サントリーローヤルシリーズと響シリーズのブレンディング哲学における違いは何ですか?
はい、この質問はとても面白いですね。ロイヤルと響(Hibiki)は、サントリーのブレンデッドウイスキーにおける二枚看板と言えますが、その「個性」は全く異なります。できるだけ分かりやすくご説明します。
ブレンデッドウイスキーをバンドを組むことに例えてみましょう。
響(Hibiki)- 完璧なオーケストラを追求する
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コンセプトの核:ハーモニーと共鳴 (Harmony) 「響」という言葉が日本語で意味するのは、まさにハーモニー、共鳴です。特定の味を際立たせるのではなく、すべてのメンバー(山崎、白州、知多蒸溜所の様々な原酒)の音が完璧に融合し、華やかで複雑、そして一点の曇りもない交響曲を奏でることを目指しています。
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バンドメンバー: メンバーは非常に多く、それぞれが熟練の技を持っています。山崎のシェリー樽由来のフルーティーな香り、白州の爽やかなスモーキーさ、知多のグレーンウイスキーのなめらかな甘さなどです。
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ブレンダーの役割: まるで一流の指揮者のようです。彼の役割は、それぞれの「楽器」の音量と位置を正確にコントロールし、ヴァイオリン(例えばフローラルな香り)、チェロ(例えばウッディな香り)、フルート(例えばフルーティーな甘さ)の音が互いに絡み合い、溶け合い、最終的に一つの全体を形成するようにすることです。響を一口飲むと、味が何層にもわたって広がり、非常に滑らかでエレガントに感じられます。「これこそが際立っている」と特定の味を指摘することは難しいでしょう。なぜなら、それらはすでに一体となっているからです。
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一言でまとめると: 響の目標は「究極の調和美」を創造することであり、それは丹念に磨き上げられ、完璧を追求した芸術品です。
ロイヤルシリーズ - エースボーカルが率いるロックバンドのよう
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コンセプトの核:伝統と敬意 (Legacy) ロイヤルの歴史は響よりもずっと古く、サントリー創業者である鳥井信治郎氏が自らブレンドした最後の作品であり、サントリー精神の「原点」とも言えるものです。サントリー創業60周年を記念して誕生したため、その根底にはクラシックでレトロな魅力が宿っています。
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バンドメンバー: バンドには絶対的な「ボーカル」または「リードギタリスト」がいます。それは山崎蒸溜所の原酒、特にシェリー樽由来の華やかな原酒です。他のメンバー(例えば白州や知多の原酒)は、優れたベーシストやドラマーのような存在で、彼らの存在は、このボーカルにしっかりとしたリズムとサポートを提供し、ボーカルの歌声をより際立たせ、感動的にするためにあります。
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ブレンダーの役割: こちらのブレンダーは、名プロデューサーのようなものです。彼はバンドの魂が山崎であることを明確に理解しており、山崎の象徴的で甘く華やかなスタイルを最大限に引き出すために、あらゆる手を尽くします。
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一言でまとめると: ロイヤルの目標は「クラシックへの敬意」であり、山崎の魅力を核として惜しみなく表現しています。味はより直接的で濃厚、レトロで温かみのある質感を帯びています。
では、最も根本的な違いは何でしょうか?
- **響(Hibiki)は「全体は部分の総和以上」**であり、非の打ちどころのないハーモニー感を追求し、各メンバーがチーム全体のために貢献します。
- **ロイヤルは「エースが全体を牽引」**し、明確な核(山崎)があり、他のメンバーはその核をより輝かせるために存在します。
例えるなら、高級レストランに行った場合:
- 響 は、何十種類もの食材を精密な技術で組み合わせ、これまでに体験したことのない、奥深く完璧にバランスの取れた新しい味を創造する分子ガストロノミーの料理のようです。
- ロイヤル は、最高級のM9和牛を、最もシンプルな調理法で、少量の塩と胡椒だけで提供し、その牛肉本来の卓越した品質を存分に味わわせてくれる料理のようです。
どちらも最高級の逸品ですが、提供したい体験と感動の方向性は全く異なるのです。