたウイスキーは、非常に濃厚で力強い風味を持ち、どこかレトロで野性的な魅力があります。
  • もう1基は**「W」**と呼ばれています。こちらは「現代のエリート」とも言える、スコットランド製のクラシックな蒸溜器で、蒸気で加熱するため非常に安定しており、コントロールしやすいのが特徴です。これで造られたウイスキーは、よりエレガントで繊細、クリーンな味わいで、フレッシュな花や果実の香りを帯びています。

この2つの「神器」があることで、蒸溜所はまるで絵の具のパレットのように、全く異なるスタイルの原酒を組み合わせ、千変万化のフレーバーを生み出すことができます。だから、静岡のウイスキーを飲むと、時には力強く、時には優しく感じられることがあり、これが最大の魅力なのです。

二つ目は、蒸溜所オーナーの「熱狂的な愛好家」としてのバックグラウンドです。

静岡蒸溜所のオーナーである中村大航氏自身が、筋金入りのウイスキー愛好家です。蒸溜所を建設する前は、世界中のクラフトスピリッツを輸入する会社を経営していました。彼は世界中の素晴らしいウイスキーを飲み尽くし、数々のトップ蒸溜所を見てきた上で、自身の理想を追求した「夢の蒸溜所」を造ることを決意したのです。そのため、静岡蒸溜所は立地選びから設備、そして醸造哲学に至るまで、純粋な商業的考慮ではなく、「玄人好み」のギーク精神が息づいています。

三つ目は、「ローカライゼーション」への追求です。

ウイスキー造りはスコットランドから学んだものですが、静岡蒸溜所は「静岡らしさ」を出すために懸命に取り組んでいます。彼らは一部に日本産の大麦、さらには静岡県産の大麦を原料として使用しています。蒸溜所は静岡の奥深い山中(「奥静岡」と呼ばれます)に建てられており、周囲は非常に豊かな自然環境で、安倍川の軟水を使用しています。このようなテロワールへの敬意が、彼らのウイスキーを単なるスコットランドのコピーではなく、真に日本の静岡の魂を持ったものにしているのです。

簡単に言えば、伝説的な骨董品と現代のエリート(2基の蒸溜器)を使い、超ウイスキー愛好家のリーダーシップのもと、静岡の豊かな自然に根ざし、レトロな趣と現代的な美意識を兼ね備えたユニークなウイスキーを造り出しているということです。これこそが、静岡蒸溜所が人々を魅了する理由なのです。