軽井沢のウイスキーは、なぜ「ヘビーシェリースタイル」とよく呼ばれるのですか?
いやー、軽井沢(かるいざわ)の話をするなら、「ヘビーシェリー」という言葉は避けて通れませんね。話は実はとてもシンプルで、例え話で説明しましょう。
まず、「シェリースタイル」とは何か、から始めましょう。
ウイスキーの樽を、料理に味付けをする「鍋」や「漬け込み容器」だと想像してみてください。新しく蒸留されたウイスキー(「ニューメイクスピリッツ」と呼びます)は、味のない白い肉のようなもので、この「容器」に入れて何年も漬け込むことで、ようやく味が染み込みます。
そして「シェリー樽」とは、かつてスペインのシェリー酒が入っていたオーク樽のことです。この樽自体が、シェリー酒の風味、つまりレーズン、ダークチョコレート、ジャム、ナッツ、スパイスのような甘く濃厚な味わいをたっぷりと吸い込んでいます。ですから、ウイスキーのニューメイクスピリッツをシェリー樽で熟成させると、ウイスキーはゆっくりとこれらの風味を「吸収」し、自らもそのスタイルを帯びるようになるのです。
次に、なぜ軽井沢が「ヘビー」シェリーなのか?
これは料理に例えると分かりやすいでしょう。薄味が好きな人は、少し塩を加えるだけで十分ですが、濃い味が好きな人は、たっぷりと調味料を使い、煮込む時間も長くします。軽井沢は、まさに生粋の「濃い味好き」だったのです。
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材料の投入が大胆: 他の蒸留所がバーボン樽(バニラやクリーミーな風味をもたらす)を使って軽やかなスタイルを試みていた時代に、軽井沢はほとんど「一本気」で、非常に偏執的に、大量の高品質なスペイン産シェリー樽、特に最も風味豊かなタイプ(例えばオロロソシェリー樽)を使い続けました。彼らが追求したのは、その究極の濃厚さであり、これは当時の日本のウイスキー業界では非常に異端な存在でした。
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熟成期間が長い: 「漬け込む」時間が長ければ長いほど、味は当然濃くなります。軽井沢の多くのクラシックなボトルは高年数のもので、これらの風味の強いシェリー樽の中で10年、20年、あるいはそれ以上もの長い時間を過ごしました。考えてみてください、上質な豚バラ肉を最高のタレで、一日中とろ火で煮込んだら、その味が「濃く」ならないわけがありませんよね?出来上がったウイスキーは醤油のように色が濃く、口当たりはオイリーで複雑、プルーン、カシス、レザー、タバコ、ココアの香りが充満し、とろけるような濃厚な風味を放っていました。
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妥協しない姿勢: 軽井沢のスタイルは、まさに頑固で直接的でした。一部のウイスキーがシェリー樽とバーボン樽の原酒をブレンドしてバランスを追求するのとは異なり、軽井沢は多くの場合、「私は純粋なシェリー樽だ、私を愛する覚悟はあるか?」と語りかけてくるような感覚でした。この圧倒的で、一切隠すことのないシェリーの風味が、「ヘビー」という言葉の真髄なのです。
ですから、これらの点を総合すると、最高のシェリー樽だけを愛用 + 樽の中で十分な時間を過ごす + 究極の濃厚さを追求し、バランスは求めない、その結果として生まれた製品は、当然「ヘビーシェリースタイル」という称号を冠されることになったのです。
現在、軽井沢は閉鎖されてしまい、一本飲むごとに一本減るという状況ですが、彼らが世界に残したこの「ヘビーシェリー」という印象は、ウイスキー愛好家たちの間で永遠の伝説となり、語り草となっています。