彼はかつて、企業のファンダメンタルズ(決算報告、ニュース、PER)を見ないと言っていました。なぜ彼はこれらの情報を自身の短期取引にとっての「ノイズ」だと考えているのでしょうか?

Inès Rodriguez
Inès Rodriguez
Sustainable Investing Researcher

こんにちは、みんな! この質問はまさにポイントを突いていますね。会社の良し悪しを見ずにどうやって株で稼ぐのか?多くの人が不思議に思っています。B.N.F.(小手川隆)という日本のデイトレードの伝説は確かに「異端児」であり、彼の思考法を理解できれば、さまざまな取引スタイルを理解するのに非常に役立ちます。

分かりやすく説明しましょう。なぜ彼のプレイスタイルにおいて、決算やニュースが「ノイズ」になるのかを。


「株の神」BNFが決算分析を無駄と思う理由は?

投資とトレードは、全く異なるゲームだと想像してみてください:

  • ゲームA:バリュー投資(バフェットのスタイル)

    • 目標: 優良企業の「株」を買い、その会社と共にゆっくり成長し、会社が稼いだ利益の配当と株価上昇を享受する。
    • 判断基準: この会社は健全か? 持続的に利益を上げられるか? 将来性はあるか? だからこそ、決算書を読み、業界を分析し、経営陣を見る必要がある。
    • 時間軸: 「年」単位。
  • ゲームB:デイトレード(小手川隆のスタイル)

    • 目標: この会社が何をやっているかは関係ない。株価が次の数分、数時間、数日間でどう動くかだけが気になる。この値動きから鞘(差益)を稼ぐ。
    • 判断基準: この瞬間、市場では買い手が多いか、売り手が多いか? 価格は上昇しようとする勢いが強いか、下降する勢いが強いか?
    • 時間軸: 「分」、「時間」、「日」単位。

小手川隆はゲームBをプレイしています。彼のゲームルールでは、ファンダメンタルズ情報は「ノイズ」でしかありません。具体的な理由は3つ:

1. 時間軸が合わない:遠くの水では近い火は消せない

これは天気予報と気候レポートを見る違いに似ています。

  • ファンダメンタルズ分析(決算、PERなど)= 気候レポート ある地域(会社)が長期的に見て「温暖湿潤」か「寒冷乾燥」かを教えてくれる、長期トレンドの情報だ。例えば四半期決算は、過去3ヶ月のまとめであり、将来1年の経営への見通しを語る。非常にマクロで長期のもの。

  • デイトレードのテクニカル分析 = 天気予報 今日の午後、明日の午前中に雨が降るか、風は何メートルか、を教えてくれる。外に出かけるのに必要なのは天気予報であって、気候レポートの本ではない。

小手川隆は「次の1分」で株価が上がるか下がるかだけを気にしている。3ヶ月前の決算を渡して「この会社は去年すごく儲かってたよ」と伝えても、彼にとっては全く意味がない。この情報はあまりにも「遅い」ため、市場はすでにそれを織り込んでいるか、過剰反応している可能性すらある。彼が必要としているのは、今この瞬間の「天気」—つまり瞬間の売り買いの力関係なのだ。

2. 注目点が全く違う:「会社」ではなく「値動き」を買っている

端的に言えば、長期投資家が買うのは会社の価値であり、小手川隆のようなデイトレーダーが売買の対象にするのは市場の心理・感情だ。

彼の最も有名な取引手法の一つは、「オシレーター反転(あるいは乖離率を利用した取引)」だ。簡単に言うと、ある株価が短時間に通常の動き(トレンドラインや移動平均線)から著しく乖離した時(暴騰や暴落)、それは一時的なもので、やがて元の軌道へ引き戻す力(押し目買いや戻り売り)が働きやすいというテクニカル分析の考え方を利用したものだ。

  • ある株が理由もなく突然15%も急落したとする。彼はこれを市場のパニック心理による「過剰売り(超売り)」状態と判断し、価格はすぐに少し戻るだろうと予測する。そこで、即座に飛び込み買い、価格が3%-5%戻したところで素早く売り抜ける。
  • 逆に、ある株が急激に過剰に買われた場合(超買い)、短期的な反落があると判断して、空売りを仕掛けることもある。

ほら、この意思決定プロセスを見て。「この会社の本当の価値はどれくらいか?」なんて気にする必要があるだろうか?全くない。彼が気にするのは「今の価格は行き過ぎていないか?」「市場心理が極端になりすぎてないか?」だけだ。決算書で会社の利益が20%伸びたと書いてあっても、「次の1時間で暴落した株価が反発するかどうか」を判断するのにほとんど役立たず、むしろ、純粋に板(注文状況)や価格・出来高変化を観察する彼の判断を邪魔する「ノイズ」になりうる。

3. 市場短期では「投票速報機」であり、「計量器」ではない

グレアムの有名な言葉がある:「短期的に見れば、市場は投票速報機。長期的に見れば、市場は計量器だ。」

  • 計量器 (Weighing Machine): 長期的には、ある企業がどれだけの価値があるか、市場は最終的にそれに見合った「重さ」(株価)を示す。良い会社はいつか上がる。これがファンダメンタルズ分析の基盤。
  • 投票速報機 (Voting Machine): 短期的には、株価は市場参加者たちの「投票」によって決まる。ニュースが出れば、それを好材料と判断した人々が投票(買い)し、株価は上がる。パニックになれば人々は投票(売り)し、株価は下がる。この投票結果は、会社の真の価値とはほとんど関係がないことが多く、純粋に感情と人気の駆け引きだ。

小手川隆は最上級の**「投票観察者」**だと言える。彼はチャート(ローソク足)や出来高といった、「投票」状況を最も直接的に映し出すデータを観察することで、この次にみんなどう投票するかを予測し、事前に陣取るのだ。この会社自体が「太っているか」「痩せているか」(価値の高低)は、彼にとっては全く注目すべきポイントではない。決算やニュースを見ることは、その「計量器」の情報を見に行くようなもので、彼が明らかに「投票速報機」の前でゲームをしているのに、情報がミスマッチしてノイズになってしまうわけだ。


まとめると:

小手川隆がファンダメンタルズを見ないのは、それが役に立たないからではなく、彼の超短期取引システムにおいて、ファンダメンタルズ情報はタイミング違い、軸違い、焦点違いの「ノイズ」となるからだ。彼は、波の形だけを気にするトップクラスのサーファーのようなものだ。その海域の長期的な水文学的特徴や海流パターンについて議論しても、次の完璧な波を掴む彼の集中力を分散させるだけである。

この比喩が彼の思考法をより良く理解する手助けになればと思います!