チャーリー・マンガーは、投資リサーチにおける「確証バイアス」の役割をどのように見ていますか?

作成日時: 7/30/2025更新日時: 8/17/2025
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チャーリー・マンガーが「確証バイアス」をどう見るか:投資において打ち倒すべき最悪の敵

チャーリー・マンガーは「確証バイアス」(Confirmation Bias)を、人間の思考において最も破壊的な傾向の一つと見なしている。特に投資の分野では、巨額の損失や誤った意思決定を招く「最悪の敵」であると考えている。彼の有名な講演『人間の誤った判断の心理学』では、これを「一貫性を保ちたいという傾向」(Commitment and Consistency Tendency)のカテゴリーに分類している。つまり、一度見解を形成したり決定を下したりすると、人は自分の見解を裏付ける情報を探し、解釈し、記憶する傾向があり、矛盾する証拠を無視したり軽視したりするというものだ。

マンガーにとって、確証バイアスが投資調査に及ぼす影響は純粋に否定的で極めて危険である。それは利用できるツールではなく、常に警戒し戦わねばならない敵なのである。


一、投資における確証バイアスの破壊的な現れ

マンガーは、確証バイアスが以下の方法で体系的に投資判断を破壊すると考えている:

  1. 調査プロセスの歪み:投資家が「これは優れた企業だ」という第一印象を持つと、確証バイアスが作動する。彼は無意識のうちに、この主張を支持するポジティブなニュース、分析レポート、データを探し求め、ネガティブな情報(経営陣の欠陥、業界の逆風、競争激化など)は選択的に無視したり、軽く扱ったり、「一時的な困難」と解釈したりする。調査は客観的な探求ではなく、「結論に根拠を見つける」自己検証ゲームと化す。

  2. 「能力の輪」幻想の増幅:投資家は、ある分野で成功経験があると、自分は何でも知っていると思い込むことがある。新たな機会を調査する際、確証バイアスは過去の成功経験と似た特徴だけを見させ、重要な差異を見逃させる。その結果、この新たな機会も自分の能力の輪の範囲内だと誤って思い込んでしまう。

  3. 「アンカリング効果」の悪化:ある株を特定の価格で購入すると、その購入価格は強力な心理的なアンカー(基準点)となる。確証バイアスは「自分が買った価格は適正だ」と証明する理由を探し続けさせ、その後会社のファンダメンタルズが悪化したことを示す証拠が大量にあっても、株価が自分のコスト価格に戻ることを期待して頑なに保有し続け、小さな損失を巨額の損失へと拡大させてしまう。

  4. 批判的思考の窒息:確証バイアスの核心は自我(Ego)の保護にある。自分が間違っていると認めることは苦痛なので、脳は私たちの知性や判断に挑戦する証拠を防ぐ防火壁を築く。これにより投資家は真の意味での自己批判や反省ができなくなり、誤った道をますます進んでしまう。


二、マンガーが確証バイアスに対抗する「武器庫」

マンガーはこのバイアスの頑固さを熟知しており、体系的に対抗するための思考体系全体を構築した。これは単なる口頭の注意喚起ではなく、厳格で実行可能な規律の体系である。

1. 逆に考えよ、常に逆に考えよ(Invert, always invert)

これはマンガーが全ての思考バイアス、特に確証バイアスに対抗する中核となる武器である。

  • 操作方法:投資アイデアを持った時(例:「この会社は今後10年で大成功する」)、その対極を考えることを強制しなければならない。積極的かつ意図的に、この会社が失敗する可能性のあるあらゆる証拠を探すべきだ。
  • マンガーの「鉄則」:彼の有名な言葉がある:「私はただ、自分が将来どこで死ぬのかを知りたい。そうすれば、その場所には永遠に行かないからだ。」 投資においては、これは「私はただ、何がこの投資を破壊するのかを知りたい。そして、それらの破壊要因が存在するかどうかを見るのだ」を意味する。
  • 目標:あなたの任務は自分が正しいと証明することではなく、最大限の努力を払って自分が間違っていると証明することである。自分の投資ロジックを反証するあらゆる方法を尽くしてもそれができない時のみ、そのアイデアは真に優れたものとなる可能性がある。

「もし世界で最も賢く、最も有能で、最も雄弁な相手よりも強力に自分の見解を反論できないなら、その見解を持つ資格はない。」 — チャーリー・マンガー

2. 多元的思考モデルを構築する(Latticework of Mental Models)

確証バイアスはしばしば視野の狭さ、すなわち「ハンマーを持っていると、すべてが釘に見える」状態に起因する。

  • 解決策:マンガーは、心理学、物理学、生物学、工学など様々な分野からの重要な思考モデルを習得し、それらを「思考モデルの格子(Latticework)」に組み合わせることを強調する。
  • 作用:同じ投資対象を複数の異なる視点で検討する時、単一の偏った見解に縛られにくくなる。例えば、ある会社を分析するのにポーターのファイブフォース(経済学)、ニッチ理論(生物学)、破壊点理論(工学)を使うことは、単に財務諸表(会計学)を見るよりも、より包括的で客観的な像を得られ、確証バイアスの影響を効果的に弱める。

3. チェックリストを使用する(Checklists)

マンガーはパイロットの実践からチェックリストの方法を借用し、認知バイアスに対抗する強力なツールと見なしている。

  • 原理:チェックリストは機械的な方法であり、確証バイアスによって無視したくなるリスクポイントを含む、全ての重要な要素を検討することを強制する。
  • 応用:優れた投資チェックリストには、以下のような一連の質問が含まれる:
    • 「このビジネスの経済的モート(競争優位)を侵食するリスクは何か?」
    • 「経営陣にはどのような潜在的なモラルハザード(倫理リスク)があるか?」
    • 「どのような技術革新がこの業界を破壊する可能性があるか?」
    • 「私はこの製品が好きだからといって、その投資価値を過大評価していないか?」
    • これらの質問は、反対側から考えることを強制する。

4. 「反対意見」を唱える人を探し、尊重する

マンガーとウォーレン・バフェットのパートナーシップ自体が、確証バイアスに対抗するメカニズムである。彼らは互いを尊重しつつ、相手の考えを容赦なく挑戦する。

  • 実践:投資調査においては、異なる意見、あるいは全く反対の見解を持つ人々を積極的に探し、彼らの論理を真剣に聞き理解すること。彼らを敵と見なすのではなく、自分の盲点を発見する手助けをしてくれる「無料の労働力」と見なすのだ。

結論

要約すると、チャーリー・マンガーは「確証バイアス」が投資調査において何ら肯定的な役割を持たないと考えている。それは人間性の深層に潜む強力な認知上の欠陥であり、投資失敗への近道である。彼が生涯を通じて提唱した合理性、規律、知性は、大いにこのバイアスに対抗する強力な防御システムを構築するためのものだった。彼にとって、投資の真髄は未来を予測することではなく、厳格で逆説的な思考プロセスを通じて、確証バイアスといった心理的な落とし穴によって致命的な過ちを犯すことを体系的に回避することにある。

作成日時: 08-05 08:58:29更新日時: 08-09 02:55:05