はい、ご質問を拝見して、私も手術前は同じように不安で迷っていたことを思い出しました。あまり緊張しすぎないでくださいね。甲状腺がんの手術は今では非常に確立された技術です。私が知っていることや実際に経験したことをお伝えしますので、少しでもお役に立てれば幸いです。
甲状腺がん手術の入院と回復について、私の経験をシェアします
一、手術の入院期間はどれくらい?
絶対的な基準はありませんが、主に手術の範囲と術後の回復状況によります。おおまかには以下の段階に分けられます:
-
術前準備(1~2日): 通常、手術の1~2日前に入院します。血液検査、心電図、超音波(エコー)による位置確認など、様々な術前検査を行い、手術に適した体調であることを確認するためです。医師や麻酔科医が手術の内容やリスクについて説明し、同意書への署名を行います。
-
手術当日(1日): この日が本番です。手術の複雑さにもよりますが、手術自体はおおよそ2~4時間かかります。手術後は麻酔から覚めるまで回復室でしばらく過ごし、意識がはっきりして状態が安定したら病室に戻ります。
-
術後観察(3~5日): これが入院期間の最も重要な部分です。医師は主に以下の点を観察します:
- 創部の状態: 首に挿入されたドレーン(排液管)からの排液の色や量を確認し、内部での活動性出血がないことを確認します。
- 声の状態: 手術が反回神経に影響を与える可能性があるため、術後の声のかすれ(嗄声)の有無を特に注意深く見ます。
- 血中カルシウム濃度: これが最も重要です!手術が副甲状腺(甲状腺のすぐそばにある4つの小さな器官)に影響を及ぼす可能性があります。副甲状腺は血中カルシウム濃度を調節しています。カルシウムが不足すると手足のしびれが起こり、重症の場合は痙攣(低カルシウム血症による痙攣)を引き起こすことがあります。そのため、術後は頻繁に採血してカルシウム濃度をモニタリングし、低い場合は補充を行います。
-
退院: 状態が安定し、ドレーンが抜去され、血中カルシウム濃度も正常に戻り、その他の不快な症状がなければ、医師から退院の許可が出ます。
まとめ: 入院から退院まで、すべてが順調であれば、多くの場合5日から1週間程度です。手術範囲が広い場合(例えば頸部リンパ節郭清を行った場合)や、術後に低カルシウム血症などの症状が現れた場合は、入院期間が数日長引く可能性があります。
二、回復期間はどれくらい?
回復期間については、いくつかの段階に分けて考える必要があり、一概には言えません。
-
退院後の最初の1~2週間(重要な回復期):
- 体の感覚: 首が非常に締め付けられるような感じがして、まるで首輪をしているようで、首を回しにくくなります。飲み込んだり食事をしたりする際に少し違和感や異物感を感じることもありますが、これは正常な反応です。声がまだ少しかすれていたり、力が入りにくいこともあります。
- すべきこと: この時期はとにかくしっかり休養を取り、無理をしないことです。食事は温かいものか冷たいもの、柔らかくて飲み込みやすいもの(例:お粥、柔らかいうどん、茶碗蒸し、ヨーグルト)を摂りましょう。傷口は乾燥した清潔な状態を保ち、指示通りに消毒・ガーゼ交換を行います。医師からチラージンS(レボチロキシンナトリウム錠) の服用が始まります。これは甲状腺ホルモンを補充するための薬で、生涯にわたって服用を続ける必要があります。
-
術後1~3ヶ月(安定・適応期):
- 体の感覚: 首の不快感は大幅に軽減され、飲み込みもほぼ正常に戻ります。体力も徐々に回復してきます。首の傷跡は増殖期に入り、少し赤くなったり、硬くなったり、かゆみを感じたりすることがあります。
- すべきこと: 多くの人は(重労働でなければ)仕事に復帰できます。散歩などの軽い運動を始めても良いでしょう。この時期に非常に重要なのは薬の量の調整です。定期的に病院で血液検査(甲状腺機能検査)を受け、医師がTSH(甲状腺刺激ホルモン) の値を基にチラージンSの量を調整します。体の必要量を満たしつつ、がんの再発を抑制する適切なレベルに保つためです。傷跡のケア(例:テープによる圧迫療法、瘢痕治療用軟膏の塗布)も始められます。
-
術後3ヶ月~1年(長期回復と正常化):
- 体の感覚: 身体的にはほぼ健康な人と変わらない状態になります。傷跡は徐々に柔らかくなり、色も薄くなっていきます。
- すべきこと: 生活は完全に通常通りに戻ります。一番の違いは、毎日決まった時間に空腹時に薬を飲むことを覚えておく必要があることと、定期的な通院・検査(最初は3ヶ月~半年ごと、その後は1年ごとになることが多い)が必要なことです。検査は通常、血液検査と頸部超音波検査です。
まとめ:
- 短期回復: おおよそ1ヶ月ほどで、日常生活や肉体労働以外の仕事にはほぼ戻れます。
- 長期回復: 体が完全に適応し、傷跡が目立たなくなり、服薬と通院の習慣が身につくまでには、半年から1年、あるいはそれ以上かかることもあります。
最後に、心からお伝えしたいこと
何よりも気持ちを落ち着かせることが大切です!甲状腺がんは比較的「おとなしいがん(Lazy Cancer)」と言われ、予後(治療後の見通し)が非常に良いがんです。これは、高血圧や糖尿病のように長期的に管理が必要な小さな病気だと考えましょう。薬をきちんと飲み、定期的に検査を受けていれば、これまで通り生活のあらゆる喜びを楽しむことができます。
どうか手術が順調に進み、一日も早い回復をお祈りしています!