水中ロボット群協調作業の主要技術
知実 加奈
知実 加奈
Lead engineer, 10 years in marine robotics development.
例えるなら、それはまるで、言葉を話せず、方向音痴のダイバーたちが、真っ暗な海底で、海底地図の作成やブラックボックスの捜索といった複雑なタスクを協力して達成しようとするようなものです。彼らがうまく連携するためには、主に以下の技術的課題を解決する必要があります。
1. 水中での「電話」——群通信技術
これは最も基本的で、かつ最大の難関です。水中では、私たちが携帯電話で使う無線やWi-Fiは基本的に使えません。水がこれらの信号を吸収してしまうからです。そのため、ロボットたちはイルカのように音(音波)でしか通信できません。
しかし、この水中での「音声電話」には多くの問題があります。
- 信号が非常に遅い:音は水中を光や無線電波の数十万倍も遅く伝わります。こちらが「左へ」と指示を出しても、相手がそれを受け取るまでに数秒、あるいはそれ以上かかることもあり、手遅れになってしまいます。
- 「電話回線」が少なく、帯域も狭い:通信に使えるチャンネルは非常に少なく、一度に送れる情報量もわずかです。高画質の画像を送信するなんて夢のまた夢で、座標や速度といった数文字を明確に伝えられれば御の字です。
- 信号が極めて不安定:海底の地形、潮流、さらには他の船舶の騒音までもが干渉し、会話が途切れたり、言葉が抜け落ちたりするのは日常茶飯事です。
したがって、このように遅く、途切れがちで、不安定な「電話ネットワーク」の下で、ロボット群がいかに効果的に通信できるかという点が、まず克服すべき最大の難関となります。
2. 「道を知る」と「仲間を見つける」——協調ナビゲーションと測位技術
GPSは水中では信号が届かないため、各ロボットは「目が見えない状態」になります。自分自身が「どこにいるのか」を把握するだけでなく、「仲間たちがどこにいるのか」も知る必要があります。
解決策は多岐にわたりますが、核となる考え方は複合的なアプローチです。
- 自分で推測して進む(慣性航法):ロボット自身が装置を搭載し、加速や旋回などの動きを感知して、どれだけ進んだか、現在おおよそどこにいるかを推測します。しかし、これは時間が経つにつれて誤差がどんどん大きくなります。まるで目を閉じて歩くようなもので、数歩なら大丈夫でも、長く歩けば確実に大きくずれてしまいます。
- 互いに「呼びかけ」て測位する(音響測位):互いに音を発し、その音が届くまでの時間差から互いの距離を計算し、相対的な位置ネットワークを構築します。あるいは、作業エリアにあらかじめいくつかの「音響灯台」(ビーコン)を設置し、ロボットがこれらの灯台の音を聞くことで自己の三角測位を行います。
- 地図を作成しながら道を知る(SLAM技術):これは比較的賢い方法です。ロボットはソナーなどのセンサーを使って周囲の環境、例えば海底の溝や沈没船の輪郭をスキャンし、頭の中に地図を描きます。同時に、その地図に基づいて、自分が現在地図上のどの位置にいるのかを逆算します。これにより、群全体が同じ「生きた地図」を共有し、互いの相対位置を把握できるようになります。
3. 「誰の指示に従うか」と「どう協力するか」——協調制御とタスク割り当て
今、なんとか通信でき、自分と仲間がどこにいるかおおよそ把握できたとして、次にどう作業を進めるかです。
- 隊形制御:例えば、広範囲をくまなく捜索する場合、ロボットたちは一列または一面に並び、一斉に進む必要があります。潮流の衝撃を受けながらも隊形を乱さず、衝突せず、遅れも取らないようにするには、非常に精緻な制御アルゴリズムが必要です。観閲式の部隊を想像してみてください。それが三次元の水中で行われるとなると、はるかに難易度が高いのです。
- タスク割り当てと意思決定:広大なエリアで、誰が左側を捜索し、誰が右側を捜索するか?もしあるロボットのバッテリーが切れそうになったり、故障したりした場合、そのタスクは誰が引き継ぐのか?もしAロボットが疑わしい目標を発見した場合、近くのBロボットやCロボットにどう通知して確認に向かわせるか?その背後には、「スマートブレイン」システムが必要です。これは、現在の状況に応じて各ロボットに動的に、自律的にタスクを割り当て、最適な意思決定を行うことができます。これがいわゆる「群知能」であり、一群の普通のロボットが「1+1>2」となる全体的な知恵を生み出すものです。
まとめると、水中ロボット群の協調とは、信号が極めて悪く、ナビゲーションがなく、環境が複雑な場所で、一群のロボットが「聞き取れる、見つけられる、うまく連携できる」ことを実現することです。この3つの点、それぞれが世界レベルの技術的難題なのです。