なぜ自己資本利益率(ROE)は、一株当たり利益(EPS)の成長よりも重要な指標だと考えられているのでしょうか?

作成日時: 7/30/2025更新日時: 8/17/2025
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なぜ株主資本利益率(ROE)は1株当たり利益(EPS)の成長よりも重要な指標とされるのか?

投資分析において、特にウォーレン・バフェットの株主への手紙で示される見解によれば、株主資本利益率(ROE)は企業の本質的価値と長期的な収益力を評価する核心指標と見なされます。一方、1株当たり利益(EPS)の成長は一般的な指標ではあるものの、ROEほど信頼性が低い場合が多いのです。その理由をいくつかの重要な観点から説明します:

1. ROEは資本利用効率を反映する

  • ROEの計算式:ROE = 当期純利益 ÷ 株主資本。これは「1単位の株主資本がどれだけの利益を生み出せるか」を測定し、経営陣の資本利用効率を表します。
  • バフェットは「高いROEは、企業が留保利益を効率的に再投資し、より多くの価値を創造できることを示す」と強調しています。例えば、ROEが継続的に15%以上を維持し、巨額の追加資本を必要とせずに成長できる企業は、持続可能な競争優位性(「経済的な堀」)を持つ可能性が高いのです。
  • これに対し、EPSの成長(EPS = 当期純利益 ÷ 発行済み株式数)は、自社株買い・負債増加・株式希釈によって人為的に引き上げられる可能性があり、真の収益力を必ずしも反映しません。

2. EPS成長は操作されやすく持続性に欠ける

  • EPSは、一時的な利益・会計上の調整・多額の借入による拡大など短期的要因で膨らむことがあります。たとえEPSの成長が堅調でも、ROEが低ければ、外部資金への依存や非効率な経営を示しており、長期的には企業価値を毀損する恐れがあります。
  • バフェットは手紙で繰り返し「多くの企業がM&Aや高負債でEPS成長を達成しているが、これは株主資本利益率を希薄化させ『成長の幻想』を生む」と指摘。例えば、新株発行による資産買収でEPSを押し上げても、買収対象のROEが低ければ企業全体の効率性は低下します。

3. ROEは長期的価値創造を重視する

  • バフェットはROEを「複利効果に直結する本質的価値の評価基準」と位置付けています。高いROEを維持する企業は利益を留保し効率的に再投資できるため、「雪だるま式の効果」により株主の富が長期的に増大します。
  • EPS成長は短期業績に重点が置かれ、市場変動や景気循環の影響を受けやすい指標です。バフェットはコカ・コーラやジレットのようにROEが高く安定した企業への注目を推奨しており、これらは彼の投資ポートフォリオでも突出した成果を上げています。

4. 実例と投資への示唆

  • バフェットは株主への手紙で、バークシャー・ハサウェイのROEとS&P500のパフォーマンスを比較し、「ROEこそが長期保有に値する企業を判断する基準」と強調しています。
  • 投資家はEPS成長を単純に追うのではなく、ROE > 15%(業界調整後)で推移が安定した銘柄を優先的に選別すべきです。これにより、EPS成長率は高いもののROEが低迷する周期性株のような「バリュートラップ」を回避できます。

結論として、ROEは企業の核心的な競争力と経営品質を明らかにしますが、EPS成長は往々にして表面的な数値に過ぎません。バフェットの投資哲学の核心は「高いROEで持続的に価値を創造できる優良企業を見極めること」にあり、これは短期的なEPSの変動よりもはるかに重要です。

作成日時: 08-05 08:31:14更新日時: 08-09 02:25:37