NISA口座の資産は相続できますか?

直樹 太一
直樹 太一
Professor of finance, author of investment books.

NISA口座の資産相続について、整理してご説明します。


NISA口座の資産は相続できますか?

結論から申し上げますと、相続は可能ですが、いくつか重要なルールがあります。

簡単に言えば、NISA口座の保有者が亡くなった場合、その口座内の株式や投資信託などの資産は相続人が引き継ぐことができます。しかし、NISAの非課税優遇措置は、そのまま引き継ぐことはできません

日常生活の例を挙げて、ご理解を深めていきましょう。


相続とはどういうことか?

NISA口座を、特別な「非課税の買い物かご」だと想像してみてください。このかごで買ったもの(投資)から得た利益には税金がかかりません。

  1. 口座名義人が亡くなると、かごの中身は相続人のものに

    • 口座名義人が亡くなった場合、この「買い物かご」の中身(株式、投資信託など)はすべて取り出され、相続人に引き渡されます。
  2. 「非課税の買い物かご」自体は他人に譲渡できない

    • 相続人は中身の「もの」を受け取れるだけで、「非課税の買い物かご」自体を受け取ることはできません。
    • 相続されたこれらの資産は、相続人自身の課税口座(つまり税金がかかる口座、例えば「特定口座」や「一般口座」)に移管されます。相続人自身のNISA口座に入れることはできません
  3. 資産の価格が「リセット」される

    • これは非常に重要です!資産が相続人に移管される際、移管当日の時価で評価されます。この価格が、相続人がその資産を取得した際の「新たな取得費」となります。

    • 例:

      • 仮に、お父様がNISA口座で100万円の時にある株式を購入したとします。
      • お父様が亡くなった時、その株式は150万円に値上がりしていました。この50万円の利益は、お父様が生きていれば非課税でした。
      • あなたが相続人としてこの株式を相続しました。それはあなたの課税口座に入り、あなたの「取得費」は150万円として記録されます。
      • 将来、あなたがこの株式を160万円で売却した場合、課税対象となる利益は10万円(160万円 - 150万円)のみであり、最初の100万円から計算されるわけではありません。

「相続税」もお忘れなく

NISA口座内の投資利益は譲渡所得税が非課税ですが、口座内のすべての資産自体は、亡くなった方の遺産の一部であることに変わりありません。

  • これは、これらの資産(亡くなった日の時価で評価)が遺産総額に算入され、相続税が発生する可能性があることを意味します。
  • 相続税と投資利益にかかる税金(譲渡所得税など)は別物ですので、混同しないようにしてください。

相続が発生した場合、何をすべきか?

  1. 金融機関への連絡:まず、相続人は亡くなった方が口座を開設していた証券会社または銀行に速やかに連絡する必要があります。
  2. 必要書類の提出:通常、死亡診断書、戸籍謄本(相続関係を証明するため)、相続人自身の身分証明書などの書類提出が求められます。
  3. 移管手続きの実施:金融機関が、故人のNISA口座からあなたの課税口座へ資産を移管する手続きについて案内してくれます。

まとめ

  • 相続できるか? -> できます。中の株式や投資信託を相続します。
  • NISAの非課税メリットは引き継げるか? -> できません。資産は課税口座に移管されます。
  • 相続後に売却したら税金はかかるか? -> かかる可能性があります。税金は、あなたが相続した時点の資産価格(新たな取得費)と将来の売却価格との差額に対してのみ計算されます。
  • 相続税はかかるか? -> かかります。NISA資産は遺産の一部であり、相続税の総額に含めて計算する必要があります。

この説明がお役に立てれば幸いです!全体として、資産が消えてなくなる心配はありませんが、通常の銀行預金とは処理方法が少し異なります。