チャーリー・マンガーは「高成長企業」への投資に前向きでしたか?そのための前提条件は何でしたか?

作成日時: 7/30/2025更新日時: 8/17/2025
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チャーリー・マンガーは「高成長企業」への投資にオープンか?前提条件は?

答えはイエスです。チャーリー・マンガーは高成長企業への投資に完全にオープンな姿勢を持っています。実際、マンガーはウォーレン・バフェットに深い影響を与え、バークシャー・ハサウェイの投資戦略をベンジャミン・グレアム流の「吸い殻拾い」(清算価値を大幅に下回る価格での平凡な企業の買収)から、「適正な価格で優良企業に投資する」戦略へと転換させました。そして「優良企業」の核心的な特徴は、多くの場合、高い成長性にあります。

しかしマンガーは「高成長企業」の定義と投資の前提条件に関して、非常に厳格な基準を持っています。彼は単なる人気の成長株を追いかけるのではなく、長期にわたり持続可能で質の高い成長を実現できる特定の資質を備えた企業を探し求めます。

以下が、マンガーが高成長企業に投資する際の核心的な前提条件です。


核心的視点:価値と成長はコインの表裏

マンガーにとって、バリュー投資とグロース投資は対立するものではありません。彼は明確に「賢明な投資はすべてバリュー投資である」と述べています。成長そのものが企業価値を算定する上での重要な変数です。長期にわたり高い成長を続ける企業の本質的価値は、成長が停滞した企業をはるかに上回ります。したがって、問題は「成長株に投資するか否か」ではなく、「将来のキャッシュフローの割引現在価値の総和を下回る価格で買えるかどうか」にあります。


高成長企業への投資前提条件

マンガーは高成長企業を評価する際、彼の有名な「メンタルモデルの格子(Latticework of Mental Models)」を用いて多角的に精査し、以下のほぼ厳格とも言える条件を同時に満たす必要があると考えます。

1. 深い理解力(「能力の輪」の範囲内であること)

これは全ての投資における第一原則であり、高成長企業では特に重要です。

  • ビジネスモデルの理解可能性: その企業がどのように収益を上げているか、その製品・サービスがなぜ顧客を惹きつけるのか、そしてそのモデルが将来も持続可能かどうかを明確に理解できなければなりません。
  • 技術と業界への洞察: テクノロジー系の成長株については、投資家自身が技術そのものや業界の進化トレンドについて深い洞察力を持つことをマンガーは求めます。理解できない場合、彼は躊躇なく「難しすぎる」カテゴリーに入れ、即座に見送ります。彼は、自身とバフェットがグーグルを逃した理由は、初期段階でその広告モデルの破壊力と「経済的モート(堀)」の強固さを完全に理解できなかったためだと、繰り返し述べています。

2. 強力かつ持続的な「経済的モート(Durable Competitive Advantage)」

これはマンガー投資哲学の礎石です。高成長は保護された成長でなければならず、そうでなければ競合がすぐに参入し、利益をすべて侵食してしまいます。

  • 強力な競争優位性: その企業は模倣困難な優位性を持たなければなりません。例えば:
    • ネットワーク効果: テンセントやフェイスブックのように、ユーザーが増えるほどプラットフォームの価値が高まる。
    • 無形資産: 強力なブランド(コカ・コーラ)、特許(医薬品会社)。
    • スイッチングコスト: ユーザーが製品・サービスを乗り換えるコストが非常に高い(例:マイクロソフトのOS)。
    • コスト優位性: 規模の経済性や独自のプロセスによる低コスト(例:コストコ、BYDの垂直統合)。
  • モートの持続性: マンガーは、このモートが今後10年、20年にわたって依然として広く深く維持できるかどうかを重視します。多くのテクノロジー企業の成長は急激でも、技術の進歩が速すぎてモートが瞬く間に消え去る可能性があり、そのような企業には非常に警戒します。

3. 適正な価格(A Fair Price)

これは最も誤解されやすい点です。高成長企業にとって「適正な価格」は、決して「割安なPER」を意味しません。

  • 将来価値との比較: マンガーは卓越した成長性に対して、一見すると高いと思われる価格でも喜んで支払います。ただし、その前提は、企業の将来の利益成長によって今日の価格が数年後には非常に安く見えると確信していることです。これには、企業の将来の成長余地と収益力に対する非常に強い確信が必要です。
  • 「完璧」への過剰支払いの回避: 彼は過度に楽観的な将来予測に対して過剰なプレミアムを支払うことを極度に嫌います。ある企業の株価が、今後10年間の最も理想的な成長シナリオを完全に織り込んでしまっている場合、そこには「安全域(マージン・オブ・セーフティ)」が全く存在せず、どんな小さな出来事でも株価暴落を招く可能性があります。

4. 優れた経営陣(Talented and Trustworthy Management)

絶え間ない革新と資本配分を必要とする高成長企業にとって、経営陣の重要性は計り知れません。

  • 能力と先見性: 経営者は業界内でトップクラスの能力を持ち、ビジネスを理解し、長期的な戦略的視野を備えていなければなりません。
  • 誠実さと合理性: 経営者は誠実で信頼でき、私利私欲よりも株主利益を優先しなければなりません。資本配分においては合理的であり、会社が生み出した資金をより高いリターンを生むプロジェクトに賢明に再投資できることが必要です。マンガーはBYDの王伝福(ワン・チュアンフー)を非常に高く評価し、「エジソンとジャック・ウェルチを合わせたようなタイプ」と称賛しています。

5. 極度の忍耐力と規律(Extreme Patience and Discipline)

高成長株への投資は、しばしば大きな株価変動を伴います。

  • 長期保有: マンガーの戦略は、上記のすべての条件を満たす偉大な企業を見つけ次第、大きなポジションを構築し、長期にわたって保有し、複利の力を享受することです。彼の有名な「座って待つ投資法(Sit-on-your-ass investing)」はまさにこれを意味します。
  • 誘惑と恐怖への抵抗: 市場が熱狂している時は、盲目的に高値で追わない。市場がパニックに陥り株価が暴落した時は、ファンダメンタルズが変わっていなければ、持ちこたえる、あるいはむしろ買い増す勇気を持つ。

事例分析:BYD(比亜迪)

マンガーによるBYDへの投資は、彼の高成長企業投資の完璧な実例です:

  • 理解力: 彼の長年のパートナーであるリー・ルー(李录)が徹底的な調査を行い、マンガーはリーの判断を信頼しました。
  • 経済的モート: BYDはバッテリー技術と垂直統合能力において強力な技術的・コスト的モートを築きました。
  • 経営陣: 王伝福はマンガーが認める天才的なエンジニア兼起業家です。
  • 成長性: 世界的な電気自動車とエネルギー貯蔵の巨大な波を捉えました。
  • 価格: バークシャーは2008年に相対的に適正な価格で出資し、その後10年以上にわたる驚異的な成長の果実を享受しました。

まとめ

チャーリー・マンガーは高成長企業を避けるどころか、むしろ生涯をかけて質が高く持続可能な成長を実現できる偉大な企業を探し求めてきたと言えます。彼と従来の成長株投資家との根本的な違いは、彼が「成長」そのものに対して代価を支払うことは決してなく、「経済的モートに守られ、傑出した経営陣に率いられ、将来の確実性が極めて高い成長」に対してのみ代価を支払い、しかもその価格が将来価値に対して十分に適正である場合にのみ投資を実行する点にあります。

彼にとって、価値と成長は二者択一の問題ではなく、卓越した企業の表裏一体を表す記述なのです。

作成日時: 08-05 08:46:15更新日時: 08-09 02:37:48