日本のウイスキーメーカーはなぜ原酒交換ではなく、内部での多様な生産を志向するのですか?
ハハ、核心を突いた質問ですね。これは日本のウイスキーとスコッチウイスキーの非常に根本的な違いです。できるだけ分かりやすい言葉で説明しましょう。
この話を**「レストラン経営」**に例えてみてください。
スコットランド側は、巨大なフードコートのようなものです。そこには何百ものブース(蒸留所)があり、あるブースは麻辣ザリガニ(例えばアイラ島のピーティーな風味)を専門とし、別のブースはスズキの蒸し料理(スペイサイドのフローラルでフルーティーな香り)、また別のブースはラム肉のローストを専門としています。フードコートには大企業(例えばディアジオやペルノ・リカールといった大手グループ)がいて、「海陸空の豪華コース」(ブレンデッドウイスキー)を提供したいと考えています。彼らは自分でエビを育てたり、魚を飼育したり、羊を育てたりする必要はありません。直接各ブースから最高の食材を調達し、自社の総料理長(ブレンダー)が最高の味のコースにブレンドすれば良いのです。この「食材を相互に調達する」プロセスが「原酒交換」です。
一方、日本側は、サントリーのシェフやニッカのシェフといった、数人のミシュランの星付きシェフのようなものです。彼らはフードコートに出店するのではなく、自分の独立したレストランを経営しています。
なぜ彼らは互いに「原酒を融通し合わない」のでしょうか?主な理由はいくつかあります。
1. 歴史的背景:愛憎入り混じる「師弟関係」
これは日本のウイスキーの二人の創業者、サントリーの鳥井信治郎とニッカの竹鶴政孝から語り始める必要があります。竹鶴政孝はかつてスコットランドで技術を学び、帰国後、鳥井信治郎を助けて日本初のウイスキー蒸留所である山崎蒸留所を設立しました。しかし、後に二人の理念が合わず、竹鶴は独立してニッカを創業しました。
それ以来、この二社は最大のライバルとなりました。考えてみてください、コカ・コーラがペプシから原液を仕入れて新しい味をブレンドするでしょうか?もちろんしません。そのため、最初から日本のウイスキー業界には「原酒を相互に交換する」という伝統がありませんでした。皆、門戸を閉ざし、それぞれが独自に研究開発を進めてきたのです。
2. 必然的に生まれた「オールラウンダー」
隣から異なる風味の「食材」を仕入れられないなら、どうすればいいのでしょうか?自社で全てを賄うしかありません。
複雑で奥深い風味のウイスキー(例えばサントリーの「響」やニッカの「フロム・ザ・バレル」)をブレンドするためには、ブレンダーは多種多様な原酒を手にしている必要があります。そのため、日本の蒸留所は、一つの蒸留所内で様々な原酒を生産するためにあらゆる手段を講じました。
彼らはどのようにしてそれを実現したのでしょうか?まさに「細部へのこだわり」を極限まで追求したのです。
- 異なる蒸留器の使用: 一般的なスコットランドの蒸留所の蒸留器は似たような形をしています。しかし、日本の山崎蒸留所に行ってみると、そこはまるで蒸留器の「博物館」のようです。背の高さや太さ、様々な形のものが揃っています。異なる蒸留器は異なる風味の酒を生み出します。
- 異なる酵母菌の使用: 異なる酵母を使うことで、様々なフローラルな香りやフルーティーな香りを生み出すことができます。
- 異なるオーク樽の使用: これが最も重要な要素です。彼らはスコットランドで一般的に使われるバーボン樽やシェリー樽だけでなく、非常に貴重で独特な風味を持つ「ミズナラ樽」(日本固有のオーク)を惜しみなく使用します。これにより、白檀や伽羅のようなオリエンタルで神秘的な香りがもたらされます。
そのため、日本の蒸留所は、まるでオールマイティなミシュランシェフのようです。魚料理だけでなく、ステーキもデザートも作り、さらには野菜作りから牛の飼育まで全て自社で行い、最終的にテーブルに並ぶ一皿一皿(一本一本のウイスキー)が、最初から最後まで自社の名前を冠し、品質が完全に自社の管理下にあることを保証するのです。
3. 「職人精神」の体現
これは日本の文化における「職人精神」、つまり究極を追求し、一切の妥協を許さない態度とも関連しています。彼らは「フードコート」で特定の味を専門とする一ブースであることに満足せず、原材料から最終製品まで完璧に管理された「独立した王国」を築こうとします。このような内部で多様な原酒を生産する方式は、コストが高く、難易度も高いですが、最終製品の独自性と安定性を最大限に保証することができます。
まとめると:
スコットランドは**「チームワーク」**であり、皆が明確な役割分担を持ち、巨大な風味のライブラリーを共同で構築しています。
日本は**「孤高の職人技」**であり、歴史的な競争関係と市場環境により、各大手メーカーは「万能型」になることを余儀なくされ、自社だけで全てを完結させる軍隊のような存在です。
ですから、次に「響」のような日本のブレンデッドウイスキーを飲むとき、その中に含まれる何十種類もの異なる風味の原酒が、サントリー自社の山崎、白州、知多といった蒸留所から来ている可能性が高いことを知っておいてください。外部から仕入れたものではありません。これこそが、日本のウイスキーの魅力の一つです。競争から生まれ、匠の技によって極められた究極のこだわりなのです。