フリードマンの未来予測について、何が実証され、何が否定されたとお考えですか?
作成日時: 8/15/2025更新日時: 8/18/2025
回答 (1)
ハァ、フリードマンの話となると、まるで「経済学のブラインドボックス」を開けるような感じだね。膝を打つ発見もあれば、首をかしげる主張もある。彼は真正の実力者で、恐れずに発言し、半世紀以上にわたる影響力を持つから、彼の「予言」が話題の的になるのも当然だ。
彼の著作を何冊かかじった一般人として、分かりやすい言葉で説明してみよう。彼の予測で当たったものと、失敗に終わったものを整理してみる。
どの予測が実証され、あるいは多大な影響を及ぼしたのか?
フリードマンはロックスターのようで、彼の数曲の「代表曲」は世界経済の「音楽スタイル」を変えたと言える。
1. インフレの真犯人「紙幣印刷機」
- 予測の内容:「インフレはいつでも、どこでも貨幣現象である」という彼の有名な言葉がある。意味は単純で、物価暴騰を貪欲な商人や賃上げを求める組合のせいにするな。根本的な原因は政府が紙幣印刷機を回しすぎて、市場に出回るお金が増えすぎ、貨幣価値が下がることだ。
- 現実の検証: この主張はほぼ神格化された。1970年代、アメリカとヨーロッパは「スタグフレーション」(景気停滞+インフレ)という恐ろしい状況に陥り、従来の経済学理論では説明がつかない。しかしフリードマンの理論は核心を見事に突いていた。後日、FRB議長ポール・ボルカーは同様のフリードマン流の「劇薬」を用い、大幅な金融引き締めにより、苦しい過程を経ながらもインフレを収束させた。以後、世界中の中央銀行は通貨供給量の管理を中核任務の一つとしている。近年見られるパンデミック後の世界的な金融緩和(放水)の直後の世界的な高インフレも、彼の見方を再証明した。
2. 「変動相場制」が主流になる
- 予測の内容: 彼の時代の主流は「ブレトン・ウッズ体制」。端的に言うと、ドルが金(ゴールド)に固定され、他国通貨がドルに固定される固定相場制度。フリードマンはこの体制は硬直的すぎて遅かれ早かれ崩壊すると考えた。彼は各国通貨の自由交換を主張し、相場を株価のように自由に変動させるべきだと提唱した。
- 現実の検証: 1971年、ニクソン米大統領がドルと金の兌換停止を宣言し、ブレトン・ウッズ体制は見事に崩壊した。以来、フリードマンが予言した変動相場制の時代に入った。この体制にも問題はあるものの(例:為替変動の激しさ)、旧体制より柔軟であり、今も機能している。
3. 「志願兵制」は「徴兵制」より優れている
- 予測の内容: 完全に経済問題ではないが、彼の自由主義思想が表れる。若者に強制的に兵役を課すのは非効率的で個人の自由を侵害する、と考えた。軍隊を魅力的な職業とし、高給と福利厚生で兵士を「雇用」すれば、よりプロフェッショナルで強力な軍ができる、との主張。
- 現実の検証: アメリカは1973年に徴兵制を廃止、全面的に志願兵制(志願兵役制)へ移行。今日では、ほとんどの先進国がこの方式を採用している。プロフェッショナル化された軍隊の訓練レベルと戦闘力が、臨時召集の兵士を大きく上回ることは実証済みだ。
4. (ある程度)香港モデルを賞賛
- 予測の内容: 彼は香港を「自由市場」の模範として崇め、香港の成功は政府の介入が少なく、低税率、自由貿易のおかげだとした。彼が製作した有名なドキュメンタリー『自由選択 (Free to Choose)』に、香港を絶賛する回がある。
- 現実の検証: 経済成長の観点では、彼の見解の一部は正しかった。香港は自由港の地位を活かし、経済の奇跡を達成、「アジア四小龍」の一角に躍り出た。このモデルは後に多くの経済に影響を与え、中国本土の改革開放政策もそこから要素を取り入れている。しかし、この問題については後ほど別の側面にも触れる。
どれのが反証され、あるいは議論を呼んでいるのか?
もちろん、フリードマンも神ではない。見誤った、あるいは考えが甘かった点もある。
1. 「貨幣流通速度は安定している」という前提が不安定
- 予測の内容: 彼の貨幣理論の重要な前提は「貨幣流通速度」(単純に言うとお金が社会で受け渡される速度)が安定し予測可能であること。これがあって初めて「通貨量を制御すればインフレを精密に管理できる」という公式が成り立つ。
- 現実の検証: その「速度」は全く安定しないということが判明。金融イノベーション(クレジットカード、電子決済、各種金融デリバティブ等)の進展に伴い、資金の流れは極めて複雑で変動的になった。2008年の金融危機では人々がお金を手元に抱えたため、貨幣流通速度が急落した。このため中央銀行は、市場に「資金供給(放水)」しても、従来のように経済を効果的に刺激できないことに気づいた。現在、主要中銀は当時のように通貨供給量だけを硬直的に注視する姿勢は取っていない。
2. 「完全自由市場」の破壊力を過小評価
- 予測の内容: 「小さな政府、大きな市場」の強硬派で、市場には自己調整能力があり、政府介入は最小限が望ましく、特に金融部門ではそうだと主張。規制緩和が活力を生むと信じた。
- 現実の検証: 2008年の世界金融危機は痛烈な一撃となった。金融デリバティブなどの分野での過度な規制緩和がウォール街の制御不能な強欲を招き、最終的に世界中を飲み込む災厄を発生させた。この危機は、無制約な市場、特に金融市場は自己破滅へ向かいやすいことを示した。市場には「見えざる手」だけでなく、脱線を防ぐ「見えるルール」も必要なのである。
3. 香港モデルへの視点が偏りすぎ
- 予測の内容: 香港の経済的繁栄のみを見て、その背後にある社会問題を見落とした、あるいは予見できなかった。
- 現実の検証: 「積極的不介入」政策の下、香港の貧富の差は拡大し、住宅価格は非常識な水準に上昇、一般市民の生活圧迫は増大した。これは純粋な自由市場が社会の公平性や底辺層の福祉を犠牲にしうることを示している。同時に、香港の繁栄が中国本土と世界の「超繋ぎ役」という特殊な地政学的地位に大きく依存している点や、その地位に変化が起きた時に経済モデルが必然的に影響を受ける点も、彼は予見できなかった。
まとめ
フリードマンを偉大な「理論的転轍機(てんてつき)」と見ることもできる。世界経済という列車がケインズ主義(政府介入を主張する)によって「スタグフレーション」という路線に逸れかけていた時、彼は猛然と転轍機を切り替え、「自由市場」と「マネタリズム」の方向へ車両を導き、再び高速走行を可能にした。
しかし、その路線も無欠ではない。スピードを出しすぎれば、深刻な貧富の格差や金融脱線といった「脱線(翻車)」リスクが現れる。
だからこそ彼の予測は、**当たった部分は世界を深く変え、ハズレた部分もまた深く世界に警鐘を鳴らした。**私たちの今日の生活は、かなりの程度、彼が形成し予言したこの世界の枠組みの中で営まれている。
作成日時: 08-15 04:09:51更新日時: 08-15 08:49:10