チャーリー・マンガーはどのように売却基準を設定しますか?
チャーリー・マンガーはどのように売却基準を設定しているのか?
チャーリー・マンガーの投資哲学の核心は「少なければ少ないほど良い(少即是多)」と「何もしない投資法(Sit-on-your-ass investing)」である。したがって、彼の売却基準は極めて厳格で、基本的に売却しないことがデフォルトの行動である。彼は頻繁な取引は投資家の天敵であり、高額な取引コストと税金を生み出し、複利の力を断ち切ると考えている。
しかし特定の状況下では、マンガーは売却を選択する。彼の売却基準は以下の核心原則に集約され、これらは買い付け基準と表裏一体の関係にある。
核心原則一:事業のファンダメンタルズが恒久的に悪化した場合
これがマンガーにとって最も重要な売却理由である。彼が企業を購入するのは、持続的な競争優位性(「堀」)を持つ優良企業だと確信しているからだ。この根本的前提が失われれば、保有を続ける理由も消滅する。
具体的には:
- 競争優位性の喪失:企業の「堀」が埋められるか、破壊された場合。例えば、新技術・新ビジネスモデル・強力な競合他社により、企業の市場地位と収益力が恒久的に損なわれること。
- 経営陣の質の低下:経営陣が愚かさ・不誠実さを示したり、資本配分の意思決定を誤り始めた場合。マンガーは経営陣の資質を極めて重視しており、信頼できる経営陣が交代したり、株主利益を最優先としなくなった場合に売却を検討する。
- 業界の展望悪化:構造的要因により業界全体が衰退に向かい、業界内で最良の企業さえも影響を免れない場合。
一言でまとめ:当初買い付けた「城」がもはや堅固ではなく、崩壊し始めたら、撤退すべきだ。
核心原則二:価格が非常識な水準に高騰した場合(機会費用の観点)
マンガーは優良企業に対して適正価格、あるいはやや高値でも支払い、長期間保有して本質的価値の成長を享受する。したがって、単に「値段が高い」だけでは売却しない。株価が極端に非合理的で、ファンダメンタルズから完全に乖離し、何十年分もの成長を先食いするような「狂乱」水準にまで上昇した場合にのみ、売却を検討する。
この場合の売却の核心的な論理は機会費用である:
- より優れた代替案の探索:この異常に過大評価された資産を売却し、同様に優れているがはるかに合理的な評価の別企業と交換する。新たな機会の期待収益率は、現在の資産を保有し続ける期待収益率(特に税コスト控除後)を大幅に上回る必要がある。
- リスクとリターンの不均衡:株価が一定水準まで高騰すると、潜在的な下落リスクが、わずかな上昇余地をはるかに凌駕する。この時点で保有を続けることは、もはや良い投資とは言えない。
典型的な例は、マンガーとウォーレン・バフェットが2021-2022年にかけてBYD(比亜迪)株を減らしたケースである。BYDは依然として優良企業だが、時価総額が短期間で極めて高い水準に急騰し、マンガーはその評価額が過度に楽観的な期待を織り込みすぎていると判断、利益確定と機会費用低減のため一部売却を選択した。
一言でまとめ:市場が提示する価格が、あなたの企業価値に対する最高の見積もりをはるかに超え、その資金でより高いコストパフォーマンスの資産に交換できる場合にのみ、売却を検討すべきだ。
核心原則三:誤りを認め、買い付け判断を修正する場合
マンガーは知的誠実さを強調する。一定期間の観察を経て、当初の買い付け分析が誤りだったと気づいた場合、彼は断固として売却する。
具体的状況:
- 事業理解の誤り:企業のビジネスモデルや競争優位性の強さを誤って判断した場合。
- 経営陣の見誤り:経営陣の能力や人徳を過大評価した場合。
- 重大なリスクの見落とし:買い付け時に致命的なリスク要因を見逃した、または過小評価した場合。
この場合の売却は、企業が悪化したからではなく、そもそもあなたが考えていたほど良くなかったためである。この時、保有を続けることは「誤りを重ねる」行為であり、最善策は直ちに損失を確定し、資金を真に理解し確信できる分野に振り向けることだ。
一言でまとめ:誤りに気づいたら、サンクコストや体面の問題で保有を続けるのではなく、直ちに修正すべきだ。
総括
要約すると、チャーリー・マンガーの売却基準は以下の三つの質問に集約され、いずれか一つでも「はい」と答えた場合にのみ、売却プロセスを開始する:
- 【ファンダメンタルズ】:この企業の長期的な競争優位性は恒久的に失われつつあるか?
- 【機会費用】:現在の保有株(税負担控除後)を大幅に上回る期待収益率で、確実性が極めて高い投資機会を見つけたか?あるいは現在の株価は非常識な水準まで高騰しているか?
- 【認識の誤り】:当初の買い付け判断が誤った前提に基づいていたことに気づいたか?
マンガーにとって、売却は買い付け以上に慎重な判断を要する決断である。彼の体系全体は「優良企業と共に成長する」ことに基づいて構築されているため、売却の考えは極めて厳格な精査を経なければならない。彼の核心思想はこうだ:優良企業を見つけたら、最も難しいのは「何もしないこと」だ。