防御的投資家は市場の変動にどのように対応すべきでしょうか?
はい、この質問は非常に核心を突いていますね。長期で堅実な投資を目指す人なら誰もが直面する壁と言えるでしょう。グレアムの信奉者として、私の理解と実践を分かりやすくお伝えします。
ディフェンシブ(防御型)投資家は市場の変動にどう対処すべきか?
皆さん、まず明確にしておきたいことがあります。ディフェンシブ投資家としての私たちの最優先目標は、短期的な大儲けではなく、「元本を損なわないこと」と「満足のいくリターンを得ること」 です。ですから、私たちの戦略体系全体は、この核心を軸に構築されているのです。
市場の変動は、晴れたり雨が降ったりする天候のように、常に存在するものです。私たちがすべきことは、いつ雨が降るかを予測することではなく、外出前に頑丈な(ひょうが降っても大丈夫な)傘を準備しておくことです。
これから、この「傘」を具体的な行動指針に分解して、分かりやすく説明します。
1. 土台を固める:揺るがない資産配分
これは何よりも最重要点です。何かを買う前に、お金をどう分けるかを事前に決めておきます。グレアムがディフェンシブ投資家に提唱した古典的なアドバイスはこれです:
- 株式と債券の比率をほぼ50:50に保つ
自身のリスク許容度に応じて25%から75%の間で微調整はできますが、この50:50の比率が最良の出発点となります。
なぜこれが重要か?
これは投資ポートフォリオに「緩衝材」(ショックアブソーバー)を装備するようなものです。市場が大暴落し株式部分が目減りしても、保有する高品質な債券(例えば国債など)は通常安定しており、リスク回避の動きで値上がりすることさえあります。こうして、総資産の下落はそれほど深刻にならず、冷静さを保ちやすくなります。下落時には債券を売って株式を購入する資金が手元にあり、上昇時には株式を売って債券に振り替えることで、事実上「高く売り、安く買う」を自動化できます。
簡単に言えば、 株式という「攻め」の部分と、債券という「守り」の部分をポートフォリオ内に持つことが大切です。そうすれば、天が落ちてきても何かが支えてくれます。
2. 安く買う:「安全域」(安全マージン)の原則を貫く
「安全域」はグレアム投資哲学の真髄です。
端的に言えば:4円の値段で、10円の価値があるものを買うことです。
どういうことか?優良企業の本質的価値が1株あたり100円でも、市場のパニックで株価が60円まで落ち込んだとします。この40円の差があなたの「安全マージン」です。
これが市場変動時にどう役立つか?
- 下落緩衝の提供: 市場のパニックが続き株価が60円からさらに50円に下がったとしても、それが100円の本質的価値を大きく下回っていることを理解していれば恐れることはありません。購入価格自体が大きな保護クッションを提供しているからです。
- ミスの許容範囲を提供: 万が一個人の目利きが甘く、会社の真の価値が100円ではなく80円だったとしても、あなたは60円で買っているので安全圏にいることになります。
したがって、ディフェンシブ投資家が購入するのは、価格がその本質的価値を大幅に下回っている場合のみです。市場が恐慌状態に陥り、変動が激しくなるほど、このような「割引品の掘り出し物」チャンスは増えるのです。
3. 「市場さん」を指針ではなく、己の僕(しもべ)と心得る
グレアムは非常に有名な比喩 - 「市場さん」(Mr. Market=マーケットさん) を生み出しました。
非常に情緒不安定な相棒がいて、その名を「市場さん」だと想像してみてください。
- 彼は毎日あなたのところに来て、あなたたちが共同保有する資産の、彼が買い取りたい/売却したい価格を提示します。
- 彼が極度に楽観的になるとき(ブル市場)、常識外れの超高値を提示し、あなたの持分を買い取ろうとします。
- 彼が極度に悲観的になるとき(ベア市場)、恐怖に震え、馬鹿げたほど安い価格を提示し、持分を買い取ってくれと懇願します。
あなたはどうすべきか?
- 彼の提示価格が高すぎるときは、持分の一部を売却して利益を確定させることを考えられます。
- 彼の提示価格が安すぎるときは、まさに彼から安く買い取る絶好のチャンスです!
- 彼の提示価格が不合理ならば、完全に無視し、彼が一人で暴れさせることも全く問題ありません。
肝心なのは: 取引の主導権はあなたが握っています。市場の変動とは、市場さんが気分を大きく揺らしているだけです。彼と一緒にパニックになったり興奮したりする必要は全くありません。あなたがすべきことは、彼の気分の波を利用して、自分にとって有利な取引の機会を作り出すことです。
4. 規律を守る:定期積立投資(ドルコスト平均法)
これは人間の弱さと市場変動に対抗する強力な武器です。
やり方は非常にシンプル: 市場が上がっても下がっても関係なく、決められた時期(例えば毎月の給料日後など)に、決まった金額の資金を継続的に投資します。
利点は何か?
- 自動的な「高値少額・安値多額」購入の実現: 市場が下落すれば、同じ金額でより多くの株式(単位:株)を購入でき、市場が上昇すれば、購入できる株数は少なくなります。長期的には、平均取得コストを比較的低い水準で維持することができます。
- タイミングを狙う衝動の克服: 「今は底なのか?」「そろそろ底入れ買いすべきか?」といった神様にしか答えられない問題に悩まされる必要がなくなります。あなたに必要なのは計画を実行することだけだからです。
これは投資に「オートクルーズ」(クルーズコントロール)機能を取り付けるようなものです。荒波の中でも進路を見失わずに進み続けるためのものです。
5. ノイズを避ける:株価変動ではなく、企業の本質的価値に注目する
株式を保有するときは、覚えておいてください。あなたが持っているのは、ただ単なる変動するコードではなく、一つの会社の一部所有権です。
市場が暴落し保有株の価格が100円から70円に下がったら、ぜひ自問してください:
- この会社の商品はまだ売れていますか?
- まだ利益を出していますか? その経済的溝(競争優位性)は健在ですか?
- 株価が下落した原因は、会社自体に致命的な問題が生じたからでしょうか?それとも単に市場全体がパニックに陥っているだけなのでしょうか?
会社そのものが健全であれば、株価下落はむしろ好機です。なぜなら「市場さん」が優良企業をバーゲンセール中だからです。恐れるのではなく、むしろ喜ぶべき状況と言えます。
まとめ
ですから、成熟したディフェンシブ投資家が市場の変動に直面したとき、その心中はこうあるべきでしょう:
「ああ、また市場が上がったり下がったりしているな。ポートフォリオを確認してみよう:うん、50%の債券部分は泰山(たいざん)のように揺るがない。これで十分な地に足のついた状態だ。株式部分はかなり下がった。普段から狙っている優良企業が『安全域』以下の価格に叩き落されていないかチェックする絶好の機会だ。もしあれば、積立分の資金や債券を少し売って買い増せる。掘り出し物がなければ、何もしない。本を読んだり、お茶を飲んだり、仕事に励みながら、来月の積立投資のタイミングを待てばいい。いずれにせよ、このポートフォリオは未来の10年、20年のためのものだ。こんな小さな荒波で慌てることは何もない。」
結局のところ、ディフェンシブ投資の真髄は、事前の周到な準備と厳格な規律を通じて、市場の変動を「リスク」から「好機」に転換することにあります。私たちが得るのは、市場を予測することによる利得ではなく、市場が過ちを犯すことによって生まれる利得なのです。