なぜバークシャー・ハサウェイは無配当を堅持しているのでしょうか?その内部留保は、株主のために1ドルあたり1ドル以上の価値を本当に生み出しているのでしょうか?
バークシャー・ハサウェイが配当を堅持しない理由
ウォーレン・バフェット氏が経営を引き継いで以来、バークシャー・ハサウェイが配当を出さない方針を堅持している背景には、バリュー投資の核心原則があります。バフェット氏は多くの株主への書簡で、特に経営陣が内部留保を効率的に再投資できる場合、配当が常に最善策とは限らないと繰り返し強調してきました。主な理由は以下の通りです:
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再投資機会の優位性: バフェット氏は、会社が留保した1ドルあたりの利益を1ドル以上の市場価値に転換できるなら、配当は最適戦略ではないと考えます。逆に配当は株主に税負担(配当課税)を強いる上、株主自身が投資機会を探すことを迫り、その機会はバークシャー内部の投資リターンを下回る可能性があります。この見解は1967年の株主への書簡で初めて示され、その後も継続的に主張されています。
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税制効率性: 配当は株主に即時課税を発生させますが、内部留保を会社が再投資(優良企業や株式の買収など)に回せば課税を繰り延べ、複利による成長を実現できます。バフェット氏は税金を「無利子ローン」と捉え、長期保有と再投資による税制上の優位性を強調しています。
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株主利益の最大化: バークシャーの目的は短期的な現金リターンではなく、長期的な価値創造です。バフェット氏は、多くの株主が現金が必要な際に株式を売却する選択肢を持つこのモデルを好んでいると考えています。これはまた、配当政策がもたらしうる市場変動や経営陣の短期的思考も回避します。
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歴史的背景: バークシャーは元々繊維会社でしたが、バフェット氏が1965年に経営権を取得後、投資持株会社へ転換しました。非効率な繊維事業を閉鎖し、資金を保険や消費財企業など高リターン分野へシフト。これこそが配当を行わない戦略の本質、すなわち資金を高リターンを生む機会に集中させることを体現しています。
要約すると、配当を行わない方針はバークシャーのバリュー投資哲学の中核であり、資金を分散させるのではなく、内部再投資を通じて株主の富を指数関数的に増大させることを目的としています。
内部留保は本当に株主に1ドル超の価値を創出しているのか?
はい、バークシャーの過去データとバフェット氏の分析によれば、内部留保は確かに1ドルを大幅に上回る市場価値を株主にもたらしてきました。これは空論ではなく、長期にわたる実績によって裏付けられています。バフェット氏は株主への書簡で、この基準を評価するため「1ドルテスト」を繰り返し用いてきました:留保した1ドルあたりの利益は、少なくとも1ドルの時価総額増加を生み出すべきだというものです。
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バフェット氏の「1ドルテスト」: 1983年の株主への書簡で正式に導入された概念です。バフェット氏はバークシャーの1株あたり留保利益と株価上昇率の比率を算出します。比率が1を超えれば、留保利益が付加価値を生んだ証左です。歴史的にバークシャーはこのテストを数多くクリアしており、例えば1965年から2023年までのバークシャーの年平均複利リターンは約20%で、S&P500指数の約10%を大幅に上回りました。これはGEICOやコカ・コーラなどの買収を通じた留保利益の再投資が効率的な価値増加を実現したことを意味します。
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定量的な証拠:
- 時価総額増加 vs. 内部留保: バークシャーが1965年以降に累積で数千億ドルの利益を留保したと仮定すると、当時数百万ドルだった時価総額は現在では約1兆ドル近くまで成長しています。バフェット氏は2018年の書簡で、バークシャーが留保した1ドルあたり平均約2~3ドルの市場価値を創出してきたと指摘しました。
- 比較基準: バークシャーが他社のように配当を出していた場合、株主は市場平均(S&P500など)に資金を投資したかもしれませんが、バークシャーの内部収益率はより高くなっています。例:1964-2022年でバークシャー株価は3,787,464%上昇した一方、配当込みのS&P500は24,708%の上昇に留まりました。これは留保利益の再投資が市場平均を大幅に凌駕した証拠です。
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潜在リスクと例外: バフェット氏は、全ての企業が「1ドルテスト」を通過できるわけではないと認めています。経営陣が資本を効率的に配分できない場合、配当や自社株買いの方が適切かもしれません。しかしバークシャーは、完全子会社の買収を優先し、次いで株式投資を行う厳格な資本配分により非効率投資を回避してきました。近年、会社規模が拡大するにつれ、バフェット氏は配当ではなく自社株買いを増やしていますが、これも留保利益の価値を補完するものです。
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株主の視点: 1960年代から保有を続ける長期株主など多くの株主がこの政策の恩恵を受け、彼らの富は年次配当に依存せず複利効果により指数関数的に増大しました。バフェット氏は、これは忍耐強く会社経営を信頼する投資家に適した方針だと強調しています。
総じて、バークシャーの内部留保は「1ドルの壁」を超えただけでなく、長期再投資の威力を実証し、バリュー投資の古典的範例を提供しています。もちろん、これは優れた経営陣と独自のビジネスモデルに依存するものです。