チャーリー・マンガーが「模範的」と評価した企業はどれですか?また、その理由は何ですか?
はい、チャーリー・マンガー氏が心から「模範的」と考える企業について、一緒に考えてみましょう。
マンガー氏の企業評価は、私たちが株価チャートを見るのとは異なります。彼は経験豊富な漢方医のように、企業の「体質」と「品性」を「望聞問切(見て、聞いて、問い、触れて診断する)」するのです。彼が「模範」と呼ぶ企業は、短期的に最も値上がりするものではなく、夜ぐっすり眠れ、長期保有でき、さらには次世代へ引き継げるような優れたビジネスであることが多いのです。
以下が、彼がよく口にする「模範企業」と、その理由です:
1. コストコ (Costco) —— 究極のビジネスシステム
これはマンガー氏にとって「ナンバーワンの模範企業」であり、彼自身も長年コストコの取締役を務めました。
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なぜ模範なのか? 端的に言えば、コストコのビジネスモデルは非常に巧妙に設計された「フライホイール(好循環)」です。
- 会員費が利益の核: コストコではまず年会費を払って会員になる必要があります。この収入が、ほぼコストコの純利益となります。つまり、商品の販売差益ではなく、「入場料」で稼いでいるのです。
- 会員への究極の低価格提供: 「入場料」で十分な利益を確保しているため、商品は原価に近い価格で提供できます。これにより「わあ、すごくお得!」という感覚が生まれ、会員更新の意欲が非常に高まります。
- 好循環の形成: 会員が増える -> 仕入れ量が増える -> サプライヤーからより安く仕入れられる -> 商品価格をさらに下げられる -> より多くの会員を惹きつける... この輪が休みなく回り続け、競合が参入するのは困難です。
マンガー氏が評価するのは、この**「Win-Winのシステム」**です。コストコは利益を最大限顧客に還元し、同時に従業員も厚遇(小売業界で有名な高水準の給与・福利厚生)しています。結果として、会社、顧客、従業員の三者が満足する。これは道徳的にも優れ、かつ非常に賢明なビジネスモデルなのです。
2. コカ・コーラ (Coca-Cola) —— 無敵のブランド・モート(堀)
これはウォーレン・バフェット氏とマンガー氏の最も古典的な投資の一つであり、マンガー氏が「モート(堀)」の概念を説明する際に最も好んで使う例です。
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なぜ模範なのか? 堀が広く深く、ワニまでいる城を想像してみてください。敵が攻め込むのは難しいでしょう? コカ・コーラの「モート(堀)」とは、その無敵のブランド力です。
- 強力なマインドシェア: 「コーラ」と言えば、真っ先に頭に浮かぶのがコカ・コーラです。暑い夏、友人との集まり、映画鑑賞... コカ・コーラは「楽しさ」「爽快感」といった感覚と結びついています。この心理的な結びつきは、莫大な広告費を投じても短時間で再現できるものではありません。
- シンプルな製品、究極の流通網: 製品のレシピは100年変わらず、製造も複雑ではありません。しかし、その真価は、地球上のどんな僻地でも見つけられる点にあります。この「どこにでもある」という流通網自体が、底知れぬ深さの堀なのです。
マンガー氏が重視するのは、この持続的で、破壊することが困難な競争優位性です。一世紀以上が経過しても、コカ・コーラのビジネスの本質はほとんど変わっていませんが、それでもなお飲料の王者なのです。
3. シーズ・キャンディーズ (See's Candies) —— 小規模で優れた価格設定力の模範
この菓子会社はマンガー氏とバフェット氏による初期の重要な買収であり、彼らに非常に重要な教訓を与えました:「普通の会社を安く買うよりも、優れた会社を適正な価格で買う方がはるかに良い」
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なぜ模範なのか? シーズ・キャンディーズの魔力はその「価格設定力」にあります。
- 感情的な価値 > 商品価値: 多くの人がシーズ・キャンディーズを買うのは、家族や愛する人への贈り物としてです。バレンタインや母の日に、彼女や母親への贈り物としてチョコレートを買う時、1箱が20ドルか22ドルかを気にするでしょうか? おそらく気にしないでしょう。あなたが買っているのは、その気持ちとブランドの保証なのです。
- ブランド・ロイヤルティ: カリフォルニアの人々は子供の頃から食べており、それは習慣となり、良い思い出となっています。毎年少しずつ値上げされても、忠実な顧客は全く気にしません。なぜなら、このブランドを信頼しているからです。
マンガー氏はシーズ・キャンディーズから**「価格設定力」の威力**を学びました。顧客が離れずに、持続的かつ緩やかに価格を上げられる会社は、その製品が顧客の心の中で特別な地位を占めている証です。これこそが極めて優れたビジネスなのです。
4. BYD (ビーワイディー) —— 「天才的エンジニア+実行力」への賭け
これはマンガー氏が晩年に非常に高く評価した例であり、伝統的な「モート(堀)」だけを重視しない彼の思考の柔軟性も示しています。
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なぜ模範なのか? マンガー氏がBYDに投資したのは、その創業者である王伝福氏への投資という側面が大きいです。
- 人への投資: マンガー氏は王伝福氏を「トーマス・エジソンとジャック・ウェルチ(GEの伝説的CEO)の融合体」と評しました。彼は様々な工学的課題を解決できる技術オタクであると同時に、規律厳しく、爆発的な実行力を持つ経営者です。
- 垂直統合への情熱: 自動車メーカーがこぞって部品を世界中から調達する中、BYDはバッテリーからモーター、制御装置、さらには半導体に至るまで、ほとんどすべてを自社製造しています。この「垂直統合」モデルは平時に見れば「非効率的」に見えますが、サプライチェーンが混乱した時には巨大な強みを発揮します。
マンガー氏がここに見たのは、トップクラスの人材と独自の企業文化によって駆動される強力な勢いです。彼は、一部の急速に変化する業界においては、天才的なリーダーそのものが最も深い「モート(堀)」になり得ると考えたのです。
まとめると、これらの「模範企業」に共通する点は?
ご覧の通り、マンガー氏が評価する企業には、いくつかの共通した「品性」があります:
- 強力な「モート(堀)」を有している: コカ・コーラのような無敵のブランドか、コストコのような独自のビジネスモデルのいずれか。
- 誠実で有能な経営陣: 彼は人を非常に重視し、下手な船長は最も頑丈な船さえも沈めると考えています。
- シンプルで理解しやすいビジネス: 彼が投資するものは、彼が理解できるものです。コーラ、キャンディー、スーパーマーケット、これらのビジネスのロジックは非常に明確です。
- 「Win-Win」の知恵: 特にコストコは、顧客から利益を「搾取」するのではなく、顧客を成功させることによって自らを成功させています。
この説明が、マンガー氏の知恵をより深く理解する一助となれば幸いです。彼が重視するのは、常に長い時間をかけて、自らの強みによって着実に価値を創造し続ける優れた企業なのです。