チャーリー・マンガーのテック株に対する姿勢は、どのように変化したのでしょうか?

作成日時: 7/30/2025更新日時: 8/17/2025
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チャーリー・マンガーのテクノロジー株に対する姿勢の変遷:「難しすぎる」から「史上最高のビジネス」へ

チャーリー・マンガーのテクノロジー株に対する姿勢は一貫したものではなく、現実と合理的な内省に基づく明確な変遷を経てきました。この過程は、彼の「継続的な学習」と「事実に基づく見解の修正」という中核的な投資哲学を完璧に体現しています。その変遷はおおむね以下の3段階に分けられます。


段階1:初期——断固たる回避(「難しすぎる」リスト)

長い間、マンガーとウォーレン・バフェットはほとんどのテクノロジー株を「難しすぎる(Too Hard Pile)」リストに入れ、距離を置いていました。その背景には主に3つの理由がありました:

  1. 能力の輪(Circle of Competence)の範囲外:マンガーは、投資の成功は自分が何を知っていて、何を知らないかを理解することにかかっていると強調しました。初期のテクノロジー業界は技術の進歩が極めて速く、ビジネスモデルも目まぐるしく変化し、不確実性に満ちていました。彼らにとって、テクノロジー企業の今後10年、20年のキャッシュフローや業界での地位を予測することは、コカ・コーラやジレットを予測するよりもはるかに困難でした。
  2. 予測可能な持続的競争力の欠如:マンガーが求めていたのは、広く持続的な「経済的堀(モート)」を持つ企業でした。初期のテクノロジー企業は、その競争優位性がしばしば単一の技術や特許に基づいており、「創造的破壊」によって容易に覆される可能性がありました。今日のリーダー企業が、明日には消え去っているかもしれないのです。このような急速な変化は、彼らが求める「持続性」には合致しませんでした。
  3. 評価の困難さ:テクノロジー株は高い成長期待と高い株価収益率(PER)を伴うことが多く、その評価は現在の確固たる資産や利益ではなく、未来への夢に基づく部分が大きいものでした。これは、マンガーとバフェットの本質的価値に基づく評価手法と矛盾するものでした。

核心的な見解:この段階では、マンガーはテクノロジー株への投資リスクが潜在的なリターンをはるかに上回ると考えていました。なぜなら、その未来は予測不可能な変数に満ちていたからです。それらを回避することは、合理的な「過ちを避ける」行為でした。


段階2:転換期——試行、学習、内省

21世紀に入り、テクノロジー業界の発展に伴って状況が根本的に変化すると、マンガーの姿勢も軟化し、変化し始めました。

  1. テクノロジー大手の「経済的堀」の顕在化:グーグル、アップル、アマゾンに代表される新世代のテクノロジー大手は、従来の業界では比べものにならない強力な経済的堀を築き上げました。これらの堀はもはや単一の技術ではなく:

    • ネットワーク効果(例:Googleの検索、Facebookのソーシャル)
    • 強力なブランドとエコシステム(例:Appleのハードウェアとソフトウェアの統合)
    • 巨大な規模とコスト優位性(例:Amazonの物流とAWS) これらの新しいタイプの経済的堀は、一度形成されるとその堅牢さは多くの伝統的な企業を上回るものでした。マンガーとバフェットは、「経済的堀」に対する理解を更新する必要があることを認識し始めました。
  2. BYD(比亜迪)への早期投資(2008年):これはマンガーの姿勢転換を示す重要な指標でした。彼がBYDへの投資を強く主張したのは、電池技術に精通していたからではなく、「天才的な技術者であり経営者」である王伝福氏の巨大な可能性を見出し、技術主導の製造業においてBYDが明るい未来を持つと確信したからです。これは、彼が「人」と「ビジネスモデル」を理解した上で、技術集約型企業に投資する意思があることを示していました。

  3. 機会損失に対する内省:マンガーは、最大の過ちの一つがグーグルに早期に投資しなかったことだと何度も公に述べています。彼は「自分たちは馬鹿みたいだった(felt like a horse's ass)」と率直に認めました。彼は、グーグルの広告ビジネスモデル——軽資産、高収益性、強力なネットワーク効果を備えた——が、実は彼らが理解できるはずの完璧な「通行料を徴収する橋」ビジネスだったと気づいたのです。この率直な内省が、彼らの思考の進化を促しました。

核心的な見解:この段階で、マンガーは「投機的なテクノロジーコンセプト株」と「強力な経済的堀を持つプラットフォーム型テクノロジー企業」を区別し始めました。後者が、彼の投資フレームワークで定義される「偉大なビジネス」へと進化したことを認識したのです。


段階3:後期——受容と称賛

過去10年ほどで、マンガーの主要テクノロジー株に対する姿勢は「回避」から「高く評価」へと変わり、それらを人類の商業史上最高のビジネスモデルの一つとさえ考えるようになりました。

  1. アップル(Apple)への大型投資:バークシャー・ハサウェイによるアップルへの巨額投資は、この転換を最終的に体現するものです。バフェットは当初、アップルを純粋な「テクノロジー企業」ではなく、強力なブランドを持つ「消費財企業」と見なし、巧みに彼らの能力の輪の中に位置づけました。マンガーはこれに完全に同意し、「もっと買いたかった」、「アップルはバークシャー史上最高の投資の一つだ」と繰り返し述べています。彼はアップルのエコシステムの顧客ロイヤルティが非常に強く、比類のないユーザー忠誠心と価格決定力を生み出していると考えました。

  2. 「偉大な企業」の再定義:マンガーは晩年の講演で、主要テクノロジー企業への称賛を惜しみなく表明しました。グーグルやマイクロソフトのような企業が、極めて低い資本投入でこれほど巨大な利益とキャッシュフローを生み出すことは、前例のない商業的奇跡であると彼は考えました。彼はそれらをロックフェラーのスタンダード・オイルと比較し、それらがこの時代で最も強力な企業であると述べました。

  3. 個人投資における実践:マンガーが管理するデイリー・ジャーナル社の投資ポートフォリオには、アリババなどのテクノロジー企業の株式が保有されたこともあり、これは特定のテクノロジー大手のビジネスモデルに対する彼の評価をさらに裏付けるものでした。

核心的な見解:この段階では、マンガーはもはやこれらの企業に単純に「テクノロジー株」というレッテルを貼ることはなく、史上最強の経済的堀と最高のビジネスモデルを持つ「偉大な企業」と見なすようになりました。彼が注目したのは技術そのものではなく、技術が構築するビジネスの参入障壁と収益性でした。

まとめ:変遷の核心的な原動力

チャーリー・マンガーのテクノロジー株に対する姿勢の変遷は、彼の最も基本的な投資原則に根ざしています:

  • 合理性と現実主義:事実が変化した時には、躊躇なく自らの見解を変える。テクノロジー業界が混沌とした「戦国時代」から少数の巨大企業が支配する構造へと進化したことは、無視できない事実でした。
  • 継続的な学習:彼は生涯にわたり自らの能力の輪を広げ、世界の新しいビジネスモデルや競争環境を理解しようと努めました。
  • 本質の把握:彼は最終的に「テクノロジー」という表層を突き抜け、その背後にある「ネットワーク効果」、「エコシステム」、「ブランドロイヤルティ」といった商業競争の本質を見抜きました。これらの本質は、彼が一貫して求めてきた「経済的堀」と何ら変わりないものでした。

したがって、マンガーの転換は自らの原則を裏切ったものではなく、まさにその中核的な投資哲学を揺るぎなく実践した結果なのです。

作成日時: 08-05 08:47:02更新日時: 08-09 02:38:55