こんな風に考えてみましょう。この二つの考え方は、まるで全く異なる「料理の学び方」のようなものです。
「帰納法」は、「レシピを見て料理を学ぶ」ようなものです。
宮保鶏丁を作りたいとしましょう。評価の高いレシピを10個集めてみると、どれも鶏むね肉とピーナッツを使い、まずネギ、ショウガ、ニンニクを炒めて香りを出すと書いてあります。そこであなたは、「成功する宮保鶏丁は、この手順と材料に従うべきだ」という法則を導き出します。
これが帰納法です。あなたは多くの成功例(レシピ)を観察することで、普遍的なパターンやルールをまとめ、それに従って行動します。その利点は、速く、確実で、間違いにくいことです。なぜなら、あなたはすでに他人が検証済みの道を進んでいるからです。私たちの日常生活のほとんどで帰納法を使っています。例えば、「他の家の子供たちは皆塾に通っているから、うちの子も通わせるべきだ」、「この業界では皆このようにビジネスをしているから、私たちもそうすべきだ」といった具合です。これは参考にし、模倣することです。
「第一性原理」は、「料理の化学から学ぶ」ようなものです。
あなたはどんなレシピも見たくありません。あなたはまず最も根本的な問題を研究します:
- タンパク質(鶏肉)はどの温度で最も柔らかくなるのか?
- メイラード反応(香りの源)が起こる条件は何か?
- 高温で砂糖は何が起こるのか(カラメル化)?
- ピーナッツのサクサク感はどのようにして生まれるのか?
あなたは「料理を作る」ということを、最も基本的な物理的・化学的原理に分解します。これらを理解すれば、「宮保鶏丁」というレシピに縛られることはありません。鶏肉の代わりに豚肉、牛肉、あるいは豆腐を使うこともできます。ピーナッツの代わりにカシューナッツを使うこともできます。あなたは全く新しい、しかし同様に美味しい料理を発明することさえできるでしょう。
これが第一性原理です。それは他人がどうしているか、あるいは「伝統」や「経験」がどうであるかには関心がありません。それはただ一つのことに関心があります:最も核心的で基本的な点(物理法則、人間の本質、数学的公理など)に戻り、この「絶対的に正しい」出発点から、一歩ずつ結論と方法を導き出すこと。
核心的な違いをまとめると:
- 帰納法は「後ろを見る」または「横を見る」ことです。 それは過去の経験や他人のやり方に依存し、「類推的思考」です。例えば、馬車が十分に速くない場合、帰納法の考え方は「もっと強い馬を探し、もっと軽い車輪を作る」というもので、既存の枠組みの中で改良を加えることです。
- 第一性原理は「下を見る」、つまり底まで見ることです。 それは既存の枠組みを無視し、物事の本質に戻り、「物理学的思考」です。例えば、「速く移動する」ことの本質は何かに焦点を当て、単に「馬車をどうすればもっと速くできるか」ではなく、最終的には自動車を発明するかもしれません。
簡単に言えば、帰納法はろうそくをより明るく、より長く燃やす方法を教えてくれます。一方、第一性原理は「なぜ光が必要なのか?」と問い、最終的には電灯を発明するかもしれません。