近年、なぜ偽造日本ウイスキーが頻繁に出回っているのでしょうか?

太郎 晃
太郎 晃
Japanese whisky historian and avid collector.

そうですね、これはスニーカーやブランドバッグの転売と同じようなものです。一言でまとめると、人気が急上昇しすぎて生産が追いつかず、価格が高騰した結果、詐欺師がその匂いを嗅ぎつけてやってきた、ということです。

具体的には、主に以下のいくつかの理由が挙げられます。

1. 突然「インフルエンサー」になり、世界中が欲しがった

10年ほど前まで、ジャパニーズウイスキーは国際的にはまだニッチな存在でした。しかしその後、サントリーの山崎(Yamazaki)、白州(Hakushu)、そしてビームサントリーの響(Hibiki)といった銘柄が、国際的な賞を次々と受賞し、「世界最高のウイスキー」と評されるようになりました。

これが一気にブームに火をつけました。元々は一部の愛好家だけが飲んでいたものが、今や世界中のウイスキーファン、さらには普段あまりお酒を飲まない人までが、一度は味わってみたい、あるいは贈答用やコレクションとして手に入れたいと考えるようになりました。需要は一気に100から10000へと急増したのです。

2. 生産量が深刻なまでに不足し、増産したくても間に合わない

ウイスキーというものは、今日生産したいと思っても明日すぐに手に入るものではありません。オーク樽で熟成させる必要があります。例えば「山崎18年」であれば、少なくとも18年前に蒸留され、樽に入れられた原酒が使われています。

10年、20年前、日本のウイスキー市場は非常に低迷しており、蒸留所自体も経営が厳しい状況でした。まさか今日これほど人気が出るとは想像もしていなかったでしょう。そのため、当時貯蔵されていた原酒の量には限りがありました。今、需要が爆発的に増えても、彼らがタイムスリップして過去に戻り、もっと生産することはできません。これが深刻な供給不足を引き起こし、多くのヴィンテージもの(例えば山崎12年、響17年など)は生産中止になったり、数量限定での供給を余儀なくされたりしています。

3. 価格がロケットのように高騰し、一本の酒が高級品に匹敵する

物が少なく、欲しがる人が多ければ、当然価格は高騰します。元々数百元だったかもしれない一本の酒が、今では数千元、あるいは一万元以上にまで高騰しています。これほど価格が高くなると、偽造業者にとっては莫大な利益を生み出す余地が生まれます。

考えてみてください。詐欺師は数十元のコストで、本物のボトルに安価なウイスキーを詰め、封をし直すだけで、数千元の正規品として売り出すことができます。この利益は麻薬密売よりも法外で、彼らが目をつけないわけがありません。

4. 「本物のボトルに偽の酒」という手口は防ぎようがない

偽造で最も一般的な手口は、本物の空き瓶を回収することです。多くの人が山崎や響を飲み終えた後、空き瓶を売却します。偽造業者は、これらの状態の良い本物のボトルや箱を大量に回収し、その中に他の安価なウイスキーを詰め替え、再び封をします。

一般の消費者にとって、ボトルもパッケージも本物なので、外見から見分けるのは非常に困難です。毎日その酒を飲んでいるような愛飲家でなければ、飲んだだけで異変にすぐに気づくことも難しいでしょう。これにより、偽造のハードルと発覚のリスクが大幅に低下しています。

5. 以前の法規制に抜け穴があり、市場がやや混乱していた

2021年以前、日本における「ジャパニーズウイスキー」の法的定義は実は非常に曖昧でした。一部の蒸留所は、スコットランドやカナダから安価な原酒を輸入し、日本でブレンドし、瓶詰めして「ジャパニーズウイスキー」のラベルを貼って販売していました。これは「偽造酒」ではありませんが、このような行為は市場全体をやや混乱させ、消費者に「ジャパニーズウイスキー」の真偽について疑問を抱かせました。偽造業者はこの混乱に乗じて利益を得ていたのです。

まとめると、以下のようになります。

ジャパニーズウイスキーが神格化され(需要が爆発)→蒸留所の古い原酒が不足し(供給不足)→市場価格が高騰し(魅力的な利益)→詐欺師が本物のボトルに偽の酒を詰める(偽造が容易)。

したがって、もし今、山崎や響といった人気銘柄を「掘り出し物価格」で売っている人、特に個人販売者を見かけたら、基本的には大きな疑問符を付けるべきです。本物を飲みたいのであれば、信頼できる公式ルートや大手専門店で正規に購入することをお勧めします。