扁桃結石（へんとうけっせき）

扁桃結石は、通称「膿栓（のうせん）」または「臭い玉（くさいだま）」とも呼ばれる、喉の奥の両側にある扁桃の表面にできる小さな白い塊です。これは病気ではなく、誰にでも起こりうる生理的な現象ですが、口臭や喉の違和感の主な原因となることがあります。

扁桃結石の正体と原因

扁桃の表面には「扁桃陰窩（へんとういんか）」と呼ばれる小さなくぼみが無数にあります。このくぼみに、以下のようなものが蓄積・石灰化することで形成されます。

• 剥がれた粘膜上皮: 口内の新陳代謝によって剥がれ落ちた細胞。
• 食べ物のカス: 食後に残った微細な食べ物の残り。
• 細菌の死骸: 口腔内に侵入した細菌やウイルスと戦った白血球などの免疫細胞の死骸。

これらの混合物が塊となり、時間とともに固まることで、白〜淡黄色の結石となります。特に風邪をひいた後や、口内が乾燥している時にできやすい傾向があります。

主な症状と特徴

多くの場合は無症状ですが、以下のような症状が現れることがあります。

• 強い口臭: これが最も代表的な症状です。結石を潰すと、硫化水素などのガスにより、ドブのような強烈な悪臭がします。
• 喉の違和感・異物感: 喉に何かが引っかかっているような感覚。
• 嚥下時の軽い痛み: 食べ物や唾液を飲み込む際にチクッとした痛みを感じることがあります。
• 咳やうがいで塊が出てくる: ふとした瞬間に口からポロっと出てくることがあります。

扁桃結石のデータ概要

対処法と予防

セルフケアと予防

扁桃結石を予防し、症状を軽減するためには、口腔内を清潔に保つことが最も重要です。

1. 丁寧なブラッシング: 舌苔（ぜったい）を含め、口全体の細菌を減らすことが基本です。
2. うがいの徹底: 食後や就寝前にうがい薬や水でうがいをし、食べカスを洗い流します。ガラガラうがいで喉の奥を洗浄するのが効果的です。
3. こまめな水分補給: 口腔内の乾燥を防ぎ、唾液の分泌を促すことで、細菌の繁殖を抑制します。
4. 鼻呼吸を意識する: 口呼吸は口腔内を乾燥させる大きな原因です。意識的に鼻で呼吸するようにしましょう。

【重要】ご自身で無理に除去しないでください 綿棒や指、シャワーなどで無理やり取ろうとすると、扁桃の粘膜を傷つけ、出血や炎症を引き起こす可能性があります。かえって症状を悪化させたり、細菌が入り込んで扁桃炎になるリスクがあるため、絶対に避けてください。

医療機関での治療

口臭や違和感が強く気になる場合や、頻繁に繰り返す場合は、耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。

• 洗浄・吸引: 専用の洗浄器具や吸引器を使い、安全に扁桃結石を除去します。痛みはほとんどありません。
• 圧出: 医師が器具を使って扁桃を軽く圧迫し、結石を押し出します。
• レーザー・高周波治療: 扁桃のくぼみをレーザーなどで焼灼し、くぼみを浅くすることで結石ができにくくする治療法です。
• 扁桃摘出術: 非常に稀ですが、扁桃結石が頻繁にできて日常生活に大きな支障をきたす場合や、慢性扁桃炎を繰り返す場合には、扁桃自体を摘出する手術が検討されることもあります。