日本は国産大麦を使用していますか?それとも主に輸入に頼っていますか?

Rita Richards
Rita Richards
Whisky distiller with two decades of experience.

さて、日本の大麦について話しましょう。

簡単に言うと、日本の大麦はその大部分を輸入に頼っており、国産はごく一部に過ぎません。

次のように考えてみてください。

あなたの家が肉まん屋さんを経営していて、毎日100斤の小麦粉が必要だと想像してみてください。裏庭の麦畑で一年間苦労して育てても10斤しか小麦粉が採れないとしたら、残りの90斤は市場で買うしかありませんよね?日本の大麦の状況もこれとほぼ同じです。

なぜ輸入に大きく依存しているのでしょうか?

  1. 需要が大きすぎて、自国では賄いきれない:大麦は日本で非常に幅広い用途があります。食用(麦飯に混ぜたり、麦茶にしたり)だけでなく、より大量に使われるのは、豚や牛の飼料、そしてビール焼酎の原料です。これらはどれも「大量消費」であり、日本の限られた耕地で生産される量では全く足りません。
  2. コストの問題:オーストラリアやカナダのような広大な土地を持つ国では、巨大な収穫機を使って大規模に大麦を栽培するため、コストが非常に低いです。一方、日本は土地が高価で人件費も高いため、自国で栽培するとコストがはるかに高くなります。そのため、輸入する方が経済的です。

では、日本で栽培された大麦はどこへ行くのでしょうか?

これは、あなたの家の裏庭で「丹精込めて作られた」10斤の小麦粉のようなものです。普通の肉まんにはもったいなくて使わず、何か特別な、高品質なものに使うでしょう。日本の国産大麦も同じで、主に以下の用途に使われます。

  • 高品質な食品:例えば、高級料亭で使われる麦飯、国産原料を謳う健康食品や高級麦茶など。
  • クラフトビールや焼酎:多くのこだわりを持つ酒蔵は、100%日本産大麦を使用することをセールスポイントにしています。これは品質と「テロワール」(Terroir)の象徴であり、消費者もこの「地元愛」と独特の風味にお金を払うことを厭いません。

ウイスキーとなると、さらに興味深い話になります。

多くの人が「ジャパニーズウイスキー」の原料はすべて日本産だという誤解を抱いています。しかし実際には、有名なジャパニーズウイスキー(例えばサントリーの山崎、白州、ニッカの余市、宮城峡など)のほとんどは、モルト(Malted Barley)をほぼすべて海外から輸入しており、主にスコットランド、イギリス、オーストラリア産です。

これはなぜでしょうか?

  1. 専門的なモルト製造技術:ウイスキーはモルトに対して非常に高い要求があり、特定のタンパク質含有量や発芽率などが求められます。スコットランドなどのモルト工場は何百年もの経験を持ち、非常に安定した高品質のモルトを提供できます。これは良いウイスキーを造る上での基礎となります。日本の大手酒造メーカーは、このような専門的なサプライチェーンをより信頼しています。
  2. 風味の要求(特にピーティーな風味):スモーキーで消毒液のような風味を持つピーテッドウイスキーを造るには、ピート(泥炭)でモルトを乾燥させる必要があります。スコットランドのピートの風味は唯一無二であり、そのため日本の酒造メーカーがこのスタイルのウイスキーを造りたい場合、最も直接的な方法は、スコットランドで既に処理された「ピーテッドモルト」を直接輸入することです。
  3. やはりコストと生産量:前述したように、自国で栽培し、自社で製麦すると、コストが高く、巨大な生産需要に追いつくことができません。

しかし、ここ数年、注目すべき新しいトレンドがあります。

ジャパニーズウイスキーの人気が高まるにつれて、秩父、厚岸、静岡などの小規模で新興の「クラフト」ウイスキー蒸溜所が台頭し始めています。彼らは「日本らしさ」を非常に重視し、日本で栽培された大麦を使ってウイスキーを造ることを試み、さらには自社で小規模な製麦施設を建設するところもあります。

これは、高級レストランが「ファーム・トゥ・テーブル」を強調し始めるのと似ており、これらの蒸溜所は原料から純粋な「日本血統」を築きたいと考えています。これはまだ主流ではありませんが、ジャパニーズウイスキーの将来の発展方向を示しており、非常にクールです。

まとめると:

  • 全体として:日本の大麦消費は輸入が主流であり、国産は少量ながらも高品質な補完的な役割を担っています。
  • ウイスキー分野:大手ブランドは品質と生産量を確保するために輸入モルトを広く使用していますが、新興の小規模蒸溜所は、国産大麦を使用する可能性を模索し、「日本らしさ」という概念を追求しています。