チャーリー・マンガーが「暗号資産」に反対する理由は何ですか?

作成日時: 7/30/2025更新日時: 8/18/2025
回答 (1)

チャーリー・マンガーによる暗号通貨への反対姿勢は極めて明確かつ一貫している。彼は**「ネズミ薬の二乗 (rat poison squared)」「性病 (venereal disease)」**といった過激な表現を用いて批判してきた。その反対理由は、彼の価値投資哲学、社会的責任への理解、そして人間行動への洞察に根ざしている。主な理由は以下の通りにまとめられる:


1. 本質的価値の欠如、「無から生まれた」産物

  • 核心的論点: 価値投資の中核は、本源的価値(Intrinsic Value)を持つ資産を購入することである。本源的価値は通常、企業の将来キャッシュフロー、収益力、または生産的資産に由来する。
  • マンガーの視点: マンガーにとって、暗号通貨自体は何も生み出さない。株式のように企業の所有権を表すわけでも、債券のように債権を表すわけでも、不動産のように賃料を生み出すわけでもない。それは「非生産資産」であり、その価格は完全に次の買い手がいくら支払う意思があるか、つまり典型的な**「大バカ理論」(Greater Fool Theory)**に依存している。
  • 有名な比喩: 彼は、暗号通貨への投資は、実体経済による裏付けのない「無から創造された金融商品」を取引するようなものだと考えている。

2. 犯罪活動の助長、社会利益の損傷

  • 核心的論点: 暗号通貨の匿名性と分散型の特性は、違法活動の温床となっている。
  • マンガーの視点: 彼は繰り返し公の場で、暗号通貨が身代金要求、マネーロンダリング、脱税、テロ資金調達などの犯罪者にとっての手段となっていると述べている。彼は、誘拐犯にとって有利なものは、文明社会にとって不利であると考える。
  • 道徳的立場: 社会的責任の観点から、犯罪を助長することが主な機能であるシステムを推進・投資することは極めて非道徳的かつ反社会的だと彼は主張する。彼は「私の国が、これほど多くの人々がこんなものを信じていることを恥ずかしく思う…全くもって狂っている」と発言した。

3. 本質は投機的ギャンブル、価値投資にあらず

  • 核心的論点: 投資とは資産価値の分析と将来収益の合理的な予測に基づくものであり、ギャンブルとは将来の価格変動への賭けである。
  • マンガーの視点: 彼は暗号通貨市場が狂乱的投機バブルに満ちていると見なす。人々はその価値を理解して購入するのではなく、より高い価格で次の人に売りたいがために購入する。この行動はカジノで賭けることと変わらない。
  • 伝統的投資との対比: 彼は、優れた投資とは優良企業を購入し長期保有し、企業の成長による価値を共有することだと強調する。一方、暗号通貨の「ホルダー」コミュニティ文化は、彼の目には理性的な投資家集団というより狂信的カルトのように映る。

4. 既存金融システムと国家安定への脅威

  • 核心的論点: 国家の主権通貨は、その経済的安定と政府の有効な機能の基盤である。
  • マンガーの視点: 暗号通貨が広く受け入れられれば、米ドルなどの主権国家が管理する通貨システムに挑戦し、ひいては覆すことになると彼は考える。これは中央銀行の経済調整能力を弱め、金融混乱を招く可能性がある。
  • 政府規制の支持: したがって、彼は政府が暗号通貨を厳しく規制し、場合によっては禁止すべきだと強く主張する。彼は中国政府が暗号通貨取引を全面禁止した決定を繰り返し称賛し、英断であると評価する一方、米国がその発展を許容する姿勢は誤りだと考えている。

5. 愚かで反社会的 (Stupid and Anti-Social)

  • 核心的論点: マンガーは合理性を尊び、貪欲といった人間の心理的弱点を利用して利益を得る行為を軽蔑する。
  • マンガーの視点: 彼は暗号通貨ブーム全体を「愚か(stupid)」、「狂っている(crazy)」、「吐き気がする(disgusting)」と率直に表現する。これは価値を創造せず、投機によって富を得ようとする悪しき風潮を助長し、社会に何の利益ももたらさないと考える。彼は「それは愚かで有害であり、ある意味危険だと私に思わせる…人々に教えるのは間違った教訓ばかりだ」と述べている。

まとめ

以上のように、チャーリー・マンガーによる暗号通貨への反対は、単なる投資の好みではなく、彼の世界観と価値観に基づく体系的な批判である。彼は暗号通貨を経済的には無価値なバブル、道徳的には犯罪を助長する道具、社会的には文明秩序への脅威と見なしている。これは彼が生涯を通じて提唱してきた、合理性、常識、忍耐、そして真の価値創造を重視する投資哲学とは完全に相容れないものである。

作成日時: 08-05 08:57:05更新日時: 08-09 02:49:17