グレアムが防御的投資家向けに推奨する株式選択基準は何ですか?
作成日時: 8/15/2025更新日時: 8/18/2025
回答 (1)
投資評論:ベンジャミン・グレアムが一般投資家(彼の言う「防御的投資家」)に向けた株式選択のアドバイスは、まさに古典的名論だね。彼の核心思想は「安全第一」。無暗にリスクを取らず、安定していて割安な優良企業を買えというもの。
具体的には7つの黄金基準を掲げている。一つずつ詳しく解説しよう:
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### **1. 十分な企業規模 (適正規模/Adequate Size)**
* **簡潔に言うと:** 無名な小企業は買うな。
* **理由:** 大企業は荒海の大型船、小企業は小舟のようなもの。嵐(不況や業界の変動)に遭えば、大型船の方が安定して転覆しにくい。大企業は通常、事業が多角化し資金力も厚く、圧倒的なリスク耐性を持つ。グレアムは当時具体的な売上高や資産額の基準を示したが、現在では意味をなさない。業界トップのリーディングカンパニーを選択すべきだと理解すればいい。日常生活で頻繁に目にしたり利用したりする大ブランドを考えれば分かりやすい。
### **2. 十分に健全な財務状態 (Sufficiently Strong Financial Condition)**
* **簡潔に言うと:** 会社の収支が健全で、借金が多すぎてはいけない。
* **見極め方:** グレアムは二つの厳格な指標を提示:
* **流動比率は最低でも2以上:** 企業の「流動資産」(1年以内に現金化できる資産)が「流動負債」(1年以内に返済すべき負債)の少なくとも2倍なければならない。これは、財布に200万円の現金があり、来月のクレジットカード支払いが100万円なら、短期資金で困る心配がない状態に似ている。
* **長期的な負債は正味運転資本を超えてはならない:** 正味運転資本とは、上記の「流動資産」から「流動負債」を差し引いたもの。この基準は、会社が莫大な長期借入金に依存して運営されているようでは駄目だという意味だ。借金ではなく自己蓄積で成長する会社の方が、明らかに健全だ。
### **3. 利益の持続的な安定性 (Earnings Stability)**
* **簡潔に言うと:** 過去10年間、毎年必ず黒字を出していること。
* **理由:** 景気の好不況のサイクルを経験しながらも、10年連続で利益を上げ続けられる会社なら、その製品やサービスへの継続的な需要があり、ビジネスモデルが確固たるものであると証明される。一次試験で高得点を取った学生は運が良かったのかもしれないが、10年間毎回合格する学生なら、真に実力があると言えるのと同じだ。
### **4. 長期に渡る継続的な配当実績 (Dividend Record)**
* **簡潔に言うと:** 長年にわたり株主への配当を続けていること。
* **理由:** 決算書上の利益は時に“紙上の富”に過ぎないが、配当は紛れもない現金の支払いだ。ある会社が、稼いだお金を長期にわたり(グレアムは20年!を推奨)、意欲的かつ持続可能な形で株主に還元するなら、二つの重要な点を示している:第一に、キャッシュフローが非常に健全であること、第二に、経営陣が株主を尊重し、経営成果を分かち合う意欲があること。
### **5. 適度な利益の成長 (Earnings Growth)**
* **簡潔に言うと:** 会社は現状維持ではなく、ある程度の進歩が必要。
* **見極め方:** グレアムの基準は、過去10年のデータを用いて、一株当たり利益(EPS)が少なくとも3分の1以上(約33%)は成長していること。一年の偶発性を避けるため、最初の3年間の平均値と最後の3年間の平均値を比較することを推奨した。これにより、安定してはいるものの完全に成長が止まってしまった“ゾンビ企業”ではなく、活力があり徐々に良くなっている会社を買うことを保証する。
### **6. 適正な株価収益率 (適正PER/Moderate P/E Ratio)**
* **簡潔に言うと:** 買値が高くなりすぎてはいけない。
* **見極め方:** 株価収益率(PER)は、企業が稼ぐ1円の年間利益に対して支払っても良いと考える株価を示す。グレアムは、**PERが15倍を超えてはならない**と助言する。この数字は価格の“上限”のようなもので、市場が過熱して熱狂的に買われている銘柄をフィルターにかける助けになる。安く買うこと自体が安全の保障となる。
### **7. 適正な株価純資産倍率 (適正PBR/Moderate Price-to-Book Ratio)**
* **簡潔に言うと:** 会社の“純資産”(すべての資産から負債を差し引いた会社の財産)に比べて、株価が高くなりすぎてはいけない。
* **見極め方:** 株価純資産倍率(PBR)は、企業の純資産1円に対して支払っても良いと考える株価を示す。グレアムは、**PBRが1.5倍を超えてはならない**と助言する。
* **究極のコンビネーション:** グレアムはさらに精妙な“二重の安全策”を提示した:**PER × PBR < 22.5**。この式は非常に賢い。ある程度の柔軟性を許容するからだ。例えば、ある会社のPERが非常に低い(例えば10倍のみ)なら、PBRが少し高く(例えば2.2倍)ても許容できる。その逆も然り。これは、市場がある側面で“過小評価している”割安株を見つけるのに役立つ。
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### **まとめ**
グレアムのこの一連の基準は、一種の“見合いプロセス”と捉えられる:
1. **規模が十分:** 資産が潤沢で、名門出身。
2. **財務が健全:** 借金が少なく、自己資金が豊富。
3. **利益が安定:** 過去10年間、職(事業)が安定し、毎年収入(利益)がある。
4. **継続的配当:** 人柄が良く、稼いだお金を家族(株主)と分かち合う意思がある。
5. **利益が成長:** 向上心があり、着実に事業を伸ばしている。
6. **価格が割安 (PER・PBR)**: 要求する“結納金”(株価)が非現実的でなく、コストパフォーマンスが抜群。
要するに、グレアムが防御的投資家に求めたこの基準は、品質と価格の“二重の安全検査ゲート”のようなものだ。核心は二語に集約されます:**安定性**と**割安さ**。これらの条件を同時に満たす会社は多くないが、だからこそ探す価値があるのだ。
この説明がお役に立てば幸い!
作成日時: 08-15 15:52:47更新日時: 08-16 01:11:24