NISA口座での投資損失は、他の利益と税務上相殺できますか?

明 何
明 何

はい、NISA口座の損失が税控除の対象となるかについてご説明します。


NISA口座での投資損失は、他の利益と相殺して課税を減らすことができますか?

結論から言うと、できません。

NISA口座で発生した損失は、他の証券口座(例えば「特定口座」や「一般口座」)で得た利益と「損益通算」することはできません。

なぜそうなるのか?

NISA口座は、「税制上の優遇措置がある区画」、あるいは**「独立した非課税の金庫」**と考えることができます。

  1. メリット:利益が出ても税金がかからない

    • NISAの最大の利点は、この口座内で株式や投資信託を売却して得た利益(譲渡益)や、受け取った配当金が完全に非課税になることです。税務署は、この収入を認識しません。
  2. デメリット:損失が出ても認識されない

    • この口座が「非課税」であるため、税務署は口座内のすべての活動を「認識しない」のです。利益が出ても税金を取りませんが、同様に、損失が出てもその損失を認めません
    • したがって、この損失を、他の場所(例えばあなたの特定口座)で得た利益にかかる税金と相殺することはできません。

例を挙げて説明します

仮に、今年のあなたの投資状況が以下のようだったとします。

  • NISA口座10万円の損失
  • 特定口座(源泉徴収あり):30万円の利益

結果はどうなるでしょうか?

あなたは、特定口座で得た30万円の利益に対して全額課税されます(約20.315%、つまり6万円強)。NISA口座で10万円の損失が出たからといって、税務署が20万円の利益に対してのみ課税することはありません。NISAの損失は、このように「無駄な損失」となってしまいます。

もし損失が課税口座で発生したら?

比較として、もしあなたの二つの口座が両方とも特定口座だった場合:

  • 特定口座A10万円の損失
  • 特定口座B30万円の利益

この場合、「損益通算」が可能となり、今年の総投資収益は30万円 - 10万円 = 20万円と計算されます。あなたは、この20万円の利益に対してのみ税金を支払えばよいことになります。

まとめ

  • NISA口座:独立した非課税制度です。利益は非課税ですが、損失は税務上の計算に含まれません。
  • 課税口座(特定口座/一般口座):利益には課税されるため、損失を利益と相殺して税金を減らすことができます。

NISAを利用する選択は、「利益非課税」という大きなメリットに魅力を感じる一方で、「損失は税控除できない」というルールも受け入れることになります。これは、いわばコインの裏表のようなものです。