はい、ピラティスが「しなやかで引き締まった筋肉を鍛える」と宣伝している件について、ピラティスを数年練習して多くの失敗も経験してきたフィットネス愛好家として、私の考えをお話しします。
まず、結論から言いますと:この言い方は、真実でもあり、また完全な真実でもありません。これはどちらかというとトレーニング効果をイメージ的に表現したものであって、厳密な科学的用語ではないのです。
焦らずに、ひとつひとつ説明していけばわかって頂けると思います。
なぜ「真実」と言えるのか?— 視覚的な「しなやかさ」はどこからくるか
ピラティスは確かに、見た目が「しなやか」で「引き締まった」ボディラインを作るのに非常に優れており、これは主に以下の理由によります:
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姿勢の大幅な改善 これはピラティスの最も核心的な利点の一つです。多くの人が「頑丈」または「ずんぐり」して見えるのは、筋肉量が多いからではなく、姿勢の問題(猫背、反り腰など)によるものです。これらは視覚的に背を低く、首を短く、お腹を突出させて見せます。 ピラティスは体幹筋群(特に身体の天然の「コルセット」のような役割を持つ腹横筋などの深層筋)を強化し、背骨のアライメントを調整します。姿勢が真っ直ぐになると、首や背中のラインが自然に伸び、見た目で数センチ「背が高く」なり、雰囲気も伸びやかに見えます。これが「しなやかさ」の最も直接的な理由です。
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筋肉の「エキセントリック収縮」を重視 少し専門的に聞こえるかもしれませんが、簡単です。ダンベルを持ち上げるとき筋肉が収縮して力を出すのが「コンセントリック収縮(短縮性収縮)」です。逆にゆっくりダンベルを下ろすとき、筋肉が伸ばされながらも力を出してコントロールするのが「エキセントリック収縮(伸張性収縮)」です。 従来の筋力トレーニングは「コンセントリック収縮」に偏りがちで、筋肉をより「ゴツゴツ」した塊状に鍛えやすいです。一方、ピラティスの多くの動き、特にリフォーマーなどの器具を使う動作では、この制御されたゆっくりとしたエキセントリック収縮が非常に重視されます。このトレーニング方法は、筋肉に力を付けさせると同時に優れた弾力性と伸長性を保ち、ラインをスムーズにし、強い膨張感を生み出しません。
- 例えるなら: 従来の筋トレは練っていない小麦粉の塊を内側にぎゅっと押し固めて硬く丸くするようなもので、ピラティスは麺職人のように、麺を伸ばしながらも強靭性を持たせて細長くするようなものです。
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小さな筋肉群と全身の連動を重視 ピラティスは特定の筋肉を単独で限界まで追い込むことは求めません。全身が連動して力を発揮することを重視します。普段あまり使われない深層の小さな筋肉群を目覚めさせ、筋肉の発達をより均等にします。こうして鍛えられる体は、ボディビルのように特定の部位が特に突出することなく、全体的なラインが非常に均整が取れ、調和していて、「締まって敏捷」な印象を、「重厚で鈍重」な印象とは違った感じを与えます。
なぜ「完全な真実ではない」のか?— 筋肉の生理学的な真実
ここで科学的に「完全ではない」部分について説明します。
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筋肉の長さは変えられない これは厳しい事実です。あなたのそれぞれの筋肉は、その起始部と停止部が骨に付着しており、この長さは生まれつき決まっています。どんな運動でも、筋肉それ自体を「長くする」ことはできません。「ストレッチ」や「引き締め」と呼ばれるものは、筋肉繊維の伸張性と関節の可動域を変えるものであって、筋肉の物理的な長さそのものを変えるものではないのです。したがって、生理学的に見て「より長い筋肉を鍛える」という表現は誤りです。
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「引き締まり」の決定的な要因は体脂肪率である 筋肉そのものは元々「引き締まった」組織です。その「引き締まった」筋肉のラインが見えるかどうかは、筋肉の上を覆う脂肪がどれだけ厚いかにかかっています。 ピラティスは素晴らしいシェイプアップや筋力トレーニングであり、カロリーも消費しますが、脂質燃焼効率はランニングやHIITといった高強度の有酸素運動に及ばない可能性があります。体脂肪率が高い場合、どれだけピラティスを練習しても、筋肉のラインは脂肪で覆われて見えません。 したがって、「引き締まった」体を目指すなら、食事コントロールと必要な有酸素運動は永遠の基本です。ピラティスは、脂肪が減ったときに見栄えの良い体を作るための「土台」(筋肉の状態と姿勢)を整える役割を担います。
まとめると、一般の人はどう捉えればよいか?
ピラティスが宣伝する「しなやかで引き締まった筋肉」は、最終的に表れる視覚的な効果として理解することができます。
この効果は以下の点が総合的に表れたものです:
- 真っ直ぐな姿勢:より高く、伸びやかに見せる。
- 流れるような筋肉のライン:エキセントリック収縮と均等な発達による、締まった筋肉で角が目立たない。
- 引き締まった体幹:平らな下腹部と細いウェストライン。
- 低い体脂肪率:美しい筋肉のラインを可視化させる。
したがって、もしあなたがボディビルダーのような非常に大きくて細かく分かれた筋肉質の体型ではなく、ダンサーのように、見た目はスリムで力強さが感じられ、ラインが流れるように美しい体型を求めているなら、ピラティスは間違いなく極めて優れた選択肢です。
ピラティスは物理的にあなたの筋肉を長くすることはできません。しかし、姿勢を改善し、筋肉の形態を整えることで「見た目を」よりしなやかで、引き締まり、気品があるように見せることができます。この観点から言えば、その宣伝文句は決して大げさではないのです。