彼はなぜ「のれん(Goodwill)」の会計処理に批判的なのですか?

作成日時: 7/30/2025更新日時: 8/17/2025
回答 (1)

バフェットの「のれん」会計処理に対する批判的見解

バフェットはバークシャー・ハサウェイの株主への手紙において、伝統的な会計基準によるのれん処理を繰り返し批判しており、その主な理由は以下の通りである:

1. 会計上ののれんと経済的なのれんの区別

  • 会計上ののれん:企業買収時に支払った価格が被買収企業の純資産公正価値を超える差額を指す。従来の米国会計基準(APB意見書第17号など)では、こののれんは定期的に償却(通常40年)され、報告利益を毎年圧縮する。
  • 経済的なのれん:バフェットが重視する企業の真の経済的価値(ブランド・顧客ロイヤルティ・競争優位性など)。これらは減価せず、むしろ時間とともに増価する可能性がある(例:コカ・コーラやジレットのブランド価値)。
  • 批判点:会計上の償却は経済的実態を無視し財務報告を歪める。償却は利益を人為的に過小表示する一方、企業の真の収益力は向上している可能性がある。これにより投資家の企業本質的価値評価が困難となる。

2. 償却による利益過小評価

  • のれんは機械設備などの有形資産と異なり、物理的劣化や陳腐化しない。買収判断が適切であれば、のれんの価値は高い収益率を通じて顕在化する。
  • 事例:1983年の株主への手紙で、優良企業を高額で買収した際発生するのれんは償却すべきでないと指摘。償却は成功した買収を「罰する」行為であり、報告上の1株当たり利益が経済的利益を下回るとした。
  • この手法は「償却による利益圧迫を避けるため買収を躊躇う経営者」や「プーリング法(持分プーリング)による償却回避」を助長し、会計の公平性を歪めると批判。

3. 財務報告への影響

  • のれん償却は財務諸表を経済的実体から乖離させ投資家を誤導する。バフェットは「会計利益」より「経済的利益」による企業価値評価を主張。
  • 2001年のFASB(財務会計基準審議会)によるSFAS第142号基準を支持。これは定期償却を廃止し、代わりに毎年の減損テストを義務付け、のれんが実際に減損した時のみ損失計上するもので、経済的実態に即している。
  • ただしバフェットは、新基準下でも「買収価値を過大評価した場合、減損テストでは問題発見が遅れ『会計上の幻想』を生む」と警告を継続。

4. バフェットの提言

  • 投資家は会計上の償却影響を無視し、「所有者利益」(純利益+減価償却費+のれん償却費-資本支出)に注目すべき。
  • 1983年・1990年など複数の株主への手紙で、バークシャー自身の買収事例(シーズキャンディーなど)を挙げ「のれんの経済的価値は会計記録を大幅に上回り、償却で'抹殺'されるべきでない」と説明。

要約すると、バフェットの批判は「会計基準がのれんの持続的経済価値を反映せず、財務報告を歪め投資判断を阻害する点」に起因する。真の価値評価は会計形式ではなく経済的実体に基づくべきと強調している。

作成日時: 08-05 08:29:59更新日時: 08-09 02:24:59