チャーリー・マンガーは、バークシャー・ハサウェイの「予算を設けない」という特徴をどのように見ていますか?

Terence Dodd
Terence Dodd
Researcher focusing on behavioral economics and investment strategies.

チャーリー・マンガー:予算は「企業のがん」、バークシャーの成功は信頼と合理性にある

チャーリー・マンガーは、バークシャー・ハサウェイの「予算を設定しない」という特徴を非常に高く評価し、強固に支持している。彼は、従来の企業予算制度は官僚主義と非合理的な行動の温床であり、「企業のがん」の一種であると考えている。彼のこの特徴に対する核心的な見解は、以下のように要約できる:

1. 予算は機会を殺し、非合理性を助長する

マンガーは、厳格な年度予算は硬直した制度であると考える。予算に組み込まれていない絶好の投資や成長機会が現れた時、予算は経営者の行動の枷となる。経営者は、予算がないために機会を逃すか、あるいは長く非効率な官僚的な承認プロセスを経なければならない。

バークシャーの哲学はこうだ:合理的な機会が現れたら、即座に行動すべきである。 意思決定の根拠は、機会そのものの経済的価値と収益率であるべきであり、1年前に作成されたすでに時代遅れの予算書ではない。

2. 予算は「年度末の駆け込み支出」という愚行を招く

これはマンガーが最も頻繁に批判する点である。従来の企業では、部門の年度末予算に残高がある場合、経営者は翌年度の予算削減を避けるため、不要なものにお金を使いがちだ。この「使うか失うか」(Use it or lose it)という考え方は、完全なる浪費であり非合理的な行動である。

マンガーは、この制度設計そのものが人々に愚かな行動を取らせると考える。一方バークシャーでは、資金は常に最も効率的な場所に投じられるべきであり、予算表を埋めるために浪費されるべきではない。

3. 予算は嘘と駆け引きの文化を生む

予算策定プロセスそのものが一種の「駆け引き」である。下位の管理者は目標達成を容易にするため、収入を過小評価し、支出を過大に見積もる傾向がある。上位者は部下の数字を疑い、予算を圧縮しようとする。これにより、組織全体が本来の事業運営に集中する代わりに、内部での駆け引きや社内政治に膨大な時間と労力を費やすことになる。

マンガーは、この駆け引き文化が会社の誠実さの基盤を蝕み、知性を間違った方向に使わせると考える。

バークシャーの代替案:信頼、自律、そして合理性

バークシャーが「予算を設定しない」ことに成功している背景には、その独特の企業文化と組織構造がある:

  • 高度な信頼と自律権:ウォーレン・バフェットとマンガーは、信頼できる有能な子会社CEOを選び、事業運営に対して非常に大きな自律権を与える。彼らは、これらのCEOが自らのビジネスのように合理的に資本配分を行い、必要かつ収益が見込まれる場合にのみ支出すると信じている。
  • 合理性を核心としたコミュニケーション:子会社が大規模な資本支出(例:新工場建設)を必要とする場合、CEOは予算を確認せず、直接オマハ本社(現在は主にグレッグ・アベル)に電話する。彼らは、予想される投資収益率を含む、その投資の経済的合理性を明確に説明する必要がある。意思決定は予算プロセスではなく、ビジネスロジックに基づいて行われる。
  • 正しいインセンティブ構造:バークシャー子会社のCEOの報酬は、通常、「予算達成」ではなく、その事業の長期的な収益性に連動している。これにより、彼らの利益は親会社の株主利益と高度に一致し、長期的かつ合理的な価値最大化を追求するようになる。

要約すると、チャーリー・マンガーは、予算を設定しないことが、バークシャーの反官僚主義、合理性と信頼の文化尊重を体現していると考える。それは、機会を阻み、浪費を助長し、嘘を生む制度的障壁を取り除き、経営者が長期価値創造という根本的な目標に専念できるようにする。これこそが、バークシャーが多大な成功を収めた重要な経営哲学の一つである。